英EU離脱で階級戦争が激化 RMTが車掌廃止反対でスト

週刊『前進』04頁(3096号04面01)(2019/12/23)


英EU離脱で階級戦争が激化
 RMTが車掌廃止反対でスト


 12月12日のイギリス下院総選挙でジョンソン首相が率いる与党・保守党が大勝した。イギリスが来年1月末に欧州連合(EU)を離脱すること(ブレグジット)は決定的となった。国民投票でEU離脱が過半数を占めてから3年半、ようやく離脱手続きが始まる。ジョンソン政権は離脱に必要な法案を今週にも議会に提出し、年明けの早期に成立させようとしている。

「合意なき離脱」もあり

 イギリスは2020年末までの移行期間中、EUとの関税同盟と統一共通市場にとどまりながらEUとの自由貿易協定をまとめる。EUとの合意を得れば22年まで移行期間を延長できるが、ジョンソンは20年中に決着させると公約した。
 だが交渉合意は極めて困難と予測される。移行期間中に合意できなければ、21年1月にイギリスとEUとは無協定状態に陥り、「合意なき離脱」状態が発生する。イギリスとEUがそれぞれの利害をむきだしにして激突することになる。
 そもそもブレグジットとは、イギリスがEUとの関税同盟・単一市場(ヒト・モノ・カネの自由移動)に入ることと引き換えに認めてきたEUによる主権制限(労働者保護規定や環境規制など)から逃れて自由に法規制やルールを定めたいという資本の要求に基づくものだ。「イギリス第一」主義であり、対EU争闘戦(国内的には労働者人民に対する階級戦争)の激化策だ。
 ジョンソン首相は10月、EUと合意した離脱協定案は、北アイルランドだけにEUの関税や規制のルールを適用し、北アイルランドを事実上「国外」扱いにすることにしている。北アイルランドでは1997年に内戦が終わり、現在はアイルランド共和国との間は自由交通だ。北アイルランドを分離させ、アイルランドとの間に物理的な国境を再構築することには強い抵抗があり、できないのだ。

労働者人民が怒りの決起

 金融機関をはじめ多くの外国資本がブレグジットの影響を恐れて、すでにロンドンから大陸に拠点を移している。ブレグジットは実体的には進行している。多数のイギリス労働者が解雇を通告されている。イギリスの19年第2四半期の国内総生産は前期比マイナス0・2%。8年半ぶりのマイナス成長だ。
 イギリスの労働者人民は、EUがイギリスに課す民営化や緊縮政策で長年苦しめられてきた。国民医療サービス(NHS)の崩壊状態や学校間の競争激化と格差拡大、高額な大学授業料、付加価値税の大増税、子どもの3人に1人が貧困という状態——。こうした状況への怒りが国民投票におけるEU離脱の選択として表された。そのうえで排外主義の扇動や気候変動への無策に抗議する大規模なデモが闘われている。
 鉄道・海運・運輸労組(RMT)は車掌廃止に反対して12月2日から4週間のストライキに突入した。英第2の幹線鉄道であるサウスウェスト鉄道は4割の列車が運休している。ロイヤルメールの逓信労組(CWU)もクリスマス前の郵便ストを構えている。イギリス帝国主義・ジョンソン政権が排外主義を扇動しEU離脱を強行しようとも、労働者人民はその犠牲になることを拒否して闘うだろう。
 戦争と民営化、非正規職化、貧困、排外主義との対決は世界の労働者にとって共通の課題だ。
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