英郵便労働者が12月ストへ 民営郵政の合理化に怒りが噴出

週刊『前進』02頁(3091号02面02)(2019/12/05)


英郵便労働者が12月ストへ
 民営郵政の合理化に怒りが噴出

(写真 配達事務所の外で組合会議を開くチェスターの郵便労働者【11月】)

 欧州連合(EU)離脱問題に揺れるイギリスは、12月12日の総選挙を前にストライキの波に覆われている。全国147大学の教職員12万人が賃上げと年金制度防衛を掲げてストに入り、ロンドン地下鉄では鉄道・海運・運輸労組(RMT)がストを構えて当局と交渉中、巨大スーパーマーケットのアスダ(ASDA)の労働者は過酷な職場支配に抗して協約締結を拒否、ストを構えている。
 そのなかで逓信労働組合(CWU)に結集するロイヤルメール(イギリス郵便)の労働者11万人がスト権投票を行い(投票率76%)、97%の高率でスト突入の意志を表明した。
 スト権投票の進行中、リバプール近郊の郵便集配現場で職制がムスリム系の労働者に差別的な言動を行った。怒った職場の仲間たちは直ちに抗議のストに突入、50人が職場前にピケットを張った。闘いはたちまち周辺地域に波及した。
 動転したロイヤルメール当局は11月8日、「組合の監視のもとに組合員が職場で投票用紙に記入し、それを投函した」と主張、証拠写真なるものを提出し、スト権投票に疑義を申し立てた。ロンドン高裁は13日、ロイヤルメールの訴えを認め、スト権投票無効という決定を下した。その上でストは総選挙の郵便投票の妨害になるから禁止とした。
 CWUは控訴した上で、再度スト権投票を行い、クリスマス前にストに入ることもあるとしている。
 スト権投票はサッチャー政権下、1984年の労働法制改悪で、職場ではなく労働者が居住地から郵便で投票する方式になった。

英の郵政民営化

 サッチャー保守党政権は1981年、民営化の先駆けとしてロイヤルメールの業務から電信・電話を分離した。86年に郵便業務を配達・小包・窓口業務の3部門に分割し、89年には業務の外注化を開始した。
 ブレア労働党政権は、2012年を期限にEUにおける郵政民営化を完了するというEU指令をてことして、03年にロイヤルメールを政府が株主となる法人に転換した。06年の政府保有株の市場開放、13年のロイヤルメール株の民間公開で郵政民営化は「完了」した。その結果、ロイヤルメール・ホールディングス公開有限会社が持ち株会社として①郵便事業②物流・小包・宅配事業③国際物流④窓口業務の4社を保有・運営するようになった。

「闘いの冬」再来

 ロイヤルメールは国内外の数多くの宅配業者との競争にさらされ、リストラ攻撃を強めることで延命を図っている。駅やスーパーへの郵便ボックスの設置を進め、従来の郵便局を閉鎖して人員を削減し、休日や病気休暇の権利を奪い、生活できる賃金さえ払わないなど、攻撃は系統的だ。
 郵便労働者は1988年、郵政業務3分割に反対して「18年ぶり」に闘争を再開、2003年、07年と民営化の結節点で山猫ストを含むストで闘った。
 しかしCWU本部は08年、13年、17年とスト権投票での圧倒的多数によるスト決定を裏切り、政府に屈服して事前にストを中止、労資交渉にのめりこんだ。
 CWU本部は14年にロイヤルメールの「成長・安定・長期計画」に協力して非正規職労働者の導入を容認、18年に時短と引き換えに年金制度改悪、効率化のための配達ルートの変更、作業監視モニター設置などを受け入れ屈服を深めた。
 しかし総選挙を前にしたスト激発にマスメディアは「戦闘的な労働組合運動が勢いを増しつつある」「1978〜79年のような『不満が爆発する冬』の再来か」と報道している。1400万人が貧困にあえぐ現実もある。郵便労働者をはじめイギリス労働者階級は、新自由主義の手先となって民営化と非正規職化を促進しストを圧殺してきた労働党と体制内労働組合幹部に抗して闘っている。
このエントリーをはてなブックマークに追加