書評 「となりの難民」 織田朝日著 知ってほしい、これが入管の現実 外登法・入管法と民族差別を撃つ全国実行委員会 十亀トシ子
書評
「となりの難民」 織田朝日著
知ってほしい、これが入管の現実
外登法・入管法と民族差別を撃つ全国実行委員会 十亀トシ子
東京オリンピックで外国人が犠牲に
11・3労働者集会にクルド人難民のデニズさんが登壇し、4日後には入管に三たび収容されるかもしれないという緊迫した状況の中で「入管では生きられない」と切々と訴えた。そして、11月7日、たった2週間の仮放免で再び牛久入管に連れ戻された。彼の発言は今、全国の入管収容所で何が起きているのかを鮮明に突き出した。
日帝・安倍の戦争・改憲攻撃のなかで、入管体制が極限的に強化され、外国人に対する言語に絶するような弾圧・抑圧が続いている。東京オリンピックまでに非正規滞在外国人を一掃しようとする出入国在留管理庁(入管庁)の攻撃であり、全国の収容施設で約1300人の外国人が強制送還の脅迫・恐怖と闘い抜いているのである。
こうした入管弾圧と真っ向から闘っている織田朝日さんが『となりの難民 日本が認めない99%の人たちのSOS』を出版した。約200㌻のハンディな書籍だが、彼女の15年間の活動の蓄積が、読みやすい文章と織田さん自身が描いた「ある日の入管」と題する4コママンガを使って紹介されている。
入管面会は苦しみを受け止める時間
「第1章 私が出会った難民」「第2章 世界と日本の難民事情」「第3章 『入管』に収容される難民」「第4章 日本で育った難民の子どもたち」の4章で構成されており、現場からのルポルタージュとして出色である。まさに織田さんが、被収容者の怒りと憤り、悲しみと一体になって語っていると言える。
「事情があって母国に帰れない人たちによりそい、ともに歩み、私なりに頑張ってきました」と語り、「面会は苦しみを受け止める時間」「支援が支配にならないように」という織田さんのあり方は面会活動をしていく上で重要な示唆だと思う。
織田さん自身は自分の闘い=行動を非常に謙虚に語っているが、彼女たちのグループの取り組みで、私たちも触発されたことがたくさんある。
東京入管はJR品川駅港南口からバスが出ている。港南大橋を渡ると屋上に東京入管の十字型をした高層ビルが見えてくる。この入管ビルの周りをぐるっと歩き、入管に抗議すると同時に7階以上の収容施設にいる被収容者に呼びかけるデモは、被収容者たちを直接激励する行動だ。もっと頻繁に取り組みたい闘いだ。
日本で育つ非正規滞在の子どもたち
特に筆者自身が「ターニングポイント」として書いているベリワン・トーマ(メルバン)さんの収容と仮放免の実現までの闘い。SNSを駆使し、渋谷で「メルバンを救おう」というスタンディングに取り組み、入管の現実を弾劾する新たなグループも生み出し、メルバンを取り戻したことは大きな成果だと思う。これはメルバン自身が「私のことを外に知らせて」と決断した勇気と、それに応えた織田さんの決断が生み出したものだ。
また、子どもたちの学校でのいじめの問題などにも、学校当局との話し合いなど積極的に取り組み、一つ一つ解決していく行動力には頭が下がる思いだ。
先日、ある仮放免者から電話があった。高校生になった娘が「アルバイトをしたいけど私はできないのよね」と言っていると。子どもであっても仮放免者だからアルバイトもできない。日本生まれの子どもたちが結局は親と同様の無権利状態に追い込まれていくことなど全く理不尽だ。
ようやく国会の法務委員会でも長期収容問題が取り上げられるようになった。治安維持法以上とも言える最悪の人権侵害が外国人に襲いかかっていることを見過ごしてはならない。
一人でも多くの方々が本書を読んでほしい。そして難民認定率1%以下の日本の恥ずべき人権侵害の現実をどのように変革するのか、真剣に考えていこう。