戦争法成立で自衛隊志願者が激減 5年連続で採用計画を下回る異常事態 改憲の狙いは徴兵制だ

発行日:

週刊『前進』02頁(3091号01面03)(2019/12/05)


戦争法成立で自衛隊志願者が激減
 5年連続で採用計画を下回る異常事態
 改憲の狙いは徴兵制だ


 イラク特措法に基づく自衛隊派兵の一環としてクウェートに派遣され、任務中に負傷した池田頼将元3等空曹が国に損害賠償を求めた裁判で、名古屋地裁(前田郁勝裁判長)は11月26日、原告の請求をすべて棄却する反動判決を言い渡した(詳報次号)。安倍政権が改憲と大軍拡をもって「戦争する国」への全面転換を狙う中、矛盾の集中点となっているのが自衛隊である。今回の不当な反動判決は、自衛隊内外からの怒りの爆発を恐れた安倍政権の意を体したものにほかならない。

戦闘担う兵力の充足率は約7割

 自衛隊の危機と矛盾は、慢性的な人員不足と近年における志願者数の急減に如実に現れている。
 防衛省は昨年10月、自衛官の採用年齢の上限を28年ぶりに変更し、従来の26歳から一気に32歳へと大きく引き上げた。安倍政権による2014年7・1閣議決定と翌年9月の安保戦争法の成立により、集団的自衛権の行使を含むあらゆる戦争行為が「合法化」されたことで、若い世代の志願者が急激に減少したことが背景にある。
 自衛官候補生試験の応募者数で見ると、13年の3万3534人に対し17年は2万7510人に激減。18年度には、防衛省の採用計画数9882人に対し、実際に採用できた人数は7075人(19年3月末現在)で計画の7割程度にとどまった。陸海空ともに5年連続で計画を下回るという異常事態だ(図)。特に安保戦争法で米艦防護などの任務が大幅に拡大される海自は、計画の59・9%しか採用できなかった。
 17年3月31日現在で、自衛官の定員24万7154人に対し、現員は22万6789人で充足率91・8%と1割近くも定員割れとなっている。最前線で戦闘任務などを担う実戦兵力としての陸士・海士・空士の充足率は73・7%まで下がる。実際の戦争では、兵員の3割を失った部隊は組織的戦闘が不可能となり、事実上の「全滅」とみなされる。自衛隊は戦う前から全滅していると言っても過言ではない状態なのだ。
 これでは日本帝国主義の延命のための本格的な侵略戦争はできない。安倍はそのことに激しく危機感を募らせ、こうした状況を突破するために「自衛隊明記の改憲」を狙っているのだ。

自治体に名簿の提出を迫る安倍

 安倍は昨年2月の自民党大会で、全国931自治体のうち自衛隊に名簿を提出しているのが36・3%にとどまったことをやり玉に挙げ、「隊員募集に対して都道府県の6割以上が協力を拒否している」などと主張した。実際にはほとんどの自治体が自衛隊による住民基本台帳の閲覧を認めており、「協力を拒否している」という事実はない。だが安倍はそれでは満足せず、自衛隊の隊員確保への全面的な協力を、改憲によって自治体や学校現場に強制しようとしているのだ。その先にあるのは本格的な徴兵制の導入である。
 だがそもそも自衛隊の志願者激減は、安倍の進める改憲・戦争が何の正義性も求心力もないことの現れであり、安倍のような連中の命令一つで戦争に行かされることへの青年世代の強い反発や拒否感を示している。そしてその背景にあるのは、「二度と戦争を許さない」と決意した日本労働者階級の戦後一貫した闘いが、今日まで9条改憲を許さなかったという事実だ。
 歴代日本政府は憲法9条をなし崩しに破り、日米安保の強化と一体で自衛隊の増強を進めてきた。1991年湾岸戦争後、機雷掃海部隊のペルシャ湾派兵をもって自衛隊の海外派兵が始まると、歴代政府は憲法9条を残したままで、PKO(国連平和維持活動)派兵やアフガン戦争支援のためのインド洋派兵、「復興支援」と称したイラク派兵、「海賊対策」を口実としたソマリア派兵などを次々と強行。それに対する憲法違反の疑義を問われるたびに「戦闘地域への派兵ではない」「米軍の後方支援はしていない」「付近で戦闘行為はなかった」などとうその説明を重ねてきた。だからこそ、池田元3等空曹のように海外派兵任務中の負傷者が出ると、徹底的な事件の隠ぺいと口封じ、パワハラ・退職強要などを繰り返したのである。

中東への新たな派兵を許すな!

 安倍・自民党の改憲の狙いは、憲法9条の制約から自衛隊を「解放」し、「自衛の措置」と称した自衛隊のあらゆる戦争行為を合憲化することにある。そのような自衛隊の維持・増強を憲法上の義務として全社会に強制し、青年を戦場に動員しようとしている。
 安倍政権は改憲策動と並行して、年内にも海上自衛隊の新たな中東派兵を閣議決定しようとしている。池田裁判を支え、自衛隊員やその家族の怒りの声とつながり、侵略派兵阻止へ闘おう。改憲・戦争阻止!大行進を全国で拡大しよう。
このエントリーをはてなブックマークに追加