常磐線全線開通許さない 動労水戸と連帯しJRに怒りを
週刊『前進』04頁(3106号02面01)(2020/02/10)
常磐線全線開通許さない
動労水戸と連帯しJRに怒りを
JR東日本は1月17日、2011年3・11東日本大震災・福島第一原発事故で不通となっていた常磐線の富岡―浪江間の運行を3月14日に再開し、全線開通すると発表した。「復興五輪」を掲げる安倍政権の手先となりペテン的な「福島復興」を進め、乗客とJR労働者を被曝させるものだ。絶対に許せない。
乗降客もいない駅に停車
全線開通に伴って品川・上野―仙台間の特急も再開となり、1日3往復の運転が行われる。しかも、福島第一原発に最も近い双葉駅(双葉町)、大野駅(大熊町)にも停車させる。周辺が帰還困難区域で、乗降客もいないような両駅での停車は「安全」のアピールだけが目的であり、逆に放射性物質を車内に引き入れ危険を増すだけだ。JR東の発表と同じ17日、安倍政権は帰還困難区域のうち双葉町の双葉駅周辺などの避難指示を3月4日に解除すると決定した。大熊町の大野駅周辺を同5日、富岡町の夜ノ森駅周辺を同10日に解除することも決めた。だが避難指示の解除は、駅舎と線路、駅を中心とした道路だけであり、「点と線」のみだ(地図参照)。この事実は欺瞞(ぎまん)的な「復興」宣伝のための強引な全線開通であることを象徴している。
昨年5月に行われた動労水戸―動労総連合とJR水戸支社の団体交渉で、会社は「(福島第一原発は)冷温停止状態を維持している。安定状態にある」と回答した。だが、これは東京電力と政府の発表を口まねしているだけの無責任きわまりないものだ。福島第一原発の現状は「冷温停止状態」でも「安定状態」でもまったくない。
「冷温停止」とは、あくまでも通常の原子炉の運転管理で使われる言葉であり、原子炉に制御棒を入れて核分裂を抑え、水温が100度未満になった状態を指すのだ。事故で爆発し、メルトダウン・メルトスルーした原発について定義するものではまったくない。このような根本的誤りを根拠に人命を危険にさらすことなど、公的な交通機関として絶対に許されない。
乗客・乗員を被曝させるな
福島原発は「安定状態」とは程遠い。2017年1月に東電が行った調査で、福島原発2号機の圧力容器外側で、毎時530シーベルトの放射線量を計測した。人間は7シーベルト浴びると全員死亡する。その約76倍もの、人間が即死する放射線量だ。この調査の結果、溶け落ちた核燃料(デブリ)は、原子炉圧力容器の直下だけでなく、大量に外に出ている可能性も指摘されている。この強度の放射線にさえぎられ、デブリの取り出しは事故から9年近く経つ今も進展がない。それだけではなく、デブリの取り出しにむけた作業で再臨界が起こる危険さえある。福島県は昨年4月、今年度中に原発の敷地外に中性子線測定器を3台設置すると発表した。再臨界が起きた際に出る中性子線を感知する監視体制を強化するためだ。福島原発はそれほど不安定で危険な状態にあるのだ。
常磐線の線路は、福島原発から最短で2㌔メートル弱の地点を通っている。もし、列車が走行中に再臨界が起これば、乗客・乗務員がもろに中性子線を浴び被曝することになる。
3・11福島大結集で阻もう
福島第一原発事故は膨大な放射性物質を放出し、海洋と、福島を中心とした山林・大地を放射能汚染させた。それらを含んだ土壌は風雨で土ぼこりとなる。また、福島原発を取り囲むように広がっている中間貯蔵施設には県内の除染で出た大量のフレコンバッグが持ち込まれ、解体―分別―焼却―貯蔵などの作業が行われている。この過程で労働者が被曝させられ、また、膨大な放射性物質が粉じんに付着し流出して、大気を汚染しているのだ。
これらの放射性物質を含んだ土ぼこりや粉じんは、列車内に侵入し、乗客や乗員を危険にさらす。さらに列車にも付着する。車両の検査や修繕、清掃などを担うJRの労働者がそれを吸い込めば、危険な内部被曝を起こす。常磐線などの列車の運転や検査・修繕、清掃を担う労働者の労働組合である動労水戸は「高線量地帯に向かって列車を走らせるな!」「絶対安全が担保されないなら走るべきでない」と反対し闘っている。これを断固支持し、JRに怒りの声をあげよう。
3月26日、Jヴィレッジ(楢葉町・広野町)から聖火リレーがスタートし、ソフトボールと野球の一部の試合が福島市のあづま球場で開催される。オリンピック一色で覆い、福島の労働者人民の怒りを抑え込もうという狙いだ。だが1月の県民世論調査で、安倍内閣を「支持する」は30・3%で前回の調査から11・1ポイントも低下し、「支持しない」は53・9%で前回より13・6ポイントの増加となった。「復興五輪」で、政権の危機を乗り切ろうとする安倍の卑劣なやり方に福島県民の怒りが噴出しているのだ。
この怒りと広く深く結び、3・11反原発福島行動の大成功を実現しよう。その力で、危険な3・14常磐線全線開通を止めよう。