●全学連新春対談 大学の主人公は学生だ 京大無期停学処分撤回を

週刊『前進』08頁(3097号01面02)(2020/01/01)


●全学連新春対談
 大学の主人公は学生だ
 京大無期停学処分撤回を

(写真 【左】加藤一樹さん かとう・いつき。1999年生まれ。全学連書記長。京都大学。【右】高原恭平さん たかはら・きょうへい。1996年生まれ。全学連委員長。東京大学。)





(写真 3学生の無期停学処分撤回を求める集会で、被処分者を校外退去させようとする当局職員を学生の団結の力で撃退した【昨年12月10日 京都大学】)


 2020年の幕開けを迎え、全日本学生自治会総連合の高原恭平委員長、加藤一樹書記長が対談し、全国300万学生を組織し社会の変革をめざして闘う全学連運動の爆発に向け、決意と抱負を大いに語った。司会は斎藤郁真前全学連委員長。(編集局)

当局の弾圧をはね返す

斎藤 新年あけましておめでとうございます。まずは去年を振り返って印象に残ったこと、「この闘い良かったな」ということなど語ってもらえますか。
加藤 激動の一年でしたね(笑)。3月あたりから新歓を準備して、洞口朋子さんを推し立てて杉並区議会議員選挙をやりつつ新歓をやって、新入生と議論しながら運動の輪を広げていきました。6月の「タテカンフェス」という京都大学での集会では職員の弾圧で、立て看板を全部奪われ、当日みんなで立て看板をつくったのですが、弾圧をはねのけて看板に指一本触れさせずにやり切った。これは貴重な経験でした。
 9月には全学連大会で京大闘争にもっと力を入れることが提起されます。そしてこれまでの枠をこえて集会実行委員会という形で、無期停学処分撤回を掲げた12・10京大集会が打ち抜かれ、集会では100人規模で集まった学生が声を上げて、無期停学者を外に追い出そうとする職員を「処分反対!」のコールで追い返すという大勝利になりました。実際に学生の力で、当局のルールを実力で破っちゃう体験を多くの学生ができたことに勝利感を持っています。
斎藤 高原君はどうでしょうか。
高原 年明けから杉並区議選挙へ向けて、支持者へのあいさつ回りに何回も行きました。ほとんど前提を共有していない区民の方々と交流するのはいい経験でした。ギリギリの当選かという話もあったけど、ふたを開けてみれば一瞬で当確が出て上位当選。うれしかったですね。
 5月1日には天皇代替わりがあり安倍政権は改憲攻撃の一環として、天皇奉祝ムードで日本中を覆おうとしましたが、破産させられたと思います。全国労組交流センターのメーデーデモでは天皇制反対が掲げられ、さらに別の天皇制反対のデモにも参加しましたけど、全然奉祝ムード一色にならなかった。安倍政権の野望を破産させる一角を担ったことは、勝利として確認したいですね。
 全学連大会でもっと京大闘争を支えようと提起して、自分は10月からずっと京都にいまして。12月の集会へ向かう過程で、多くの寮生・学生と交流して団結も深め、友達になったりもして、非常に良かったです。

改憲と戦争を阻む闘い

斎藤 京大の現状のことを具体的に話してもらえますか。
加藤 京大は、僕が入った時まではいろんなサークルがキャンパスでイベントをたくさんやっていたんです。6月のタテカンフェスへの弾圧以降、サークルもイベントを控えるようになり、当局に目を付けられることを恐れています。みんなに何か訴えようと思ってしゃべるためには、大学に素性を知られないために着ぐるみを着て登場する現状があって、そのなかで9月に3学生が「職員に抗議した」だけで無期停学になりました。処分や当局の弾圧への恐怖は、学生全体にある印象です。
 しかし一方で、大学当局が全部正しいわけじゃないという感覚もあって、「怖いけれど何か言いたい」という学生がどんどん出てきていると思います。それを形にできるかどうか。
斎藤 この1年間でつかんだこと、自分なりに成長したと思えるようなことはありますか。
加藤 「一人主体的に動く人間が増えたところで大して変わらない」「自分が精いっぱい頑張ってできることを増やそう」という感覚があったのですが、12・10集会への過程を通して、主体が一人二人増えるのはものすごい力の差だと感じました。300万学生を組織していく、多くの学生が参加してやれる運動を目指したいと思いました。
高原 のぼりを作るとか準備過程を自分は担っていたんですけど、11月に京大当局に出禁にされ、その直後はどうしようかと。集会は大丈夫かという思いがあったんですが、本当に多くの学生に支えられて当日は打ち抜かれました。学生たちの1人が、最後まで支えてくれたと感謝していると聞いた時はやったかいがあったと思いました。

労働運動と連帯し

斎藤 一方で、安倍政権は改憲を2020年で何としてもやると言っています。それにどう立ち向かいますか。
高原 学生運動というと、テーマが「立て看板規制」であるとか「学生のモラトリアム運動」だと誤解されがちです。特に今回の無期停学処分のような非人道的なことが行われる大学の在り方を問うことは、当然社会の在り方を問う闘いでもあると思うんです。その意味では今、京大闘争はそれ自身はローカルで、参加している人も京大生が中心で、教員や近隣住民が少し加わる程度ですが、本当に社会を揺り動かす闘いだと思っています。相手は改憲につながる国策の一部ですから、やはり京大生の力だけでは勝てない攻防なので、もっと全国学生が関わっていけるようにすることが大切だと思います。京大は数少ない、新自由主義化を学生が押しとどめてきた大学ですので、ここを全国学生の力や労働運動・市民運動とも一体となって守り抜くことを通じて情勢を高揚させたいです。
 関西生コン支部に対する大弾圧が起きていますが、京大で起こっている重処分の乱発もそれと無関係ではなく、社会の中で政府や大企業などに異を唱えるような人々を排除していく動きとして一体です。もっと労働運動と連帯していきたい。そうした運動を、京大生が主人公になる形で作っていきたい。
加藤 今、京大で最大の問題は処分問題で、だけど学生全員を処分するわけにはいかないので、見せしめ的に一番目立って活躍している人を処分してくるわけです。だから処分を阻止・撤回させるための大きな方向性としてはやはりメジャー、主流派をとっていくことが必要。一人二人が頑張ったけど弾圧・処分されて......ということを終わらせたい。12月10日には100人以上が声を上げたわけですけれども、その数をもっともっと増やして、京大の主流派だし、社会の主流派をとっていかないと処分には勝てないと思っています。各闘争現場で社会変革を志す人間が主流になり、表舞台で旗を立てて人を集めることが大事です。
高原 安倍政権は2020年改憲をぶち上げていて、それを阻止する闘いを絶対につくり出す決意です。同時に呼びかける相手が何を考えているかは見据えないといけない。最近の民間の世論調査では「自分で国や社会を変えられると思う」という人は18歳だと5人に1人しかいない。他の8つの調査国で最も低い韓国の半数以下で、調査のあった9カ国中ダントツに低い。労働運動・学生運動・市民運動など社会運動で変えていくことができると思う18歳は2割もいない状況です。そこを崩していかない限りは、改憲阻止はできないだろうと思っています。「自分たちの力で社会を変えられることを常識にしていく」ことがやはり必要だと思うんです。そういう現状を見据えて戦略を作っていかないと、空回りしてしまうという危惧は持っています。
斎藤 加藤君はどのような問題意識ですか。
加藤 新自由主義が進むなかで、大学の現状は教授会の自治ですら解体されていて、職員はみんな非正規職で、学長が人事権を握っている独裁体制で、さらに言えば、学生自身も就職予備校のような大学を想定して入ってきている人が多い。主流派をとらないと勝てないので、一般学生というか政治的ではない学生の常識に寄り添うところからスタートすることを大事にしないといけないなと。これまでできていた、キャンパス内にこたつを出すみたいなことも禁止されたことで実はそれすら政治的で学生運動であるという感覚を持ったりします。

国家動員を拒否しよう

斎藤 安倍政権は今年、オリンピックを改憲へのてこにしようとしていますが。
高原 国家総動員を狙ってボランティアと称して学生に限らず中高生まで動員するということが行われるわけです。しかし、みんなで団結して拒否すれば動員なんてできないんだとしっかり宣伝したいと考えています。ぜひ一緒に立ち上がろうということを呼びかけたい。
 入試改革の話ともセットだと思うんですけれど、大学というものが一気に変わろうとしている。特に最近、大学を「学問の府」から完全に国家・政府や大企業の言いなりの場所にしていく政策が最終段階に入っていると思います。「学費無償化」とのバーターで大学運営への企業・政府の介入が強化され、入試改革も結局一部の業界団体と癒着したものにすぎません。先日は「新しい共通入試制度を導入しないとどうなるかわかってるだろうな」という恫喝が文科省から東大総長にされたことがスクープされましたよね。
斎藤 来年度入学する新入生は根本的に大学とか国の在り方に疑問や怒りを持っている人が出てくるでしょうか。
高原 東大では2015年にカリキュラムの改悪が相次ぎました。自分は15年度に入学して、安保国会の盛り上がりとも一体だったとは思いますが、学生がいろんな活動に参加した世代なんですよね。来年度の入学生は、こちらがしっかり構えれば、怒涛(どとう)のように決起する世代になると思います。

学生運動は楽しい

斎藤 最後に300万学生に訴えたいことはありますか。
加藤 「学生には力がある」ということを訴えたいです。今の大学で学問の自由を誰が守るのかと言ったら、やっぱり研究費の関係などしがらみのある教員が最初に立ち上がるのは難しい。結局学生が力の要です。学生は約300万人いるし、弾圧職員や国家権力も、力は有限。100人の学生がキャンパスに集まっただけで弾圧職員を追い返せるわけですから、300万人の学生が団結して立ち上がれば国家権力にも太刀打ちできるし、社会を十分に変える力があると思う。
高原 学生運動は楽しいものだということをアピールしたいな。大学が崩壊寸前だとか、安倍の改憲についても触れましたが、危機感だけでやってるのではないんです。自分たちで考えて、集会やデモなど一つ行動を起こし、その行動でさらに新しい学生とつながっていく。学生の実力で職員を追い返すみたいな感動的なことも起きる。学生運動というのは本当にやりがいのある楽しいものです。一緒にやっていきましょう。
斎藤 ありがとうございました。今年も活発にやっていきましょう。

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京大無期停学処分とは

 京都大学当局は昨年9月10日付で、3人の京大生に対して「無期停学」という重い処分を下した。「職員による不審者(=着ぐるみで素性を隠して行動に参加していた仲間の学生)の排除に抗議したこと」が「学生の本分にもとる」という許しがたいもの。しかも無期停学処分中はキャンパスに一歩も入れず施設の利用もできないにも関わらず、学費を満額(年54万円)払わないと除籍となるという理不尽な処分である。熊野寮自治会がこれに対する処分撤回署名を呼びかけている。

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