トルコ軍がシリアへ侵攻 クルド人抹殺戦争を許すな

週刊『前進』04頁(3078号03面03)(2019/10/21)


トルコ軍がシリアへ侵攻
 クルド人抹殺戦争を許すな

クルド独立運動の最終的な解体狙う

 10月9日、トルコ軍とシリア国民軍などの反シリア政府派民兵部隊が、シリア北部のクルド人勢力が支配する地域に対して「平和の泉」と名づけられた軍事侵攻作戦を開始した。トルコ軍はこの侵攻作戦で、クルド人の武装組織・人民防衛隊(YPG)の拠点である村や町を空爆・砲撃した上で地上軍によって占領した。10月15日段階で死者はすでに数百人に上り、数万人のクルド人住民が難民化した。難民は、さらに増加する見込みだ。
 この作戦の目的は、シリア北部のトルコとの国境地帯でイスラム国(IS)と戦いながら自治区域を拡大してきたシリアのクルド人勢力を一掃し、クルド人の独立運動を最後的に解体することだ。またトルコ大統領のエルドアンは、そうすることでシリアのクルド人勢力と連携するトルコ国内のPKK(クルディスタン労働者党)による独立運動の活性化を阻止しようとしているのだ。
 トルコ軍は2016年と18年にもシリアのクルド人勢力を攻撃した。だが、当時は米軍がクルド人勢力と一緒に行動していたため、クルド人勢力の本拠地にまで侵攻できず、トルコ軍の軍事侵攻はユーフラテス川西岸に限定されていた。これに対し、今回はクルド人の本拠地であるユーフラテス川東岸の広大な地域が対象であるため、クルド人勢力の抵抗も激しい。

エルドアンの策謀支持するトランプ

 トルコ軍が突然シリア北部のクルド人地域に侵攻したのは、この侵攻作戦に先立つ10月6日にエルドアンと米大統領トランプが電話会談を行い、この侵攻作戦実施に対するトランプの承認を得たからだ。
 エルドアンはトランプに対し、ISの最後的掃討と捕虜の管理をトルコが引き受けると約束した。また、トルコに居住するシリア難民360万人の管理を引き受けることを条件としてシリアに駐留する米軍の撤退を要求した。
 エルドアンは、この提案を実現するためには、現在シリアのクルド人が支配するユーフラテス川東岸地域からクルド人を追い出し、この地域に幅30㌔メートル、長さ400㌔メートルの安全地帯を設け、シリア難民200万人程度を収容し、トルコが管理することが必要であるとした。トランプは電話会談でこの提案を受け入れ、翌7日にはシリアに派遣されている千人ほどの米軍の撤退を発表した。実際に撤退が開始された。
 トランプはこの措置によってこれまでシリアで対IS軍事作戦を行うために地上兵力として利用してきたクルド人勢力を見捨て、エルドアンによるクルド人殲滅(せんめつ)一掃作戦に承認を与えたのだ。トランプは独立を求めるクルド人を利用するだけ利用して、用が済めば切り捨てるような態度をとって平然としているのだ。実際トランプは安全地帯構想に関するトルコとの具体的協議をこの11月に行う予定である。

新たな侵略戦争を絶対に阻止しよう

 エルドアンとトランプの策動に対しては、クルド人勢力だけでなくシリア政府も激しく反応し、シリア軍をこの地域に派遣することを決定した。クルド人勢力への支援も開始した。
 ロシアもシリア政府の決定を支持し、シリア政府とクルド人勢力に対する新たな支援策を検討している。
 こうして、新たな戦乱拡大の危機が切迫している。米帝とエルドアンの新たな侵略戦争策動を絶対に許してはならない。

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