裁判員廃止 11・15都心デモへ 「現代の赤紙」を8割が拒否制度にNO!の声を今こそ 「裁判員制度はいらない!大運動」呼びかけ人 高山俊吉弁護士

週刊『前進』04頁(3082号04面01)(2019/11/04)


裁判員廃止 11・15都心デモへ
 「現代の赤紙」を8割が拒否制度にNO!の声を今こそ
 「裁判員制度はいらない!大運動」呼びかけ人 高山俊吉弁護士


 11月、最高裁は来年の裁判員候補者23万2800人に、「名簿にのせました」という通知を送ろうとしています。裁判員制度は「現代の赤紙(徴兵制)」です。みんなの怒りを結集し、廃止に追い込みましょう。15日、最高裁に制度廃止を迫る抗議の都心デモが行われます(要項別掲)。主催する「裁判員制度はいらない!大運動」呼びかけ人の高山俊吉弁護士にお話を伺いました。(編集局)

開始から10年で制度崩壊の危機に

 裁判員裁判が始まったのは2009年。今年が節目の10年目になります。日本の司法制度を根底から変えるといわれた「司法改革」の2本柱の一つが裁判員制度でした。もう一つは弁護士を激増させ、そのために法科大学院をつくることでした。ところがこの2本柱が10年間でともに崩壊の危機に直面することになったのです。
 裁判員裁判では起訴後に「公判前整理手続き」という公判準備が行われます。公開の原則に反する密室裁判ですが、起訴から判決までの期間が裁判官裁判の時代よりも長くなってしまった。短期間で結論を出して手早く治安を回復するはずだったのに、結果はまるで反対になってしまった。
 また、「裁判員になるのは嫌だ」という人が年々増え、裁判員裁判に参加する人が激減した。最近では裁判所から呼び出されても実際に行く人は5人に1人しかいない。普通なら直ちに廃止とか見直しに向かう失敗国策です。
 そのためでしょう、裁判所の中には「10年」をお祝いする雰囲気などまるでない。大谷直人最高裁長官は「制度はまだ草創期であり通過点だ」と言いました。今の状況だけを見てこの制度はもう駄目だと言わないでくれ、あまり詮索(せんさく)しないで通り過ぎてほしい、と言っている感じです。
 裁判員を経験して心の病になったことに関して国の責任を追及する裁判を起こした人がいます。地裁も高裁も最高裁も、「やりたくないなら、やらない道もあった」と言い、「訴えは認められない」という判決を出した。裁判所が「心の病は自分の責任」という姿勢でいることが知られれば、一般の国民はもう裁判所に出て行かないですよ。
 「正当な理由のない不出頭は10万円以下の過料」という処罰規定があるのに、これだけの人たちが出頭を拒否している。私は、市民の中に反乱が起きていると思っています。香港では覆面禁止法に反発する学生や市民がマスクをしてデモをやっていますが、それと同じように、裁判員制度という誤った国策にみんなが抵抗して立ち上がっている。それこそ裁判員制度10年に対する国民の審判です。

国民を権力の立場に立たせる狙い

 5月に開催された最高裁、法務省、日弁連などの共催のシンポジウムで、パネリストを務めたある裁判員経験者が、「私は被告の側には絶対に座りたくないと感じた。裁かれる立場になってはいけない」と語りました。
 ここには真実を明らかにする探求の姿勢も、犯罪の原因究明や社会矛盾の解明に向けた姿勢もありません。あるのは「お上の意識」に染め上げられた権力の思想です。ここに裁判員制度を導入した政府の狙いがあります。国家の立場に立ち、悪いことをした者は厳しく処罰する、国民はそういう考え方を裁判所で学んで帰ってもらいたいというのです。
 もともと最高裁は、一般市民は確かな事実認定の能力をもっていないと考えていました。制度の導入前にはそのことを明言さえしていました。ところがその考えを大転換して導入することにした。裁判員制度の狙いは真実の究明への市民参加ではなく、別のところにあるのです。
 「裁判員制度はいらない!大運動」は制度実施の2年前に始まり、今日まで妥協なく反対と廃止の主張を貫いてきました。裁判員制度の本質は「国民の司法参加」ではなくて「権力司法への国民動員」なのだ、裁判所が国民の首にひもを付けて裁判所に引っ張っていく仕組みなのだと訴えてきました。そうした努力が、市民の中にくすぶる疑問や不信や嫌悪が大きな流れに発展することに寄与したのです。
 でも国は裁判員制度をやめない。それはこの制度が市民一人ひとりに対する「権力的公民教育」の機会だからです。太平洋戦争で言えば「国民精神総動員」策です。今まさに展開しようとしている危険な国策=戦争政策に対する多くの国民の反発を抑えるためには、国民自身を権力の立場に立たせることが決定的な対策になる。裁判員制度はそのための格好の政策です。さきほどのシンポジウムでの裁判員体験者の言葉をもう一度かみしめてほしいと思います。

共感持ち合える都心デモをやろう

 11・15都心デモは、天皇即位の関連儀式が続くただ中で行われます。顧みれば、裁判員裁判が実施された09年12月の天皇誕生日に平成天皇は、「裁判員裁判がどのように定着していくのか見守りたい」と言ったことを思い起こします。裁判員制度の旗振りそのものでした。不評の司法政策に天皇を政治利用する現場を私たちは目の当たりにしたのでした。
 戦争の危機が迫っています。政府は「調査・研究」名目で自衛隊を中東海域に派遣すると言いますが、安倍政権にしてみれば、理屈など何でもよいから、中東におけるエネルギー戦争に一枚かまなければならない。戦争に向けて、もう大きな一歩を踏み出しているのです。
 改憲も裁判員制度も戦争のためです。「国の秩序を守ることは大事」というのは、戦争に国民を動員することにつながり、「いつか来た道」の再来を意味します。
 『前進』読者の皆さんには、「みんな体を動かそう」と訴えたいと思います。「放っておいてもつぶれるのでは」と思っている人がいるとすれば申し上げたい。放っておいてここまで来たのではない。裁判員制度に反対する運動があったからこそ、こういうことになっている。少なくとも運動の力が大きく寄与している。一人ひとりの国民を戦争の担い手にし、権力の盾にする制度に対し、今こそはっきりと「ノー!」の声を上げましょう。
 11・15の都心デモは、日弁連、東京地・高裁、首相官邸、最高裁を巡る昼デモです。働く人たちが食事や休憩で沿道に出てきます。そうした人のほとんどは裁判員制度に納得していない。歩道を歩く人たちと共感を持ち合えるデモになります。皆さん、一緒にデモに打って出ましょう。
     ◆
11・15最高裁デモ
11月15日(金)正午
 東京・日比谷公園霞門出発
 (デモコース/霞門〜東京地・高裁〜経産省・文科省〜首相官邸下〜最高裁)
 呼びかけ/裁判員制度はいらない!大運動

このエントリーをはてなブックマークに追加