「駅員希望なら子会社に行け」 全駅の丸ごと外注化狙うJR
週刊『前進』04頁(3076号02面02)(2019/10/14)
「駅員希望なら子会社に行け」
全駅の丸ごと外注化狙うJR
非正規職化の攻撃
JR東日本が狙う鉄道業務の全面外注化は、駅でも激しく進んでいる。これは「労働組合のない社会」をつくる攻撃と一体であり、全労働者を非正規職に突き落とそうとするものだ。JR東日本は、駅業務を子会社のJESS(JR東日本ステーションサービス)に次々と外注化している。左の図は、山手線とその周辺での、外注化の進行状況を示している。
外注化は出改札窓口などの一部業務から始まったが、今は丸ごと委託された駅が増えている。図にはないが、高崎線、宇都宮線、常磐線、内房線、外房線、総武本線でも、快速停車駅や無人駅、信号扱いのある駅を除き、ほとんどの駅が丸ごと外注化されている。
JRは、すべての駅を外注化する方針だ。JR東日本の新規採用者募集情報には、次のように書かれている。「Q.駅でずっと働きたいのですが。A.駅での勤務を希望される方は……JR東日本ステーションサービスにご応募ください」
JESSの賃金は正社員でもJRよりずっと低い。駅の外注化は、全労働者を非正規職にする攻撃だ。
表は、JRが首都圏で今後進めようとしている駅の外注化計画だ。地方ではこの1年、郡山駅、仙台駅、北上駅、秋田駅で新幹線出改札窓口などの外注化が急速に進んだ。
安全は破壊される
18年12月の吉祥寺駅と19年3月の秋葉原駅の外注化は、大きな転機だった。1日の乗客が25万人を超える秋葉原駅さえ、丸ごと外注化されたのだ。また、これにより、それまでは出改札など営業関係に限られていた外注化の対象が、列車の安全運行にかかわる業務にまで及ぶことになった。秋葉原駅の外注化に先立ち、JRは規程を改悪し、厳格な資格を必要とする「運転取り扱い業務」の一部を、資格がなくてもできる「運行関係業務」に分類し直した。これにより、線路内の落し物をマジックハンドで拾う仕事が、JESS社員でもできるようにされた。事故などの異常時に、JRの指令に対し列車の抑止を手配することや、列車非常停止警報装置が扱われた場合、それに対処し、安全の確認後、警報装置を元に戻すこともJESS社員の業務になった。
十分な教育もなしにJESS社員が事故対応に当たらされたら、場合によっては命を失いかねない。そうでなくても、ミスをすれば全責任をとらされる。
JESSに就職しても、あまりの低賃金に辞めていく青年労働者は多い。あるJESS社員は、「私は駅の窓口で新幹線の切符を売っているが、自分自身は新幹線に乗ったことがない」と悲痛な声を上げている。
現在はJRからの出向者やJRのエルダー(定年後の再就職)社員がJESSに配属されているので、かろうじて業務が回っているが、それでも要員不足で労働は過重だ。外注化が大破綻することは明らかだ。
びゅうプラザ全廃
駅の外注化とともに、JRは「びゅうプラザ」(旅行センター)の廃止や「みどりの窓口」をはじめとした出改札窓口の廃止・営業時間の縮小を進めている。JR直営の「びゅうプラザ」は来年4月に全廃され、子会社のVTS(びゅうトラベルサービス)が運営する「びゅうプラザ」も2022年4月にはすべてなくなる。JRは、この過程で労働者を別会社に転籍させ、転籍が当たり前になる状態をつくりたいのだ。JRは、この施策を進める理由として、インターネットによる切符販売の増加を挙げる。スイカとネット販売で、駅の出改札業務もやがてはなくなるというのが、JRの構想だ。だが、安全運行の要に位置する駅の業務は、AIで置き換えられるものではない。
運転士・車掌の職名をなくす「新たなジョブローテーション」の攻撃も本格化しつつある。動労千葉・動労総連合とともに反対の声を上げよう。11・3労働者集会に結集し、闘う労働運動を取り戻そう。