台湾鉄道脱線事故の真相 故障知りながら修理拒否し運行指示 労組の闘いが当局の人命軽視暴く
台湾鉄道脱線事故の真相
故障知りながら修理拒否し運行指示
労組の闘いが当局の人命軽視暴く
11・3労働者集会には台湾から3人の仲間が参加した。台湾鉄道産業労組の徐仲能(シィーチョンノン)さんと、桃園市客室乗務員職業労組の李怡静(リイチン)さん、消防士組合(台湾消防員工作権益促進会)の朱智宇(チュジーユィ)さんだ。彼らが語ってくれた台湾の労働運動に関する報告で特に衝撃的だったのが、昨年10月に起きた台湾鉄道事故をめぐる話だった。事故の真相を隠し続け、全てを運転士の責任にして逃げる当局との激しい闘いが現在も続いている。
2018年10月21日、台湾北部の宜蘭(イーラン)県で特急列車の脱線事故が起きた。列車が高速のまま急カーブに突入して8両編成の全てが脱線、先頭車両以下5両が横転・大破して18人が死亡し、数百人が負傷した大惨事だ。
これについて鉄道産業労組のシィーチョンノンさんから、「事故を起こした列車は、発車する前からブレーキ系統のエアポンプに故障があると分かっていた。しかし台鉄(台湾鉄道管理局)は人員の不足や資材の欠乏を理由に修理を拒否し、運転士に故障した列車を運転させた。運転士は救援を求め続け、最後には不幸にも転覆したのです」と重大な事実が語られた。
運転士は運行中、無線を通して「この車両は故障しています。もう停車する許可を願いたい。または車両を交換したい」と必死に訴え続けていたとのこと。だが当局はこれを無視して走行の継続を指令し続けた。そしてついに、新馬(シンマ)駅手前の急カーブを曲がり切れずに脱線・転覆したのである。まさに当局による恐るべき人命軽視がもたらした大事故だ。
さらに問題なのは、台湾政府と台鉄当局がこの真相をひた隠しにして一切の責任を運転士のみに押しつけてきたことだ。シィーチョンノンさんは「当局は、この悲劇を招いた人員や資材の不足、専門技術の継承の欠落といった問題を何ひとつ検証しようとしていない」と弾劾した。そして労働組合として、当局に事故の総括と根本的改革を断固として要求すると共に、汚名を着せられ告訴された運転士への支援を全力で闘っていると明らかにした。
客室乗務員労組のリイチンさんも、「台湾政府と警察は調査の詳細を公にせず民衆に真実を知らせない態度をとっています。私たちは組合の力で真実を明らかにしようと打って出ました」と、鉄道産業労組と一緒に真相究明の闘いに立ち上がったことを報告。政府と当局の妨害を打ち破って当時の各部署の労働者や運転士とその家族から話を聞く努力を重ねたこと。その中で匿名で情報を提供してくれる人が現れ、事故列車が最初から故障していた事実をつかんだと報告した。
台湾鉄道産業労組は2016年、それまでの闘わない企業内労組をのりこえる産業・職業別の労働組合として設立された。リイチンさんらの組合も同様に、既存の労組と決別して台湾における新たな自主的な労働運動の先頭に立っている。彼らは今、被害に遭った乗客の家族をも組織して、運転士への責任の押し付けを弾劾し、当局と政府の責任を徹底追及する闘いをやりぬいている。それは全労働者の権利を守り、民衆の命と安全を守る闘いだ。連帯して共に闘おう。