特区連が賃下げ丸のみ 闘う労働組合が絶対必要だ 青年先頭にストライキの復権を
週刊『前進』04頁(3090号02面01)(2019/12/02)
特区連が賃下げ丸のみ
闘う労働組合が絶対必要だ
青年先頭にストライキの復権を
(写真 11・18特区連総決起集会は1150人の大結集となり労組交流センターのビラが多くの共感を集めた【東京・北区】)
11月21日、東京・特区連(特別区職員労働組合連合会、4万人)執行部は、23区長会による月例給平均2235円の大幅賃下げ提案に屈服し妥結した。「人事委員会の賃下げ勧告は理不尽」だが「2年連続で勧告不実施となれば制度の存続自体が問題となって今後は各区ごとの交渉になりかねない、国の介入も招く」として、賃下げを丸のみしたのだ。これでいいのか! 青年を先頭に現場から怒りが噴き出している。
「年間給与は増」の大うそに怒り
妥結内容を知った各区の職場では「要は賃下げじゃないか」「何が闘争の成果だ」「なぜストライキで闘わないのか」「こんな特区連はいらない」という声が次々と上がった。執行部が「成果」とするのは、①月例給平均2235円の賃下げは今年4月にさかのぼってではなく、来年1月からにする、②来年1~3月の退職者の退職金は減らさない、ということでしかない。賃下げの「丸のみ」に等しく、1月から大幅に基本給が減る現実が労働者にのしかかる。残業代や一時金、4月以降の退職金、生涯賃金や退職後の年金はさらに削られる。
すぐばれることなのに吉川貴夫委員長は、〝一時金(勤勉手当)は勧告に基づく引き上げを実現し、月例給引き下げは1月にさせたから(その分を加えて計算すれば)2万9千円の賃上げをかちとったことになる〟と強弁。特区連機関紙は「年間給与は平均5万1千円の増」とした。賃下げではなく「大幅賃上げ」であるかのようにあざむく大うそだ。「どういう計算なのか意味がわからない」という声が続出している。
青年の低賃金はいっそう深刻に
青年労働者の怒りは収まらない。高卒新規採用職員の初任給は地域手当を入れて最低賃金並みだ。昨年4月導入の新人事・賃金制度で、主任・係長にならないと賃金がほとんど上がらなくなった。定期昇給も50歳で頭打ち。青年は「一生低賃金」のままとされる。地域ブロック集会で区職労青年部の代表は「組合費が出せなくて脱退する、奨学金を返せず病気になるまで働いて離職を余儀なくされる青年が増えている」と訴え闘う決意を述べた。こうした状況にもかかわらず幹部の交渉だけで賃下げを決めていいわけがない。
さらに一時金に占める勤勉手当の割合が拡大する。全職員同率でなく人事評価で額が増減する勤勉手当は管理職の力を強め労働者の競争を激化させて団結を破壊する。組合の力が弱まってパワハラが日常化し、慢性的な人員不足のなかでサービス残業を拒否できない職場になっていく。こんな「毒入りまんじゅう」を許すわけにはいかない。
賃下げのための制度はいらない
区長会は「(公務員のスト権などの制約の代償措置としての)勧告制度の趣旨を踏まえ、2年連続の勧告不実施は避けるべき」「このままでは勧告制度自体がなくなり、統一交渉でなく各区ごとの交渉になるが、それでいいのか」と脅し、特区連執行部もこれに同調して賃下げをのんだ。しかし賃下げは賃下げだ。人事委員会勧告(人勧)制度も新人事・賃金制度も、生活給としての賃金を破壊する制度であることがはっきりした。「新人事制度が失敗だった」という声が上がっている。こんな賃下げのための制度、闘いの足かせなどいらない。
執行部は「国の介入を招く」ことを屈服の口実に挙げた。しかし地方自治体と人事委員会の頭越しに、賃下げと勤勉手当の拡大を迫った安倍政権の10月11日の閣議決定こそ、国の介入そのものだ。総務省は東京23区を念頭に「民間の賃金が著しく高い地域」では民間に準拠することなく賃金を引き下げることを求めた。これに応じたのが特別区人事委であり区長会だった。この攻撃と闘うことなく屈していいわけがない。労働者の力を信じて絶対反対で闘えばいいのだ。
賃金闘争は階級闘争であり、賃金は闘ってかちとるものだ。公務員賃金闘争は全労働者に対する賃金破壊との最先端の攻防となっている。来年4月施行の同一労働同一賃金法を口実に、JPなどでは「格差是正」と称して正社員の諸手当・福利厚生費の一斉削減攻撃が激化している。銀行職場では生活給としての年功賃金制の廃止、成果主義賃金への完全移行の攻撃が始まった。改憲・戦争と一体で全労働者の最低賃金化が狙われている。全職場に怒りが満ちている。公務員労組の絶対反対の闘いが情勢全体を動かすことになる。
闘いはこれからだ。安倍政権は利権まみれの腐りきった姿を暴かれ追いつめられている。恐れる必要はない。怒りを結集し闘う労働組合の団結を東京23区の全職場でつくり出そう。人勧制度を実力で打破し、一律大幅賃上げ、新人事・賃金制度撤廃へ闘おう。
団結を固め闘う労働組合再生を
18秋闘で特区連と東京清掃労組は本気でストを構えて賃下げを阻止した。「闘っていいんだ」「闘えば勝てるんだ」という確信があふれた。今秋闘も闘いの機運がみなぎっていた。昨年に続き組合員数をはるかに超える反対署名が集まった。各地域集会は空前の結集となり青年部が先頭を担った。11月18日の全体集会は1150人の大結集となった。この現場の熱気と意欲を過小評価してはならない。この力をもって当局と対決することが求められていた。しかし執行部は闘わずして敗北の道を選んだのだ。本当に許しがたい。しかしあきらめてはならない。労働組合は労働者の生活と権利を守るためにある。その再生は絶対に可能だ。19秋闘は青年部、女性部の力強い前進を示した。敗北の悔しさをかみしめ、青年を先頭に絶対反対で闘う区職労をつくり出そう。すでに東京で会計年度任用職員制度をめぐって非正規職のストが闘われている。ストを復権し闘おう。