経団連・経労委報告弾劾 正社員ゼロ化を狙う 春闘解体・一律賃上げ廃止許すな

週刊『前進』02頁(3105号02面01)(2020/02/06)


経団連・経労委報告弾劾
 正社員ゼロ化を狙う
 春闘解体・一律賃上げ廃止許すな


 1月21日、経団連は春闘の資本側指針となる経営労働政策特別委員会報告を発表した。28日には中西宏明会長が連合・神津里季生(こうづ・りきお)会長と会談。中西の、終身雇用や定期昇給など「日本型雇用の見直し」の提案に対し、神津は「先進的な問題意識だ」と理解を示した。連合幹部は資本の手先となることを隠そうともしない。20春闘は闘う労働組合の再生をかけた闘いとなった。

ジョブ型で解雇自由 雇用・賃金見直しを主張

 経労委報告は、労働力人口の急速な減少や「米中貿易摩擦」を背景とする世界経済の減速など先行きの不透明感が広がっていることを強調。これに対し「競争力を大きく高めていく」必要があるにもかかわらず、終身雇用、年功型賃金など日本型雇用が労働市場の流動化を阻害しているとして「ジョブ型雇用」の導入を求めた(表)。これまでの正社員(メンバーシップ)制度ではなく、職務・業務(ジョブ)による雇用制度に変える。そうすることで雇用の柔軟化・多様化が進み、評価制度に基づく職務や成果に応じた待遇で「個々の働き手が持てる力を最大限発揮できる」ようになると主張した。
 しかしその核心は正社員のゼロ化、総非正規職化だ。「労働生産性の向上に向けて」と題するコラムでは「非効率な業務の思い切った縮小・廃止」にも言及した。そのために労働者を自由に解雇できる制度に変える。そして評価制度で賃金も自由に上げ下げできるようにして徹底的に搾取する。そうすれば労働者の抵抗もなくなり、労働組合を解体できる。これが資本の最大の狙いである。
 戦後憲法と労働基準法、労働組合法、多くの判例に基づく解雇規制、労働組合への不当労働行為と差別賃金の禁止は、長い闘いを通して勝ち取られてきた。そうした地平を一掃しようとする攻撃だ。郵政では新一般職(限定正社員)とスキル評価制度が導入された。自治体では1年で解雇、業務がなくなれば解雇の会計年度任用職員制度が進められている。それを全産別・全労働者に広げようという主張だ。しかし郵政や自治体の現場で、この攻撃に対する激しい怒りと闘いが巻き起こっている。
 報告は「過労死」を強いる裁量労働制の拡大や高度プロフェッショナル制と併せてジョブ型雇用の活用を提言。テレワーク(在宅勤務)や就業時間枠を固定しないフレックスタイム、労働法の保護から除外されるフリーランス(個人請負)の拡大にも言及した。
 資本の側は「働き方改革フェーズⅡ(第2段階)」と称して、戦後の雇用・人事・賃金制度、労働時間規制の最後的解体に手をかけようとしている。日本資本主義はもはやこれ以上立ち行かない絶望的な危機にある。だからこそ1995年の日経連報告が打ち出した9割の労働者の非正規職化=正社員ゼロ化で延命を図ろうとしているのだ。

春闘・ベア要求を否定 「脱一律」と称し分断図る

 経労委報告は、連合の春闘方針が経済の成長や社会の持続性の実現、消費拡大による企業の経営基盤の健全化などについて経団連の考え方と基本的に一致し、社会全体の生産性向上、成果の適正な分配という認識も共有しているとした。これ自体が噴飯ものだ。本来労働者が団結して資本と闘う武器としてあるはずの労働組合が、資本の存続・繁栄を共に願い、その攻撃に手を貸すまでに変質した許しがたい姿を示している。今こそ労働組合を現場労働者の手に取り戻さなければならない。
 その上で経労委は、連合の方針が月例賃金の引き上げに偏重していると批判。生産性向上による収益拡大を還元する「賃金引き上げ」と、職場環境・能力開発といった働き方改革に資する「総合的な処遇改善」を車の両輪とすることを求めた。要は賃上げにこだわるなということだ。
 さらに労働組合の加入率の低下を指摘して、もはやこれまでの春闘の「業種横並びの集団的賃金交渉、全社員対象の一律的な賃金要求は適さなくなっている」と主張。非正規職との「同一労働同一賃金」についても言及した。労働者全体の賃下げが狙われている。
 春闘は本来、全産別・企業の労働者・労働組合が一丸となって資本と対決し、一律のベースアップ(基本給の底上げ)を求めて賃金闘争を闘うものとしてある。これまで春闘ストライキが激しく闘われてきた。連合の支配のもとで大幅に抑え込まれてきたとはいえ、今もストライキの火は消えていない。その春闘に対して、経団連は「脱一律」と称して、横並びのベア=一律賃上げの要求を取りやめるよう求めた。春闘自体を解体する攻撃だ。
 職場・生産点での春闘の解体は、労働組合運動の一掃につながる。「日本型雇用制度の見直し」は、労働者の団結を徹底的に破壊することを目的にした、改憲・戦争と一体の大攻撃である。そのための終身雇用制の解体=解雇自由のジョブ型雇用であり、定期昇給ではなく評価制度による査定昇給への転換、そして労働組合による春闘とベア要求そのものの否定にまで踏み込んできた。ここが勝負どころだ。

「社員との個別労使関係」提唱

 経労委報告は「経営環境の先行き不透明感が強まっている中で、企業の競争力と成長の源泉である良好で安定的な労使関係」が重要だとして、社員の多様化、相当数に及ぶ未組織労働者の存在などから、「社員との個別労使関係を深めていく」ことを提唱した。
 その攻撃の最先端が、JR東日本が全面外注化・子会社化、非正規職化と一体で進める組合つぶし、「社友会」の組織化だ。「労組なき社会」への攻撃であり現代版産業報国会への道だ。現場労働者の団結と闘いで打ち破ろう。

連合が資本の手先に 職場から闘う団結再生を

 経団連の呼びかけに呼応して、労資協調を掲げる連合傘下の御用組合幹部が労働者の利益、労働組合の原則を売り渡す許しがたい方針を打ち出している。
 トヨタ自動車労組(6万9千人)は20春闘で、5段階の人事評価で賃上げ幅に差をつける制度に転換することを求めている。評価次第でベアがゼロになる可能性もある。製造業の最大級労組の転換は、賃金制度のあり方を変えると宣伝されている。春闘を解体し、賃金制度に手をかけて自ら団結を破壊する重大事態だ。
 電機連合なども一律ではなく加盟労組の個別判断を認め、経団連の提唱する「総合的な処遇改善」、社員教育など「人への投資」を合算した回答を受け入れようとしている。
 しかしこんな策動は必ず破綻する。経労委報告は、集団的労資紛争は減少傾向だが、個別労働紛争は高止まりし労働相談は100万件を超えているとした。連合的な組合の存立基盤が崩壊する一方、生きていけない現実の中で労働者が続々と立ち上がっている。ストライキが復権しつつある。労働組合の闘う団結を取り戻し、一律大幅賃上げ・非正規職撤廃へ闘おう。

国鉄・関生決戦に総決起しよう

 安倍は「国のかたちに関わる大きな改革を進め、その先に改憲がある」として全世代型社会保障改革と働き方改革を位置づけている。20春闘は改憲・戦争に突き進む安倍政権と資本による階級戦争との正面激突となった。労働者を死ぬまで搾取しようとする働き方改革、正社員ゼロ・解雇自由、総非正規職化、8時間労働制の解体、春闘解体・組合破壊と闘いぬこう。
 関西生コン支部が労組絶滅の大弾圧に抗して組織を守り抜いている。改憲・戦争に向けた「労組なき社会」との闘いとして弾圧を全力で粉砕しよう。関生支部・武建一委員長の闘いのドキュメンタリー映画「棘(とげ)」の上映運動を全国で進めよう。国鉄分割・民営化による不当解雇から33年の2・16国鉄集会に大結集しよう。職場の団結にこそ働き方改革攻撃を打ち砕き改憲・戦争を阻む力、社会を変える力がある。現場の怒りを燃え上がらせて20春闘に総決起しよう。

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2020年版経労委報告のポイント
「働き方改革フェーズⅡ」
●日本型雇用システム(新卒一括採用、長期・終身雇用、年功型賃金)の見直し
・「日本型」は労働市場の流動化を阻害
・自動昇給から評価制度による査定昇給へ
・ジョブ型―職務内容、市場価値で決定
→業務がなくなれば即解雇(解雇自由)
●労働時間制度の見直し 裁量労働の対象拡大、高度プロフェッショナル、テレワーク、フレックスタイム/フリーランス
20春闘における基本スタンス
●連合と考え方は一致 生産性向上で成果の分配につなげていく認識を共有
●連合は月例賃金引き上げに偏重 能力開発・働き方改革など総合的な処遇改善へ
●「脱一律」 横並び・集団的交渉・一律要求は適さず/個別労使関係を深める
→春闘=ベースアップ(一律賃上げ)要求の否定、労働組合破壊

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