日米貿易協定最終合意は日本農業破壊へ進む道だ 全国農民会議が抗議声明

発行日:

週刊『前進』04頁(3076号03面03)(2019/10/14)


日米貿易協定最終合意は日本農業破壊へ進む道だ
 全国農民会議が抗議声明


 全国農民会議から、先の日米貿易協定最終合意に対する怒りの抗議声明が発せられた。農民・労働者に生きられない現実を強いる安倍政権を、今こそ労農連帯・国際連帯の力で打倒しなければならない。(編集局。別表も)

◎日本農業を破壊する日米貿易協定の最終合意に抗議する
 9月29日 全国農民会議

 (1)9月25日、トランプ大統領と安倍首相は日米貿易協定の最終合意を盛り込んだ共同声明に署名した。今回の合意で農業破壊・農民壊滅がさらに進められる。私たちは断じて認めることはできない。
 農産物への「TPP(環太平洋経済連携協定)水準」の関税が成果とされているが、「TPP水準」によって農産物輸入が加速され、日本農業に壊滅的な打撃を与える。とりわけ、牛肉・豚肉、果樹農家への打撃は計り知れない。(TPP水準とは、牛肉は38・5%の関税を9%に引き下げ、豚肉は4・3%がゼロに、オレンジは16%〜32%がゼロである。)
 (2)農産物と引き換えに、日本政府が目指した自動車と同部品の関税引き下げは今回見送られた。今後、関税撤廃が認められることはなく、日本が全面的に譲歩した内容である。署名直後に安倍首相が語った「ウィンウィンの合意」は、全くのペテンである。
 (3)日米貿易協定は異例のスピードで妥結した。理由は、米トランプ政権の危機感である。米中貿易戦争の激化で、米国の穀物(小麦、大豆、トウモロコシ)の輸出先がなくなっている。輸出農家の圧力が来年大統領選挙での再選を危機に追い込んでいるから、トランプ政権は日米貿易協議を急いだのだ。
 これに助け舟を出したのが安倍政権である。急きょ合意した、トウモロコシ275万㌧の緊急輸入もその表れである。
 (4)今後、懸念されるのは「非関税障壁」と「為替条項」である。
 「非関税障壁」は、TPP11〔米国離脱〕や日欧EPA(経済連携協定)にも盛り込まれているが、輸入の際の検査や安全基準を米国水準に悪化させる。ポストハーベスト農薬や日本で使用できない食品添加物の使用を野放図にしていくものである。
 「為替条項」は意図的な通貨安を禁止するものだが、日本政府が大々的に行なっている円安の市場介入が問題とされる。すでに米中貿易戦争で今年8月、米政府は中国を「為替操作国」と指定し、対立激化に踏み込んだ。
 日本政府は、「非関税障壁」「為替条項」を含めた日米貿易協定の合意内容の全体像をただちに明らかにすべきである。
 (5)「安全性の問題があるが、安い輸入農産物が入ってくるのに賛成」という意見をよく耳にするが、そう考える人々にあらためて訴えたい。
 第一に、食品添加物、農薬、遺伝子組み換え、ゲノム編集など新たな技術が、食の安全性を急速に脅かしている。科学的に安全性が検証されていないにもかかわらず、実用化されることに私たちは危機感を覚える。
 第二に、生活費の主要な構成部分である食料が安くなることは、労働者の賃下げ圧力になるのであり、労働者に低賃金を強制する要因となる。農産物輸入自由化で農家をつぶすだけでなく、労働者を貧困に突き落とすものだ。
 いまこそ、労働者と農民が団結して、農民と労働者を苦しめる安倍政権を打倒しよう。安倍政権の憲法改悪を絶対に止めよう。

このエントリーをはてなブックマークに追加