JRが検修全面外注化構想 狙いは全労働者の非正規職化

週刊『前進』04頁(3072号02面02)(2019/09/30)


JRが検修全面外注化構想
 狙いは全労働者の非正規職化


 JR東日本が昨年7月に打ち出した「グループ経営ビジョン『変革2027』」は、鉄道事業を全面的に外注化し、JR本体は鉄道会社であることから脱却しようとする計画だ。
 それは、JRをモデルに「労組のない社会」をつくる攻撃とも一体だ。
 来年3月、JR東日本は運転士や車掌という職名も廃止し、運転士や車掌を10年ごとに別の業務に就かせる「新たなジョブローテーション」を強行しようとしている。これと並んで、車両の検査・修繕部門でも全面的な外注化計画が打ち出された。
 今年7月、JR東日本は「ミライの車両サービス&エンジニアリング構創」なる文書をJR社員の業務用タブレット端末に配信した。JR東日本は、労働組合への提案もせずに、大合理化計画を次々とタブレット端末に送りつけている。労働組合の頭越しに個々の労働者に会社の施策を突きつけ、「逆らえないもの」としてそれを受け入れさせて、あきらめを強いようとしているのだ。

人手をかけないメンテナンス!?

 「ミライの車両サービス&エンジニアリング構創」の対象は、総合車両センターと車両センターをともに含み、JR東日本の全地域に及ぶ。車両の検修業務のあり方を抜本的に変える、大掛かりな計画だ。
 この構想でJRは、AI化やロボットの導入で、検修業務も機械化・自動化できるという。電車の無人運転と同様の発想だ。
 例えば、車両の機器の状態を監視する装置を組み込んだ新型車両を普及させれば、修繕すべき箇所は自動的に診断され、CBM(状態基準検査)が実現されるとJRは言う。CBMとは、定期的な検査を実施することで故障や事故を未然に防いできたこれまでのやり方を変え、壊れた機器、壊れそうな機器だけを取り替えればいいというものだ。JRはそれを、「データに基づく適切かつ最小限のメンテナンス」と言う。
 さらに、「自動計測装置の導入」「マルチ検修ラインによる入換ゼロ・編成一括での車体検査」「AIを活用したデータ分析、寿命予測」「モニタリング、センシング技術を活用したメンテナンス」「計画業務のシステム化」「ロボット等による消耗品取替え」「清掃作業の機械化・自動化」などの言葉が並んでいる。
 そこでのキーワードは、「人手をかけないメンテナンス」だ。これは恐るべき発想だ。鉄道会社であるはずのJRが、メンテナンスは手抜きでいいと公言し始めたのだ。
 だが、AI依存のこの構想は、検修職場の管理者さえ「社員に説明できない」と言わざるを得ないほど、その中身は現実性がないものだ。

JRに残るのは管理業務だけに

 JRの狙いは、現実性がないAI化・自動化をあえて掲げることで、検修業務の全面外注化を強行することにある。この構想は、JR本体が担うのは「鉄道事業者としての業務」で、「現場に直結した業務」はグループ会社に「水平分業」すると言う。その「鉄道事業者としての業務」も「再定義」して縮小する。
 構想では、具体的にJRに残る業務は「保全体系」「検査業務(出場検査)」だけであり、「車体・部品修繕」「誘導・入換」「車両清掃」「改造工事」「各業務の施工計画」はグループ会社の業務とされている。JRには管理業務しか残らない。そして、徹底した外注化を進めるモデル職場として、長野総合車両センターを挙げている。
 これを前提に、JR社員が担う仕事は「作業から判断へ」変わると構想は言う。だが、適切に判断する力は、現場での豊富な作業体験によって培われる。それをJRは平然と切り捨てようとしているのだ。

全労働者に転籍を強要する攻撃

 この構想の目的は、ごく一部の管理職だけをJRに残し、現場の業務を担っている大半のJR社員にグループ会社への出向・転籍を強いて、非正規職にすることにある。実際、構想には「技術習得のための出向」や「グループ内での相互交流」が明記されている。
 運転士や車掌の職名をなくす「新たなジョブローテーション」も、管理職や幹部候補生だけをJR社員として扱うという発想のもとに策定された。JRは、検修部門でもこれと同様の攻撃に手を着けてきたのだ。
 JRにはすでに、検修業務を受託する中枢の子会社としてJRTM(JR東日本テクノロジー)が設立され、主要な業務もどんどん外注化されている。だが、12年10月に強行された検修業務の外注化後、職場の実態はどうなったのか。外注先での人材育成は進まず、事故は多発し、外注先に就職した青年労働者はあまりの低賃金に次々と辞めている。管理職は業務が回らなくなってもまったく責任を取らない。
 今現に起きているこうした職場の現実を徹底的に暴き、その矛盾を突いて闘えば、JRのたくらむ検修業務の全面外注化を打ち砕くことができる。
 検修業務の丸投げ外注化を阻止しよう。動労千葉・動労総連合とともに職場から声を上げて闘おう。

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