9・22水戸 乗務員も乗客も被曝させるな 常磐線全線開通阻止へ620人

週刊『前進』04頁(3072号01面01)(2019/09/30)


9・22水戸
 乗務員も乗客も被曝させるな
 常磐線全線開通阻止へ620人

(写真 JR水戸支社と東京電力茨城総支社前を通り水戸市内をデモ。東電前では幹部3人への無罪判決を弾劾【9月22日】)

(写真 集会第1部のパネルディスカッションで、高線量地帯に列車を走らせることの危険性が説得力を持って明らかにされた)

(写真 福島県浪江町の希望の牧場の吉沢正巳さんが、「原発の時代を終わりにしよう、原発汚染水を海に流すな」と訴えながら、牛の模型を宣伝カーで引っ張って水戸市内を回った)


 9月22日に水戸市で「高線量地帯に向かって列車を走らせるな!―常磐線の全線開通は安全か?―9・22水戸集会」が開催され620人が集まり、集会後は水戸市内をデモ行進した。
 2011年3・11大震災と福島第一原発事故で、津波に流され放射能に汚染されて、今も高線量で人の住めない地域で、JR東日本は来年3月末までに常磐線を開通させ、列車を走らせると宣言している。これに対して、労働者と乗客を被曝させるなと、全線開通に反対する闘いが続けられてきた。9月22日の集会は全線開通阻止のための重要な闘いとしてかちとられた。
 集会の冒頭に、今年の7月と9月に福島の帰還困難区域に入り、現地の線量を測った動画が上映された。JR東日本が不通区間の線路をまるごと入れ替えたところでは、線量計に毎時0・15㍃シーベルトと表示されるが、線路の脇では0・74㍃シーベルト。危険を知らせる「ピーピーピー」という警告音が鳴り続け、線量計が表示できる数値の上限(9・99)を超えたシーンもあった。あまりの高線量に「測っている側の感覚もマヒしてくる」「別の世界に入ったよう」と動画の中で語られた。

討論通し被曝の危険が明らかに

 主催者あいさつを水戸の教会牧師の菊池牧夫さんが行った。
 集会の第1部はパネルディスカッション。パネリストとして動労水戸の石井真一委員長、ふくしま共同診療所院長の布施幸彦医師、「ふくしまの子供達とつながる茨城保養の会」の医師、福島県いわき市の畜産農家の斎藤栄一さんが壇上に並んだ。コーディネーターを茨城県地域連帯労組委員長の辻川あつ子さんが務めた。テーマは「原発事故から8年の現状にどういう思いでいるか」「常磐線の開通の現状と内部被曝について」の2点。
 斎藤さんが「福島では今でもNHKのニュースは5本のうち3本が原発関連」「牛の餌は放射能に汚染されていない輸入した牧草を食べさせ、代金を損害賠償で東電に請求している」と語り、布施医師が「甲状腺がんは県の発表だけでも218人。県民健康調査検討委員会は『現状では放射能の影響は認められない』と言うが、ほかの病気も出ている。県民はみんな放射能の影響だと思っている」と福島の現状を述べた。
 石井さんが、「常磐線の全線開通について、これまでは町の帰町宣言が先だったが、今回は逆。JRは社員を被曝から守ろうとしていない」と語り、「『線量を管理すれば健康は守れる』と言われるんですが、そうなんでしょうか?」と質問を投げかけた。
 茨城保養の会の医師がそれに答えて、「体内に放射性物質がある限り内部被曝し続ける」と語り、布施医師も「少ない線量でも障害は確率論的に増えていく。それも数年単位ではなく、もっと長い期間にわたって続く」と答えた。
 石井さんが「JRは『車両に放射性物質はつかない』と言っていたが、団交で追及したら、『つく可能性はある』に変わった。しかし、『測定はしない』と言い続けている」と、JRの対応を批判した。茨城保養の会の医師が「列車は粉塵で車体が真っ黒になるんだから、高線量のところで付着した粉塵で内部被曝をしないわけがない。列車を測定して放射性物質がつかないことが明らかにならない限り開通させてはいけない」と答えた。
 斎藤さんが「農家は体中ほこりだらけになって作業している。日常的に吸い込んでいる。動労水戸が声を上げているが、農家も声を上げないといけないと思う」と語った。
 コーディネーターの辻川さんが「常磐線の全線開通は絶対に許してはいけないとわかりました」と討論をまとめ、会場全体がその思いを共有した。

東海第二原発の再稼働とめよう

 続いて、第2部の各界からのアピールが行われた。
 茨城で原発反対の金曜行動に取り組む男性が東海第二原発の再稼働反対を訴え、続いて東海第二原発再稼働についての県民投票に向けた呼びかけが行われた。地元の議員からのメッセージが代読された。
 福島県浪江町の希望の牧場の吉沢正巳さんが登壇し、「生きてる限り、残りの人生、闘い続けることを決意しよう! 3・11は終わっていない」と語気を強め、千葉の台風による停電被害について、「金もうけを優先して東京以外を切り捨ててきた結果だ」と東京電力を弾劾した。
 常磐線の運転士である動労水戸の高野安雄副委員長が「全線開通に向けて、若い人に異動の強制発令が出された。若い人にそんな危険な場所を走らせるのは許さない」と訴えた。勝田車両センターの検修の現場から、動労水戸の照沼靖功執行委員が「職場で若い人と話をして、動労水戸が怒りを一つにまとめる力になりたい」と決意を語った。
 集会のまとめを動労水戸の木村郁夫書記長が行った。「常磐線の全線開通に対して、12月の試運転、来年3月のダイ改をめぐって職場の大闘争をつくっていきたい。東海第二原発の再稼働を止める闘いも、全国の力を結集して前進させよう」と訴えた。
 集会後は水戸市内のデモに出発。JR水戸支社と東京電力茨城総支社の前を通るデモコース。動労水戸の組合員と家族が先頭に立って、「常磐線の開通反対」「乗務員も乗客も被曝させるな」とコールを響かせた。東電茨城総支社前では「東電3幹部無罪判決弾劾」の声を張り上げた。

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集会での発言(要旨)

青年への異動の強制を許さない
 動労水戸副委員長 高野安雄さん

 常磐線全線開通で一番危険なところの運転を担当するのが原ノ町運輸区ひとつに限定されました。そうすると要員が足りませんので、今月の25日付けで第1陣の強制発令が出されました。なぜ、強制か。誰もそんなとこに行きたくないからですね。これは第2陣、第3陣まであると言われていて、約30人くらいの異動が発生する。しかも、行かされるのはほとんどが若い人なんです。若い人たちに危険なところを乗務させようとしている。とても許せないです。
 私はお客さんに、「そんな所に列車を走らせて、東京に放射性物質持ってくるんじゃねえよ」って、ホームで怒られたことがあるんですけど、そのとおりだと思います。
 しかも、なぜ走らせるのか。オリンピックのためですよね。復興のためでも、住民のためでもない。そんな常磐線の全線開通ですから、われわれは絶対に許すことはできません。これから、全力で社員、お客様を守るために、被曝労働との闘いを継続していきたいと思います。小さな組合ですけれども、全力で闘っていきます。

人の住めない所に電車を通すな
 動労水戸執行委員 照沼靖功さん

 私は勝田車両センターで、常磐線や水戸線を走る電車のメンテナンスをしています。
 何よりも許せないのは、まだ人が住んじゃいけない所なのに、線路の用地だけは除染したから電車を走らせて、住民を帰すきっかけにしようとすることです。
 私は車両のメンテナンスをしているんで、毎日床下を検査すれば、マスクしてたって鼻の中が真っ黒になる。それくらい汚れるんです。電車を清掃する労働者も当然、被曝する。
 私たちは団体交渉で、内部被曝の問題を徹底的に追及している。「車両に放射性物質は付着しない」と言い切った社長と水戸支社長は絶対に許せない。
 職場で若い人と話をしてます。来年3月までの攻防で、現場から「こんなのおかしい」「こんなの絶対に許せない」と反対の声が上がったとき、それが一つにまとまって闘いになったときに止められると思います。現場で働く人が不安の声を上げるのは当然です。一つにまとめる力に、動労水戸がなっていきたい。

●まとめ
命を奪う国策に力集め対決する
 動労水戸書記長 木村郁夫さん

 常磐線の全線開通は、安倍の指示のもと企業も自治体もいっせいに動き出した国策だと思います。
 動労水戸は、200人以上の仲間が命を奪われた国鉄分割・民営化に反対し、動労千葉に学んで結成されました。国策というのは、大衆の命を平気で奪う。これに対して大衆運動が絶対に必要で、この盛り上がりで押し返していきたい。
 常磐線全線開通で、JR東労組の青年たちが配転問題と高線量の問題をめぐって会社と激突を開始した。この力と僕らも一緒になって会社に立ち向かっていきたい。これから、12月あたりの試運転と来年3月のダイヤ改悪―営業運転をめぐって職場の大闘争をつくり出していきたい。
 また、常磐線には東海村の原発がある。日本中に原発という命を奪うものが置かれています。舞鶴や愛媛で労働組合が原発に対する闘いを続けている。こういう力をもっともっと結集して、全国から原発をなくす闘いを前進させたいと思っています。

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