腐敗極める関電資本 原発の工事代金を還流させ、事故後も巨額の金品を懐に
週刊『前進』02頁(3079号02面03)(2019/10/24)
腐敗極める関電資本
原発の工事代金を還流させ、事故後も巨額の金品を懐に
関西電力の役員が高浜原発が立地する福井県高浜町の元助役から金品を受け取っていた問題は、底なしの腐敗の様相を帯びてきている。東電の3・11福島原発事故以降も、原発再稼働で利益をむさぼっていたのだ。絶対に許せない。
原発の工事代金を還流させ
関電が10月2日に公表した報告書では、2011〜18年だけで八木誠会長、岩根茂樹社長、豊松秀己原子力事業本部長など20人が合計3億1845万円相当もの金品を受け取っていた。しかも、これらは当事者の「記憶」に基づくものでしかなく、実際はさらに膨大な汚れた金品を手にしていたことは間違いない。この金が原発に絡むものであることは明らかだ。関電が所有する高浜原発は4基ある。1号機、2号機はそれぞれ1974年11月、75年11月に営業運転を開始し、さらに80年8月、3、4号機の設置許可が下りた。この誘致に重要な役割を担ったのが、77年に町の助役に就任した森山栄治(故人)だった。その後、87年に助役を退任した森山は関電の子会社の顧問となって30年以上務め、また高浜町の建設会社「吉田開発」の顧問にも就任した。
原発工事で関電から吉田開発への発注額は2013年度から18年度までの6年で約64億7千万円の巨額にのぼる。ほぼ同時期の、14年9月〜17年2月に吉田開発が受注した原子力事業本部の発注工事計113件(元請け会社を通じた発注を含む)のうち、7割以上の83件で関電が森山に工事情報を提供していた。
さらに工事受注にからむ手数料として吉田開発から森山に約3億円が流れたことが判明している。これらの事実から、関電が吉田開発に発注を集中し、森山を仲立ちにして、支払った金から莫大な金額を還流させていた構図が見えてくる。
福島第一原発の事故以降に集中
森山から関電への金品の流れは2011年以前からだが、とくに3・11福島原発事故以降に集中していることは極めて重大だ。福島原発事故は膨大な量の放射性物質を流出させ、多くの福島県民が避難を余儀なくされた。3月中旬の福島はまだ寒さが厳しい。多くの人がその中をほとんど身ひとつで、必死の思いで古里をあとにせざるをえなかった。原発の立地する大熊町にある双葉病院の患者と、病院の系列の老人介護施設の高齢者たちなどは車両での長距離の移動で車内や避難所で、44人が次々と亡くなっていった。
相馬市で酪農を営んでいた男性は原発事故で原乳が出荷停止となり、収入の道を失い、壁に「原発さえなければ」の言葉を書き残して自ら命を絶った。この人たちも含め、行政が認定しただけでも2272人の県民が原発事故が原因で、心身の体調を崩すなどし命を失った(9月6日現在)。
また、避難者数は最大時で約16万4千人、現在も復興庁が発表しているだけで4万2199人(9月6日現在)が避難を続けている。「自主避難者」はこの中に含まれてさえおらず、実数はさらに増える。避難している人たちも家族がバラバラの生活を余儀なくされたり、夫婦関係が破綻した家族もある。また、ほとんどの避難者家族が当初から経済的に苦しい生活を強いられているのが現実だ。
福島県民の犠牲の陰で暴利貪る
大切な家族を奪い、多くの人の人生を破壊したのは誰だ。こんな残酷な事態を、いったい誰が引き起こしたのだ。歴代自民党政府や東京電力・関西電力をはじめとする電力会社が造った原発が54基(3・11当時)もあり、その結果、3・11福島原発大事故を引き起こしたのだ。政府と東電(電力会社)は、この人たちの住居・仕事・生活をすべて補償する責任があるのだ。しかし安倍政権は福島県の行政を使って、逆に「自主避難者」への住宅補助を取りやめ、他に住居がなく住み続けざるをえない人たちを裁判にまで訴えて追い出そうとしている。福島の人たちにこれほどの犠牲を強制しながら、政府と関電などは再稼働を強行した。しかも、それによって関電の多数の役員が、そ知らぬ顔をして莫大な金品を懐に入れていたのだ。実に腐れきった金品の山だ。腐敗の極みだ。関電は手にした金品の内容と総額をすべて明らかにしろ。高浜原発3、4号機、大飯原発3、4号機を直ちに止めろ。原発でもうけた金をすべて、避難者や甲状腺がん患者をはじめとした福島の人たちのために差し出せ。
人の命や生活より一部の資本家の利益が大事というのが資本主義社会と政府の真の姿だ。全原発を廃炉にし、こんな社会の仕組みも根本から変えよう。