リニア実験線で車両火災 労働者が重傷負う大事故に
週刊『前進』04頁(3078号03面02)(2019/10/21)
リニア実験線で車両火災
労働者が重傷負う大事故に
JR東海の山梨リニア実験線で10月7日、車両が燃え、労働者3人が負傷する事故が起きた。JR東海の2人の青年労働者が重傷を負い、機器メーカーの労働者も軽傷を負った。
3人は「作業用断路器」と呼ばれる電源スイッチを切って走行データを取り出す作業をしていたが、再びスイッチを入れた途端に機器は火を噴き、それが衣服に燃え移った。車両は1時間20分以上も燃え続けた。
起きた事態は重大だ。仮に、実験車両ではなく営業運転されている車両で火災が起きたらどうなっていたか。リニアには運転士がいない。遠隔操作で動くリニアは、緊急事態が発生しても車内でブレーキをかけることもできないのだ。
リニア新幹線は、大部分が地下深いトンネルを通る。列車が停止したとしても、乗客・乗員がトンネルから抜け出すことは困難だ。南アルプストンネルの場合、緊急避難用の非常口の出口は、トンネルより300㍍以上も標高が高い。乗客・乗員が命からがら地表に到達できたとしても、そこは険しい山岳地帯だ。
リニア建設の破綻におびえ報道管制
JR東海は当初、今回の火災事故について国土交通省への報告もしようとしなかった。別の車両を使った走行実験や、リニアの体験乗車イベントも継続する方針だ。マスコミもまた、この重大事故をほとんど報道していない。まさに報道管制が敷かれている。それは、リニア建設が破綻しつつあるからだ。リニア建設工事による大井川の水量減少を懸念する静岡県とJR東海とが対立し、静岡県内での工事はストップしたままだ。保守派の川勝平太静岡県知事さえ、毎年深刻な水不足に見舞われる大井川の水量が、リニア工事でさらに減ることは容認できないのだ。
JR東海は静岡県との協議で、「工事期間中は、工事による湧水をすべて大井川に戻すことは不可能」「トンネルを掘ってみなければ、水がどう動くかは分からない」と言っている。国土交通省が静岡県とJR東海との調停に乗り出したが、県側はJR東海の無責任で横柄な言い分に態度を硬化させる一方だ。
人間の命にかかわる河川や水を、資本主義がまともに扱っていないことは、台風19号の被害でも示された。渇水と洪水という現れ方の違いはあっても、リニア建設は人間と水との関係をとことんゆがめている。
これに加えて今回の事故が明らかになれば、リニア建設自体が吹き飛びかねない。危機にあるのは、国策としてリニア建設を進める安倍政権とJR東海だ。
JR東海の葛西は国鉄解雇の張本人
リニア建設は、安倍の盟友であり改憲論者のJR東海名誉会長・葛西敬之の号令下で進められている。その葛西は、国鉄分割・民営化当時、国鉄職員局次長として国鉄労働者1047名の解雇を強行した張本人だ。葛西は、動労千葉組合員らをJRから排除するための「不採用基準」の策定を、JR設立委員長だった斎藤英四郎(当時、経団連会長)に進言した。斎藤もそれに応じ、葛西が主導してJR採用候補者名簿から動労千葉組合員らの名前が削られたのだ。
その実務を葛西の部下として担ったのは、JR東日本の現社長・深沢祐二だ。
この不採用基準策定が不当労働行為であったことは、2015年6月の最高裁決定で確定した。これを武器に解雇撤回をJRに迫る動労総連合の闘いは今、新たな決戦を迎えている。
安全と環境を徹底破壊する無謀なリニア建設は、「労組なき社会」を狙うJRの攻撃と一体だ。
国鉄1047名解雇撤回闘争を軸に闘う労働運動の再生を目指す11・3労働者集会に集まろう。これを基点に労働者人民が生きていける社会を取り戻そう。