カードの取得強制やめろ 全住民監視するマイナンバー 公務員新採時の義務付けを許すな

週刊『前進』02頁(3093号02面01)(2019/12/12)


カードの取得強制やめろ
 全住民監視するマイナンバー
 公務員新採時の義務付けを許すな


 マイナンバーカードの普及率はいまだ14・3%。安倍政権はあらゆる形で広げ、カードなしには日常生活が困難になる実質義務化を狙っている。カードは全個人情報とリンクし、申請時の顔写真映像と併せて国家によるAI(人工知能)・顔認証技術を使った常時監視の道具となる。そのためにまず公務員に違法に取得の圧力をかけ、新規採用職員には最初から所持を義務付けようとしている。労働組合の力で阻止しよう。

中国ウイグル弾圧が実例

 マイナンバーとは、全住民に12桁の番号を付けて国家が監理する「国民総背番号制」だ。安倍政権は全員にカードを持たせることで戦争・改憲と一体の監視国家化・治安国家化を進めようとしている。
 監視国家化の恐るべき実例こそ、米CIA(中央情報局)元要員のスノーデン氏らが暴いた米本土・全世界での作戦計画であり、中国政府によるウイグル弾圧の許しがたい現実だ。
 中国の治安当局は、スターリン主義の圧政からの解放を求める労働者人民の闘いに恐怖し、全土に顔認証・監視システムを張りめぐらせた。とりわけ北西部の新疆(しんきょう)ウイグル自治区で少数民族ウイグル人らを監視する「一体化統合作戦プラットフォーム」を構築。個人と家族の全情報、車のナンバー、監視映像や携帯電話・メールなどあらゆる情報を収集・解析し、多数のウイグル族を潜在的「危険分子」として弾圧している。2017年6月には「疑わしい」人物2万4千人を特定し700人を拘束、1万5千人を収容所に送ったという。
 これと、危機に立つ安倍政権の改憲と戦争国家化・監視国家化、関西生コン支部弾圧をはじめとする労働組合破壊と沖縄新基地建設強行のための治安弾圧、外国人労働者の長期収容・強制送還などの攻撃の狙いは同じだ。
 地下鉄で顔認証実験が続いている。JR東日本はスイカで触れることなく改札を通れる装置を検討。政府は来年から成田・羽田・関西空港で訪日客の顔写真を撮影し、保安検査や搭乗ゲートでパスポートや搭乗券の確認を省く「顔パス化」を実施すると発表した。こうした形で個人情報のすべてが国家によって集められ、全人民が監視される。実に恐るべきことだ。

防衛産業に続き治安産業が肥大

 ウイグル弾圧に関わった中国の監視カメラ大手・ハイクビジョンにソニーとシャープが画像センサーを供給、パナソニックや日立、東芝、ホンダなども生産委託や共同研究をしている事実が明らかになった。
 ハイクビジョンなどはウイグル監視プロジェクトで12億㌦を売り上げた。さらに少数民族を自動判定する顔認識ソフトを売り込み、パソコンやスマホの固有アドレスを収集する装置も供給。16年12月以来ハイクビジョンの株価は55%も上昇している。
 製造業の衰退が著しい日本の企業も、ここで生き延びようとしている。安倍政権による際限のない予算で増殖する防衛産業に次ぐ巨大産業として治安産業が肥大化しつつある。AI・デジタル化を土台とする戦争と監視国家化のための腐りきった利権構造を絶対に許してはならない。

来年度予算は5千億円に

 政府は全住民にカードを持たせ、医療機関、買い物や映画、図書館や交通機関の利用などあらゆる行動と結び付けることで、リアルタイムの動向監視から思想掌握まで狙う。
 そのために来年度予算としてシステムの維持と普及に2100億円、来年9月から半年間、カード所持者がキャッシュレスで買い物をしたら最大5千円のポイントを付けるために2500億円、さらにカードそれ自体で決済できるシステムの構築(額未定)まで計上しようとしている。「ポイント還元」で釣って普及を促す詐欺まがいの行為に5千億円近い巨費を投じようとしているのだ。

個人情報流出の危険は計測不能

 しかしカードの取得は一向に増えない。誰もが危険性を知っているからだ。
 神奈川県庁が扱ってきたあらゆる個人情報や秘密情報の入ったサーバーのハードディスクが委託業者の社員を介して転売されていた事実が発覚し、衝撃を与えている。転売は以前から繰り返されており、どれだけの情報が流出したか全容は不明のままだ。
 就職情報サイト「リクナビ」を運営するリクルートキャリアは、就活生がどんな企業の情報を閲覧したかの記録を解析。18年以降、9万5千人分の内定辞退率を予測しトヨタ自動車など多数の企業に売っていた。その情報は不採用に直結し人生を左右する。それが売買されていたのだ。
 政府や企業はデジタル化された個人情報の流出が明るみに出るたびに「罰則・処分を重くした、システムを変えたから今後は大丈夫」と説明してきた。しかし、そんなことはありえない。デジタルデータ流出の危険性は計り知れない。

強制はばむ組合の闘いを

 総務省は公務員全員のカード取得へ圧力を強めて、全住民の取得義務化の水路にしようとしている。
 総務省は全自治体に職員の取得状況を来年3月まで何回も報告させる通知を出した。共済組合にも健康保険証として使えるようになるからとして加入者・被扶養者全員の取得を求めた。国家公務員には、各省庁が家族も含め取得の有無と取得しない場合はその理由まで提出することを求めている。明白な威迫行為だ。これに対し現場から怒りが噴出した。
 カード発行・再発行業務は人員不足の中で大変な過重労働だ。政府が明言し目標とする通り、デジタル化は職員の半減と非正規職化・全面民営化の土台となる。カードの普及は公務員自らの首を絞めることになる。そもそもマイナンバーは総背番号制であり、カード登録は顔認証・監視国家化のためだ。公務員労組の多くが取得強制に反対し、当局から「強制ではない」との言質を取っている。
 さらに総務省は全国の自治体に新規採用職員は採用時に全員取得済みとすること、非常勤職員(会計年度任用職員)にも勧奨することを求めている。弱みに付け込んで取得を迫る明確な憲法違反・法律違反だ。全単組・職場で新採・非正規職への強制に反対しよう。
 いま公務員労組が闘えば安倍の攻撃を頓挫させることができる。カード取得強制に絶対反対し、総背番号制廃止まで闘おう。

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政府のカード普及促進策

●2019年度 全ての公務員が取得
●2020年度 カードの活用で「自治体ポイント」付与
●2021年3月 健康保険証として活用開始/個人向けサイトの閲覧情報を拡充
●2022年度 ほぼ全住民が保有

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