福島原発裁判 「無罪」を弾劾する 政府・東電の安全放棄を免罪

週刊『前進』04頁(3072号03面03)(2019/09/30)


福島原発裁判 「無罪」を弾劾する
 政府・東電の安全放棄を免罪


 東京地裁は19日、福島第一原発事故をめぐり業務上過失致死傷罪で強制起訴された東京電力の勝俣恒久・元会長ら3人に対し、無罪の判決を言い渡した。到底許すことはできない。
 2011年3・11福島原発事故は、1986年のチェルノブイリ原発事故と並ぶ大核惨事だ。復興庁の発表だけでも3月末時点で2272人もの県民が関連死という形で虐殺された。さらに、福島県の発表だけでも5月末時点で4万3千人以上が避難生活を続けている。小児甲状腺がんや健康問題も深刻さを増している。被害は事故から8年半を経た今も継続している。
 核と原発は人類と絶対に相いれない。核分裂によって発生する放射線は細胞を破壊して人体に損傷を与え、命まで奪う。核は制御不可能であり、事故は避けられない。その被害は甚大であり、影響は少なくとも数百年続く。加えて、原発は燃料であるウランの採掘から、稼働、廃炉にいたるまで被曝労働なしにありえない。原発は廃炉にする以外にないのだ。

津波予測無視し、3・11の大事故に

 裁判では、勝俣ら東電の旧経営陣には、ギリギリの段階で事故を回避する責任があったにもかかわらず、それを放棄した事実が明らかになった。
 勝俣たち被告は、政府の地震調査研究推進本部が02年に公表した「長期評価」に基づく「最大15・7㍍の津波」の試算を受けとり、東電の津波対策担当者たちからは「新たな津波対策が必要」との資料が提出された。にもかかわらず、停止などの対策をとらず大事故を引き起こしたのだ。
 判決文にも許しがたい事実が書かれている。判決文は「法令上の規制やそれを受けた国の指針、審査基準等の在り方は......絶対的安全性の確保までを前提としてはいなかった」と述べ、また「長期評価」を受けても「東京電力社内、他の原子力事業者、専門家、行政機関のどこからも、対策工事が完了するまでは本件発電所の運転を停止すべきである旨の指摘もなかった」と書いている。
 そこから「無罪」との結論を引き出しているのだが、ここで書かれている内容は断じて見過ごすことができない。政府も電力会社も「絶対的安全を確保する」責任感さえ有していなかったのだ。原発政策を推進してきた歴代自民党政府と電力会社は「原発は安全」と宣伝しておきながら、最低限の対策さえ放棄していた。しかも3・11以後も、政府の組織である原子力規制委員会は「新規制基準に適合しても、絶対的な安全性が確保できるわけではありません」と無責任を決め込んでいる。
 もはや政府も「専門家」も口先でさえ「安全」と語れないほど原発の破綻は明白であり、このままでは再び事故が起こる。にもかかわらず原発推進に突き進むのは、原爆の製造・核武装のためだ。そのためなら労働者民衆の命もないがしろにするのだ。
 福島の避難者の「帰還拒否」の闘いは、この政府・国家との真っ向からの闘いだ。避難者を始めとする福島の労働者民衆と共に、こんな政府・国家は打ち倒そう。労働者民衆が主人公の社会をつくることこそ、原発も核兵器もなくす道だ。

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