闘いの炎は全世界に広がる

週刊『前進』04頁(3094号03面01)(2019/12/16)


闘いの炎は全世界に広がる

フランス
 150万人の歴史的ゼネスト
 年金制度改悪に怒り

(写真 「年金改革反対。ポイント制は自分のためにも子どもたちのためにもならない」。横断幕を掲げて進むデモ隊【12月5日 フランス・リモージュ】)

黄色いベスト運動も労組ストに合流

 12月5日、マクロン政権による年金制度改悪攻撃に抗議し、フランス全土で150万人が参加して大規模な抗議行動が闘われた。
 闘いの主軸を担ったのは公共部門の労働者たちだ。フランス国鉄(SNCF)をはじめとする交通機関の労働者、航空管制官、医療労働者、教育労働者、消防隊員、弁護士らがゼネラルストライキに突入した。
 これにより国鉄は9割の電車が止まり、パリの地下鉄は16路線中11路線が運行を停止。高速鉄道やエールフランスなどの航空便も大幅に運休し、街頭はデモに出た労働者民衆であふれた。製油所の労働者も大半がストに入った。多くの学校が休校となり、児童らもデモに参加した。エッフェル塔やルーブル美術館、ベルサイユ宮殿もストで閉鎖。全国で行われたデモの数は約200に上る。
 とりわけ重要なのは、政府による燃料税引き上げ提案に端を発し、1年以上にわたってロータリー占拠を続ける「黄色いベスト」運動がこの闘いに合流したことだ。マクロンへの怒りの声と行動が文字通りフランス全土を覆い尽くし、1995年以来の大規模ゼネストが実現した。
 国鉄などでは週明け以降もストが継続されており、10日のデモにも全国で90万人近くが参加。政府の対応によってはクリスマスまでストが続けられるとの予測もある。闘う人々の決意は固く、ある労働者は「ストの長期化に備えて1カ月間節約し、必要な資金をためた」と語る。

積もりに積もった怒り解き放つ闘い

 「フランス社会は危機にさらされている」----11月に行われた世論調査では、実に89%もの人々がこう回答した。今回の巨大な闘いの背景には、公共部門が切り捨てられ生活が苦しくなっているという実感、「このままでは生きていけない」という労働者民衆の切実な危機感と怒りがある。
 現在のフランスの年金制度は、公務員・民間企業労働者・農業従事者・自営業者など、職種と業務内容によって42種類に細分化されている。これを一本化しようとするのが今回の改悪である。マクロン政権は、鉄道労働者や公務員労働者が他の業種に比べて早期の退職を認められていることを「優遇制度」であるとして標的にし、「特権の廃止=均等化」を打ち出している。実際に生じる結果は、すべての労働者に対する年金支給開始年齢の引き上げ、年金受給額の減額である。年金制度の一本化により、労働者は一日働くとポイントが与えられ、それに応じて年金支給額が決まるシステム=ポイント制度に組み込まれる。年金保険赤字の解消=財政再建を掲げた年金制度の改悪は、マクロン政権が就任以来、一貫して行ってきた労働法制改革の総仕上げである。
 しかしフランスでは、労働者が不屈の闘いで新自由主義攻撃の貫徹を阻み、国鉄の民営化も実力で止めてきた。マクロンはこの間、国鉄をはじめとする「公共部門の労働者は優遇されている」と宣伝することで労働者の間に分断を持ち込み、労働者階級総体の権利剝奪と低賃金化を狙ってきた。しかし今回の闘いは、この卑劣なキャンペーンを打ち破って進んでいる。さらに黄色いベスト運動と労働組合の闘いとが相互に影響し合い、全国・全人民がマクロン政権に立ち向かっている。
 フィリップ首相は11日に年金改革案の全容を公表する。それ次第で闘いはさらに長期・大規模化する。日本でも続こう。

香港で80万人がデモ
 警察に一指も触れさせず

(写真 「5大要求」のボードを手に80万人がデモ【12月8日 香港】)

(写真 「労働者・学生・商店の三つのストと共に広告労働者も進む」と書かれたスローガンを掲げ広告労働者が集会【12月2日】)

 12月8日、香港で80万人の大規模デモが闘われた。このデモは、12月10日の「世界人権デー」に合わせて設定され、普通選挙などの「5大要求」を掲げて行われた。理工大学の不屈の闘いとその勝利、そして区議選の大勝利の地平の上に警察もデモを許可せざるを得ず、まさに大規模な大衆決起の闘いとなった。
 午後3時、デモ出発点のヴィクトリア公園からデモは出発した。デモの最中にも次々と合流してくる人々。大通りを埋めるデモにもかかわらず、膨大な人が集まったために、最後のデモが出たのは午後6時近くとなった。
 参加者は「5大要求は一つも欠けてはならない」「昨日のウイグルは今日の香港、明日の台湾」「市民は顔を隠すが、林鄭は心を隠している」などのスローガンを掲げてデモし、また闘争歌の「香港に栄光あれ」を歌いながら集会とデモを闘い抜いた。
 警察はこのデモへの弾圧を画策し、部分的な衝突もあったが、完全に大規模デモの力が警察権力を圧倒し、闘いは夜まで勝利的に貫徹された。
 この前日の7日、理工大闘争の最中に新たに香港警務処長となった強硬派として知られる鄧炳強は、北京で中国共産党中央政治局員で中央政法委員会書記の郭声?と会談し、香港警察が暴乱を制し、秩序を回復することを第一の任務とすると確認していた。またこの8日の早朝、香港の各所を襲撃して11人を逮捕、拳銃や実弾105発、軍刀などを押収したと発表している。香港警察は中国政府との確認の上で、まさにあらゆる手段を使ってデモを弾圧しようとしたのである。主催者に許可にあたって「平和デモ」を強く要請したのもその一環だ。
 だがこうした香港政府と中国政府のもくろみは、完全に粉砕された。80万人の決起は、香港の労働者学生の闘いがますます燃え上がり、不屈にかつ戦闘的大衆的に進もうとしていることをあらためて示した。この怒りの迫力と実際の大決起の前に警察は一指も触れることができなかったのだ。
 12月1日の「初心を忘れない」デモ以来の1週間、この8日に向けて香港の労働者大衆は連日決起してきた。翌2日には、広告労働者が「広告公民」という団体を立ち上げて集会を行い、「労働者、学生、商店の200万人ストライキとともに進む」「前線で闘う者を孤立させるな」として、2日から6日までの5日間のストライキに立ち上がった。さらに労働者が昼に一斉に街頭に繰り出してデモをする「あなたと一緒にランチ」行動は連日行われ、日々林鄭政権を追いつめてきた。こうした闘いの上に、8日の80万人デモは勝ち取られたのである。

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