国鉄分割・民営化の破産 JR各社の現状 JR九州 自動運転で安全破壊 低コスト最優先の無謀なシステム

週刊『前進』04頁(3102号02面01)(2020/01/27)


国鉄分割・民営化の破産 JR各社の現状
 JR九州 自動運転で安全破壊
 低コスト最優先の無謀なシステム


 JR九州は昨年12月20日、「自動運転」導入の走行試験を開始すると表明した。そして、今年初めから香椎線(香椎―西戸崎間)で終電後の夜間試験走行を実施している。JR九州も運転士の廃止を狙っている。これは、JR東日本が強行しつつある運転士・車掌の職名を廃止する「新たなジョブローテーション」や、「労組なき社会」をつくる攻撃とまさに一体のものだ。

運転士の廃止を狙う

 「自動運転」はJR東日本の山手線や常磐線でも導入が狙われているが、そこでは信号システム(保安装置)に「自動列車制御装置(ATC)」が採用されている。それに「自動列車運転装置(ATO)」を導入し、併せて使うことで、自動運転化を図ろうとしている。これに対して、JR九州の在来線で採用されている信号システムは「自動列車停止装置(ATS)」だ。ATCとATSは、「コントロール」と「ストップ」の違いが表すように、文字通りの機能差がある。ATSには精密な制御はできない。開始された走行試験でも、取材した記者から「停止線から40〜80㌢メートルはずれる」と指摘されている。
 国土交通省も省令で「運転士の乗務しない自動運転はATCをベースとすること」と規定している。ATSを自動運転装置の基礎システムにすることなど土台不可能なのだ。
 しかし、JR九州が無理を承知でATSを自動運転の基礎に据えようとするのは、圧倒的にコストが安いからだ。在来線の98%でATSが採用され、それを流用する今回の試験費用は2億円(車両1編成6千万円、地上設備1億4千万円)とされているが、これをATCに置き換えれば、費用は桁違いに膨張する。コストカットを最優先し、安全性など全く無視したところで自動運転が導入されようとしているのだ。
 しかもJR九州は、ATSベースのシステムでは停止線で正確に止まれないことを逆に開き直り、自動運転を「ホームドアのない路線」で導入するとしている。「ホームドアがなければ多少停止線からずれても大丈夫」という暴論で試験走行が行われているのだ。
 最も乗降客の集中する香椎駅では、中高生の登下校時などはホームから人があふれかえる。ここに停止線で止まれない電車が入ってくれば、乗降が混乱するのは明らかであり、大事故は不可避だ。
 さらに、香椎線は高架化されていないので、車両は踏切を通過する。途中駅の「雁ノ巣」などでは、駅の中を地域の生活道路が走り、踏切も信号もない中で住民が線路を横断する。自動運転がそうした住民の通行や不測の事態に対応できることなどありえない。
 だからJR九州は、自動運転は「無人運転」を目指すものではない、と強調する。発信装置を押し、緊急時には停止措置をとり、後続車の追突防止や乗客の避難誘導を行う「係員」は乗車するとしている。しかし、この係員は「運転士」ではなく運転士資格も持たない。JR九州の「自動運転」導入の本質は、「運転士廃止」の攻撃だ。
 2016年の株式上場以降、駅の無人化、車両センターの外注化、車掌の非正規職化、史上最大の117本減便などの合理化を強行してきたJR九州は、ついに全面的な運転士廃止攻撃に踏み込んできた。
 自動運転=運転士廃止を軸としたJR九州のこれまでとは次元を画する大合理化への踏み切りは、JR東日本の運転士・車掌廃止、「労組なき社会」への転換の攻撃と一体だ。経団連が「日本型雇用の最終的な解体」を叫び、階級関係の根本的な転換が安倍政権の改憲・戦争国家化攻撃と一体で狙われている中で、JR資本がその先端を走り、「モデルケース」をつくろうとしているのだ。
 これは、帝国主義間争闘戦での敗勢にあえぎ、存亡の危機にある日本帝国主義ブルジョアジーの延命をかけた攻撃だ。ブルジョアジーにとって勝算や余裕のあるものではまったくない。「我なき後に洪水よ来たれ」と、あらゆる矛盾や犠牲を労働者人民に転嫁し、資本家階級のみが生き延びようとするあり方に対し、社会の隅々からの怒りは必ず呼び起こされる。

廃線化に住民の怒り

 JR九州は自動運転の導入に先立ち、ローカル線の全面切り捨てを進めてきた。熊本大地震、九州北部豪雨などの災害を「これ幸い」とし、恣意(しい)的な基準で選定した「不採算路線」を公表して、復旧を棚上げしてバス転換や上下分離を画策してきた。
 しかし、JR九州がバス転換のモデルケースと想定した日田彦山線(2017年の豪雨災害以来不通)の沿線住民は、ローカル線切り捨てに絶対反対を表明。沿線の東峰村では鉄道復旧を求めて400人が結集した総決起集会が勝ち取られ、復旧要請の署名は1カ月で4千筆を超えた。この活動を取り上げた地元紙のサイトには「国鉄の民営化は悪」の文字が並ぶ。
 一握りの資本家どもが私利私欲のために労働者を絞りつくし、地域住民の生活を破壊することに対して、ついに公然と怒りの声が上がり始めている。この怒りは、国鉄分割・民営化とJR体制を粉砕するまで決して止むことはない。

解雇撤回を軸に反撃

 動労総連合・九州は湧き上がる怒りの先頭に立ち、JR体制打倒、国鉄1047名解雇撤回、ローカル線切り捨て反対、自動運転導入=運転士廃止阻止を掲げて2・23国鉄集会を呼びかけている。この集会の呼びかけと一体で、1047名解雇撤回、ローカル線切り捨て反対、自動運転阻止の署名運動も開始される。
 東京での2・16国鉄集会と並び、九州でも新たな闘いが始まった。渦巻く怒りを糾合し、改憲阻止決戦の先頭に、闘う労働組合の旗を打ち立てよう!

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JR九州は都市部も含め次々と駅を無人化
2015年3月 香椎線 全線14駅
2016年3月 鹿児島本線 西牟田駅
筑肥線 加布里駅
日豊本線 豊前善光寺駅、幸崎駅
豊肥本線 緒方駅
日田彦山線 石田駅
長崎本線 肥前白石駅
佐世保線 三間坂駅
指宿枕崎線 山川駅
2017年3月 筑豊本線 折尾駅、仲間駅を除く9駅
2018年3月 日豊本線 牧駅
豊肥本線 滝尾駅
2018年12月 豊肥本線 大分大学前駅、敷戸駅
2020年5月 指宿枕崎線 郡元―喜入間の11駅
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