米がイラン・中東で戦争策動 サウジ石油施設破壊を口実に
週刊『前進』02頁(3071号02面04)(2019/09/26)
米がイラン・中東で戦争策動
サウジ石油施設破壊を口実に
9月14日早朝、サウジアラビアの石油関連施設2カ所が攻撃され破壊されたというニュースが世界に衝撃を与えた。
この攻撃で、サウジアラビアの1日当たりの原油生産量1200万バレルのうち、約半分の570万バレルの生産が停止する重大事態となった。世界規模で見ても、約5%が生産停止となった。
攻撃されたのは、サウジアラビアの東部のアブカイクとクライスにある国営石油会社サウジアラムコの施設だ。アブカイクは世界最大の埋蔵量のガワール油田で産出された原油を輸出向けに精製しており、クライスには国内第2の埋蔵量を持つ油田がある。
アメリカ製の防衛レーダーすり抜け
今回の攻撃について隣国イエメンのフーシ派が自分たちの攻撃であるとの声明を出した。フーシ派は政府打倒を掲げており、イエメンでは内戦が続いている。この内戦にサウジアラビアと反動王政諸国がアメリカの支援を受けて介入し、空爆している。その結果、数百万人が難民となりコレラなども広がっている。今回の事態にアメリカのトランプが飛びつき、証拠を示さないままイランの関与を主張した。18日にはサウジアラビアが、攻撃に使われたとするミサイルと無人機を公開。兵器はイラン製だったが、発射地点は解明されていない。
重大なことは、サウジアラビアの重要拠点である石油施設が、アメリカ製の迎撃ミサイル「パトリオット」などを導入して防衛力を強化してきたにもかかわらず、強力なレーダー網をくぐり抜けて攻撃されたという事実だ。サウジアラビアの発表では無人機18機と巡航ミサイル7発が、アメリカの防衛システムをすり抜けて施設を破壊したことになる。アメリカの軍事的制圧力の低下が露呈した。
アメリカ帝国主義は自らの威信をかけて、なんらかの報復攻撃をせざるをえないが、イランを攻撃すれば即座に反撃され、米軍が重大な被害を受けかねないため行動に移れないでいる。
トランプは20日、イラン中央銀行への制裁を発表したが、実質的な打撃は小さいとされる。経済に打撃を与えて譲歩を引き出す戦略の限界もあらわになった。
トランプは中東に派兵している米軍兵士の削減を公約していたが、それを守るのは難しい。アフガニスタンに派兵中の米軍を撤退させようとタリバンと和平交渉中だったが、攻撃にあい交渉は中断した。また、ホルムズ海峡をめぐるイランとの対立では米軍の増派を決定している。さらに今回の事態でサウジアラビア国内の米軍を増やすことを発表した。
トランプ自身が大統領選をひかえており、マスコミでは「トランプは戦争を望んでおらず、軍事的な衝突はない」と主張されているが、そうではない。トランプが即座に戦争を決断できない状態にあっても、現場での偶発的な衝突から中東大戦争に発展する危険性はいつになく強まっている。
米帝と一体化して侵略へと進む安倍
また、この過程でポンペオ国務長官がサウジアラビアとアラブ首長国連邦を連続して訪問した。そして会議後に、両国はホルムズ海峡とその周辺を米軍が主導して監視する「海洋安全保障構想」(元・有志連合)への参加を表明した。これで参加国は呼びかけたアメリカと、これまでに参加を表明していたイギリス、オーストラリア、バーレーンを含めて6カ国となった。これに先立って、司令部をバーレーンの米軍基地におくことが決められた。サウジアラビアへの攻撃に乗じて、トランプ政権による対イラン戦争体制の構築が進められている。
安倍政権も、海上自衛隊の護衛艦1隻をホルムズ海峡に派遣する案を検討している。トランプ主導の「海洋安全保障構想」には入らないとしているが、できるだけ一体で進もうとしている。アデン湾に派遣している護衛艦についても、ホルムズ海峡に立ち寄らせることが検討されている。
トランプが起こそうとしているイラン侵略戦争は、中東大戦争であり核戦争だ。戦争放火者はトランプだ。日本の我々は闘う労働組合を全国につくりだし、改憲を阻止し、国際連帯で戦争を絶対に止めよう!