今こそ反帝・反スタ党の建設を 日本共産党の新綱領を批判する 日米帝国主義との闘いを放棄し、安倍と口をそろえ「反中国」叫ぶ
今こそ反帝・反スタ党の建設を
日本共産党の新綱領を批判する
日米帝国主義との闘いを放棄し、安倍と口をそろえ「反中国」叫ぶ
日本共産党は1月14〜18日に開催した第28回党大会で、2022年までの「野党連合政権」の実現を大会方針として採択するとともに、04年に全面改定した党綱領を16年ぶりに一部改定した。党員数が約27万人とピーク時から半減し、機関紙「赤旗」購読者数の公称も前回大会(17年1月)の117万部から急減してついに100万部を下回る中、日本共産党は「野党連合政権」の樹立に党の延命をかけている。だがそのためには、「野党共闘」と政権構想を立憲民主党などの野党に、そして何よりも財界や大企業を始めとした支配階級に認められなければならない。それが今回の綱領改定の意図することである。
資本主義賛美の時代認識
04年第23回党大会での綱領改定において、日本共産党は「労働者階級」「労働組合」という言葉を綱領からほとんど削除した。
続いて今回の一部改定では、第一に、「人権が擁護される平和な21世紀」という徹底的な現状肯定=資本主義賛美の世界観と時代認識を綱領に据えた。
すなわち、「植民地体制の崩壊は(20世紀の)最大の変化であり、それは世界の構造を大きく変え、民主主義と人権、平和の国際秩序の発展を促進した」(7節)、「20世紀に起こった世界の構造変化は、21世紀の今日、平和と社会進歩を促進する生きた力を発揮しはじめている」(9節)、「一握りの大国が世界政治を思いのまま動かしていた時代は終わり、世界のすべての国ぐにが、対等・平等の資格で、世界政治の主人公になる新しい時代が開かれつつある」(9節)----これが改定で新たに書き加えられた日本共産党の時代認識だ。また「核戦争の危険もひきつづき地球と人類を脅かしている」といった核の脅威を論じた箇所は大幅に削られ、核兵器禁止条約の成立によって「核兵器固執勢力」は「追い詰められ、孤立しつつある」と改定された(9節)。
だが、果たして21世紀は「人権が擁護される平和の世紀」に向かっているのか。そもそも20世紀を通じて「植民地体制が崩壊した」とか、「一握りの大国が世界政治を思いのまま動かす時代は終わった」というのは本当なのか。否、まったくの虚構である。
かつての植民地の多くは確かに第2次大戦後には形式上の「独立」を認められたが、実際上はアメリカ帝国主義を基軸とする帝国主義諸国によって政治的・経済的に従属させられ、富や資源を収奪される新植民地主義体制として維持された。さらに新自由主義のもとで資本による搾取は極限化し、非正規職や失業・貧困が拡大した。そして現在は、日本共産党が描くバラ色の世界とは裏腹に、米中2大国(一握りの大国!)の激突が世界を分裂させ、各国の生き残りをかけた死闘戦は激化の一途をたどっている。中東などでの戦争に伴う難民は第2次大戦後最多となる7千万人に達し、飢餓人口は8億人を超えた。米トランプ政権の中距離核戦力(INF)全廃条約からの離脱は新たな核軍拡競争を引き起こし、核戦争の危機はかつてない勢いで切迫している。
こうした中で、各国の労働者民衆は世界の根本的変革を求め、職場や街頭で激しい実力闘争に立ち上がっている。だが日本共産党の改定綱領は「貧富の格差」や「気候変動」を問題にしても、それは「資本主義体制が21世紀に生き残る資格を問う問題」(10節)でしかなく、労働者民衆の闘いは「その是正・抑制を求める諸国民のたたかい」(10節)としか位置づけられていない。資本主義が21世紀を通じて(この先80年以上も!)生き残ることが前提とされているのだ。
21世紀は、戦争、貧困、民族抑圧、難民問題や気候変動・環境問題をはじめ、20世紀を通じて積み残された一切の人類史的課題を解決すべき時代である。だがそれは、もはや歴史的命脈の尽き果てた資本主義・帝国主義のもとでは不可能であり、全世界の労働者民衆の団結した闘いで反帝国主義・反スターリン主義プロレタリア世界革命を成し遂げる以外に人類の出口はない。日本共産党の新綱領は、この全世界の労働者民衆の闘いに背を向け、敵対するものにほかならない。
志位「中国に痛手となる」
改定綱領は第二に、中国に関する見解を抜本的に転換し、中国への排外主義の立場を公然化させた。
「市場経済を通じて社会主義へ」という中国共産党のスローガンを「社会主義をめざす新しい探究」「21世紀の世界史の重要な流れの一つ」などと賛美した部分を削除し、代わりに「いくつかの大国で強まっている大国主義・覇権主義は、世界の平和と進歩への逆流になっている」(10節)と新たに明記した。
さらに大会の「第1決議」(政治方針)では、「中国公船による尖閣諸島周辺の領海侵入は、その後も激増し、常態化している。安倍政権は、こうした中国の横暴な振る舞いについて、正面から抗議し、是正を求めることをしていない」として、安倍政権を弱腰外交とばかりに非難した。大会に先立つ朝日新聞のインタビュー(昨年12月25日付朝刊)でも、志位和夫委員長は「安倍政権は(中国に)言うべきことを言わない、だらしない外交をやっている」と苦言を呈し、日本共産党の綱領改定こそ「中国に痛手となるはず」と誇示した。
すでに安倍政権は、米軍の南中国海での「航行の自由」作戦と一体で自衛隊のヘリ空母「かが」や潜水艦を派遣し、南西諸島では対中国を念頭に自衛隊配備を進めている。辺野古新基地建設を始めとした日米安保体制の再編・強化も、すべて対中国を理由に強行されている。日本共産党の改定綱領は、こうした安倍の対中国戦略と安保政策に積極的に加担し、自ら進んで対中国排外主義の合唱に加わろうとするものだ。
また改定では、「資本主義が世界を支配する唯一の体制とされた時代は、1917年にロシアで起こった十月社会主義革命を画期として、過去のものとなった」という一文も削除された。中国、ベトナム、キューバなどを「社会主義への独自の道を探求する努力」として積極的に評価した箇所も削られ、「発達した資本主義国での社会変革は、社会主義・共産主義の大道」(18節)という規定に置き換えられた。ロシア革命の歴史的意義を抹殺し、世界が資本主義から社会主義に向かっているかのような表現をことごとく無くしたのである。資本主義への屈服宣言であり、同時に中国などを「社会主義」と言い張ってきたスターリン主義政党としての完全な破産を自認するものだ。
階級闘争妨害する反革命
改定綱領は第三に、中国への排外主義と一体で米日帝国主義を容認する姿勢を顕著に示した。
04年綱領の「アメリカが横暴をほしいままにする干渉と侵略、戦争と抑圧の世界秩序」とか「アメリカの覇権主義的な世界支配を許さず......」といった対米批判を大幅に削除し、代わりに「世界の構造変化のもとで、アメリカの行動に、国際問題を外交交渉によって解決するという側面が現れていることは、注目すべきである」(10節)とわざわざ書き加えた。中国への評価を一変させたことと一体で、よりにもよってトランプ政権下のアメリカ帝国主義に対してこのように批判をトーンダウンさせたことは決定的な転換である。
その一方で、「わが国は......国土や軍事などの重要な部分をアメリカに握られた事実上の従属国」(5節)という規定は維持された。そもそも日本共産党は絶対に日本を帝国主義国と認めず、自衛隊の海外派兵も米軍基地問題もすべて「アメリカの言いなりやめろ」というスローガンに集約してきた。これは日本の支配階級を免罪し、自国政府打倒の闘いを放棄するものでしかない。
他党にすり寄り政権入りを懇願
15年9月の安保戦争法強行採決の直後、「戦争法廃止の国民連合政府」の構想を発表した日本共産党は、この過程で突如として「立憲主義を守れ」と主張し始めた。そして今大会では「野党連合政権」樹立に向け「安保法制廃止と立憲主義回復」を共闘の軸とすると決議。大会後の記者会見では「連合の方々とも胸襟(きょうきん)を開いて話し合いたい」(志位委員長)と語った。
だが「立憲主義を守れ」とは「憲法を頂点とする法治国家の規範を守れ」という要求にすぎず、そこには「戦争反対」も「改憲阻止」も含まれていない。実際、「立憲主義」を掲げる立憲民主党の枝野幸男らは自らを改憲論者と公言し、「戦前の日本では立憲主義が立派に守られていた」などと明治憲法下の日本帝国主義を積極的に肯定してはばからない。日本共産党はこうした野党や労働貴族に認められ、なんとか連立政権の一角に入れてもらおうと必死なのだ。
本紙3097号1・1アピールでも明らかにした通り、改憲阻止闘争は、戦争をやる以外に延命できない日本帝国主義の打倒をめざす闘いとしていや応なく発展せざるを得ない。これを「野党統一候補への一票」におとしめようとする日本共産党の「野党連合政権構想」は、労働者民衆の荒々しい階級闘争の発展に対する妨害物でしかない。
資本主義・帝国主義をここまで容認する日本共産党が、なぜ党名を変えないのか。「共産党」という名を捨てればただの野党であり、支配階級にとっての利用価値もない存在として歴史から消えていくしかないからだ。「社会主義・共産主義の党」を偽装し、「資本主義の枠内の改革」こそ社会主義への道であると吹聴し、労働運動を始めとする一切の階級闘争を現体制の枠内に押しとどめることが唯一の「存在意義」なのだ。その意味で今回の綱領改定は、「戦争か革命か」の歴史選択をかけた21世紀現代における、日本共産党の歴史的な転向宣言にほかならない。
問われているのは、階級闘争の思想を復権し、闘う労働運動をよみがえらせること、そして反帝国主義・反スターリン主義の旗を掲げた新しい労働者階級の党を労働者自身の手で建設することである。
〔岡崎康史〕
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第28回党大会の綱領改定で新たに書き加えられた箇所(一部)
*植民地体制の崩壊は最大の変化であり、それは世界の構造を大きく変
え、民主主義と人権、平和の国際秩序の発展を促進した。(7節)
*20世紀に起こった世界の構造変化は、21世紀の今日、平和と社会進歩
を促進する生きた力を発揮しはじめている。(9節)
*アメリカの行動に、国際問題を外交交渉によって解決するという側面
が現われていることは、注目すべきである。(10節)
*(中国、ロシアなどを念頭に)いくつかの大国で強まっている大国主義
・覇権主義は、世界の平和と進歩への逆流となっている。(10節)