香港 新型ウイルスへの対策訴え 医療労働者がストに突入

週刊『前進』04頁(3106号01面03)(2020/02/10)


香港 新型ウイルスへの対策訴え
 医療労働者がストに突入

(写真 「ともにストに立とう」と訴える医療労働者たち【2月3日 香港】)

 香港で2月3日、昨年12月に公立病院の医師や看護師などの医療労働者で結成された医院管理局労働組合がストライキに突入した。新型コロナウイルスの感染拡大の中で、香港での普通選挙の実施や不当逮捕者の釈放を求める「五大要求」を掲げた闘いは新たな段階に入った。
 1月30日に香港医院管理局の西部と南部地区に所属する医大教授や著名な内科専門医など400人超が連署して公開声明を発し、感染拡大を防ぐためには「就業ビザや留学ビザを持つ人以外の人の中国からの入境を全面的に禁止すべき」であり「政府がこの勧告を無視するなら、医者としての魂をかけて、労働法が保障するストライキも含めたあらゆる手段を取る」と闘争を宣言した。
 中国スターリン主義は、その体制を維持するために武漢での新型コロナウイルスの発生を隠蔽(いんぺい)し、初期段階で感染の事実を公にした医者を弾圧しさえした。また病院の診療費が極めて高く、一般の人々が病院に行けない現実がある。感染拡大の原因は、こうした中国スターリン主義のあり方そのものだ。これは、いわゆる「(資本主義に対する)中国モデルの優位性」論の崩壊も意味している。
 香港では4日、新型肺炎で初の死者が出た。河一本隔てた深圳(しんせん)市でも患者の発生数が急増している。専門医も指摘するように、感染を防ぐためには中国と香港の境界封鎖が不可欠だ。
 だが、香港政府は中国スターリン主義との関係から「政治的理由を公共衛生安全に優先させて」(医院管理局労働組合)限定的な封鎖しか行っておらず、依然として連日、中国から数万人の旅行者(香港で輸入品などを買い集め、地価や物価の高騰を招き、香港住民の生活と仕事を崩壊させている中国資本のバイヤーが多い)が自由に往来する状況となっている。これへの怒りが爆発しているのだ。
 この闘いは、新たな労働組合建設運動として進んでいる。医院管理局労働組合は、新型コロナウイルスの感染予防対策と、過酷で危険が増している医療現場の安全対策、改善を訴え、一挙に組合員数を1万2千人にまで拡大した。
 そして1月26日に政府・医院管理局に対して「中国からの旅行者の入境の禁止」「マスク着用の徹底」「非緊急医療の暫定的停止」「仕事の環境安全の確保」「感染者の治療・看護にあたる人員の保障」の5項目の要求を突きつけた。そして、1月28日まで回答がなかったことから2月1日に特別総会を開催し、総投票数3164票のうち賛成3123票の圧倒的多数でストライキを決定した。
 組合員は3日から5日間の全面ストに突入した。3日、まず非緊急医療の組合員約3千人がストに突入。この日の夜には医院管理局行政総裁との団交が行われたが決裂した。さらに4日からは、緊急医療も含めた約9千人が7日までの全面ストに入った。
 このストライキに対して、他の新労働組合が支持・連帯行動に全力で決起している。昨年の秋に結成された労働組合である香港鉄道新動力も、入境地帯のいくつかの駅の封鎖と職員と旅客の安全確保を鉄道当局に要求して新たな闘いに入っている。
 医療労働者のストは、林鄭政府を震撼(しんかん)させている。政府は「敵前逃亡だ」「医療に政治を持ち込むな」「心を入れ替えて職場に戻れ」などと叫んでいる。しかし香港の医療労働者は恫喝に屈せず、感染拡大を放置する香港政府を弾劾し、労働者の団結と闘いで非常事態を乗り越えようとしている。この非妥協的な闘いは、中国スターリン主義と帝国主義を打倒し、労働者自身が権力を取り、社会の主人になる闘いにつながっている。
 非常事態において労働者がどう国家権力と闘うべきなのかということを、香港の医療労働者の闘いは実践で示そうとしている。日本でも連帯して闘おう。
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