国鉄分割・民営化の破産 JR各社の現状 2・16国鉄集会に結集を JR北 安全解体から全面崩壊へ
国鉄分割・民営化の破産 JR各社の現状
2・16国鉄集会に結集を
JR北 安全解体から全面崩壊へ
2020年はJR北海道の〈終わり〉の年になりかねない。カネ、モノ、ヒトの全てが破綻している。新たな救済策は国鉄分割・民営化の枠組みの破産を認めることになるから政府は回避したい。JRの「自助努力」だけで乗り切ろうとすれば、沿線住民や労働者は犠牲にされる。JR北海道は19年4月、「JR北海道の『経営自立』をめざした取り組み」として、①「JR北海道グループ長期経営ビジョン」、②「JR北海道グループ中期経営計画」、③「2019年度事業計画」を打ち出したが、これはカネ、モノ、ヒトの裏づけのない空論だ。JR北海道のこの現実は、国鉄分割・民営化が総破産したことを示している。
経営は破綻し資金も枯渇
2019年度上半期は大きな自然災害がなく、鉄道運輸収入が前年同期比106%、371億円になり、減収傾向に歯止めが掛かったと言われる。18年度は連結営業赤字が過去最大の179億円まで膨らみ、連結経常損益も16年度以降、赤字が続いている。
JR北海道が収支改善の柱と位置付ける北海道新幹線も、実質開業初年度の16年度をピークに、利用も収入も下がり続けている。19年度上半期は前年同期を上回ったものの、目標を下回った。昨年10月、JR各社の中で北海道だけが消費増税分を超える運賃値上げに踏み切った。それにより40億円の増収を図るとされているが、その効果は予断を許さない。
JRが期待する外国人客は他の交通機関にシフトしているし、韓国の観光客は半減している。年末年始の利用状況は、新幹線が前年同期比3%増の7万人だが、在来線特急は函館方面が1%減の8万9千人、旭川方面が7%減の10万1千人、釧路方面が7%減の4万4千人、合わせて3%減の30万6千人となり、低落傾向にある。
JR北海道は2011年5月に石勝線トンネル内で特急が脱線・炎上した事故、13年9月の函館線大沼駅構内での貨物列車脱線事故を起こし、その後に発覚したレール数値改ざん問題も含めて国土交通省から事業改善命令、監督命令を受けた。
「総花的な身の丈以上の施策」から「安全再生」を最優先とする経営方針を掲げ、「安全投資と修繕に関する5年間の計画」(2014〜18年度)を打ち出すことで、国から総額1200億円の追加支援を受けた。しかし、発足時から安全投資を軽視してきたため、この程度では安全の回復に程遠かった。
さらに、「これ限り」ということで19、20年度は計400億円の支援を受けた。鉄道事業の赤字を補填(ほてん)するために設けられた経営安定基金の実質的な積み増しは31年度まで継続するが、それによる運用益の増加は低金利のもとでは期待できない。鉄道建設・運輸施設整備支援機構(旧国鉄)の財源も枯渇し、同機構の特例業務勘定によるJR北海道、JR四国、JR貨物や第三セクター鉄道事業者への助成金も底をついた。
さらに、道や市町村の支援も利用促進費以外は行わないと鈴木直道・北海道知事は言明した。JR北海道は、21年度以降、カネを調達する展望を全く見いだせていない。
地域を破壊し廃線を強行
国鉄分割・民営化から30年目の結果が、JR北海道の安全崩壊と経営破綻である。
JR北海道は16年11月、「『安全な鉄道サービス』を今後も継続するためには、年300億円の収支改善が必要」とし、そのためには「徹底した経営改善」と「事業範囲の見直し」が必須だとして、10路線13線区が「当社単独では維持することが困難な線区」だと打ち出した。「安全」を盾にした路線の切り捨てだ。
それから3年後、国鉄分割・民営化により廃止された旧天北線の代替バスが存続の危機に陥っているように、バス転換さえ困難になっている。人口減少と過疎化の進行、バス運転手の不足によるものだ。
すでに廃止された夕張支線(夕張―新夕張間)、今春廃止される札沼線(北海道医療大学―新十津川間)に続き、日高線(鵡川〔むかわ〕―様似〔さまに〕間)の存続についての決着が3月中に予想される。海岸線管理、災害復旧は法律上はJRの責任だが、それを放置し、不便な代替バスの利用者が少ないという理由で日高線を廃線にしようとしているのだ。
日高線の廃止が決まれば、JRがバス転換を促している他の3線区も存続は難しくなる。
安全崩壊のもとで労働者が大量退職
安全崩壊はどうか。この1カ月、車両や設備の故障に加え職員のミスは3日で2件以上の割合で発生している。19年度は「安全計画2023」(5年間)の初年度だが、車両も設備も老朽化しているため故障が続発している。安全崩壊は民営化の結果であり根本的な解決は不可能だ。
若手の大量退職も大問題になっている。JR北海道はJR各社の中で給与は最低、北海道全域の異動もある。その上、会社に将来の展望がなく、廃線問題で周囲の視線は冷たい。18年度の中途退職者は141人、その前の2年間も100人超が退職した。毎年の新規採用270人の半分が辞めてしまうのだ。19年度は過去最高の中途退社が不可避と言われる。
20年3月14日実施のダイヤ改定の柱は、①いしかりライナー(1日74本)を廃止して普通列車に、②快速エアポート(1日116本)を148本に増発、③特別快速(新札幌と南千歳のみに途中停車)を4本新設----などだ。運転時間が増え要員がさらに必要になるが、若手の大量退社の中では労働強化が不可避となる。しかも、東京五輪のマラソン札幌開催に伴い、JRはその期間中に札幌行の始発を2時間繰り上げるとしている。これにより、乗務員や地上勤務者の労働時間はますます増えることになる。
JR北海道の最大の問題は動労千葉のような闘う労働組合がないことにある。あらゆる要素が若手の意欲を奪い、中途退職を加速させているのだ。
分割・民営化撃つ国鉄解雇撤回闘争
JR東日本はJR総連・東労組を解体し、「労働組合のない社会」をつくる攻撃を最先頭で進めている。他方、JR北海道は自力で前途を切り開く力を持たず、JR総連傘下のJR北海道労組を簡単には切り捨てることができない。もちろん、JR北海道も資本である以上、「労働組合のない会社」を志向していることは間違いない。JR北海道労組との結託を続けていることが、国から新たな支援を受ける際の障害になることも考えられる。
北海道においても、JRの労働運動をめぐる決戦は迫っている。動労総連合・北海道は、国鉄分割・民営化で九州と並び523人の国鉄労働者が解雇された北海道で、あくまで国鉄分割・民営化に反対し、解雇撤回を貫くために17年に結成された。
JR北海道の現実は、国鉄分割・民営化が大破産したことを示している。このJR北海道の中に闘う労働組合を打ち立てる出発点が、2・16国鉄集会だ。