イタリア、公共機関でゼネスト 新連立政権の緊縮政策に反撃

週刊『前進』04頁(3086号03面03)(2019/11/18)


イタリア、公共機関でゼネスト
 新連立政権の緊縮政策に反撃

(写真 「五つ星運動」の市長のもとで悪化する街の状態に抗議し、労働者人民がゼネストとデモに立った【10月25日 ローマ】)

 10月25日、イタリアの首都ローマで四つの独立系労組によって市の公共機関を止めるゼネストが闘われた。鉄道、バス、空港は終日ストップ。学校をはじめ公共機関・施設の休業はミラノほか全国に広がった。11月9日現在も交通機関のストが続いている。

独立系4労組が現場で闘争組織

 「五つ星運動(M5S)」のラッジ市長は、13億ユーロ(約1500億円)の負債を抱える市財政の矛盾を市職員労働者と市民に押し付けてきた。要員削減は福祉政策、清掃業務、交通機関、教育行政に深刻な影響を与えている。ごみが街にあふれ、野生動物が街に出没し、公共設備の故障が放置されるなど、耐え難い状況になっている。ストは市長の辞職、大幅賃上げ、労働者の権利保障を要求して闘われた。このゼネストは、9月に成立した中道右派・M5Sと中道左派・民主党(PD)の連立政権による緊縮政策に対する労働者階級の反撃でもあった。
 ストを主催したのは職場組織総連合(CUB)、職場委員会連合(COBAS)などの独立系4労組だ。これらは既成の体制内3大労組に対抗して生まれ、90年代に始まった「労働市場の柔軟化」の名による解雇規制の緩和や労働者保護法の解体、民営化に反対し、現場から闘いを組織しようとしてきた。中小零細経営の未組織労働者、年金生活者、失業者をも組織化の対象に含み、反戦や人種差別反対の政治的課題にも取り組んでいる。新自由主義のさまざまな矛盾の現れに対し、原則的に階級的立場を主張してストを闘ってきた。
 9月27日には、スウェーデンの高校生グレタ・トゥンベリさんのイニシアチブで始まったグローバルな気候変動をストップさせるための授業ボイコットに労働組合として応えた。地球環境の未来に警鐘を鳴らす「グローバル気候マーチ」には世界で400万人、イタリアだけで100万人の高校生が参加した。
 さらにローマ、ナポリ、ミラノ、トリノなど主要都市で20万人の学生と若者が「システムの変更」を掲げて集会とデモを行った。労組としてこの行動を支持し参加したCOBASは環境破壊、貧困・飢餓、戦争に反対し、平等、非階層、反エリートの立場で「反資本主義」を掲げている。
 11月9日にローマで、前政権でサルビーニ副首相兼内相が制定した難民排斥のための治安法に反対し、トルコ政府のクルド民族弾圧に反対する20万人集会が開かれた。移民・難民問題を契機に欧州全体に強まる排外主義との対決は、国境を越えた労働者階級の団結を再形成する試金石だ。
 独立系労組が職場闘争と同時に多様な社会的課題に取り組む背景には、経済格差、民族差別、権威主義に反対する青年労働者の世界的な反乱の始まりがある。独立系労組はここに深く関わろうとしている。

2020年階級激突は不可避だ

 9月に崩壊した前政権は中道右派のM5Sが中道左派の旧民主党政権を倒し、極右の同盟と組んだイタリア戦後政治史上初の右翼連立政権だった。
 イタリアでは1969年、労働者と学生が保守政党対社共という戦後的政治構造を打ち破ろうとした「熱い秋」の闘いが起こった。これは、その後の反動で挫折し、新自由主義の時代に突入した。伝統的左翼の社会党と共産党は、ソ連スターリン主義の崩壊をきっかけとして解体・消滅し、2007年に中道左派の民主党に合流、新自由主義政策推進の一角を担ってきた。この民主党政権を18年の総選挙で打倒したのが右翼勢力だった。これがイタリア労働者階級人民の新たな怒りを呼び起こした。
 右翼連立政権の一角を占めた同盟は、ムッソリーニを賛美し、排外主義的・反動的政策を推進、単独の極右政権樹立を狙って独走した。これに恐怖した民主党は自分を倒したM5Sとの連立を選んだ。その結果が9月の新連立政権成立だ。
 欧州中央銀行(ECB)が2020年の景気は低迷すると予測するなか、厳しい財政規律を課せられている債務危機国家イタリアの政治危機の一層の激化は不可避である。10月25日のローマでの集会には3大労組傘下の労働者も参加した。既成体制内労組における階級的分岐と新たな戦闘潮流への合流の始まりである。
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