池田元空曹の国賠裁判が結審 責任認めぬ国・自衛隊を徹底追及

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週刊『前進』04頁(3070号04面01)(2019/09/23)


池田元空曹の国賠裁判が結審
 責任認めぬ国・自衛隊を徹底追及

(写真 今年3月5日、名古屋市内で弁護団と共に裁判の報告会に臨む池田さん【中央】)

(写真 裁判終了後、名古屋地裁前で報告会を行った【9月13日】)


 イラク派兵で負傷し、その後の公務災害認定の遅れと打ち切りによって後遺障害を発症、パワハラ・退職強要とも闘ってきた航空自衛隊元3等空曹の池田頼将さんを原告とする自衛隊国家賠償裁判(名古屋地裁民事7部・前田郁勝裁判長)が、9月13日、すべての弁論を終えて結審となった。判決日は11月26日(火)午後1時10分からと決まった。名古屋地裁1104号法廷に集まり、傍聴席を埋めつくそう!

イラク派兵任務中に負傷

 事件の発端は2006年。「イラクへの人道復興支援」を口実に03年に制定されたイラク特措法に基づき、航空自衛隊小牧基地(愛知県小牧市)所属の隊員だった池田さんは、イラクの隣国・クウェートに派遣された。当時、日本政府が掲げていた「人道復興支援」は、実際にはお題目にすぎず、「非戦闘地域に限っての派遣」という説明もまったくのうそだったことは、今では明らかだ。当時から一貫して、国は自衛隊員に本当の狙いを隠してきた。
 自衛隊に入って15年目で通信班という秘密情報を扱う重要な部署に配属されていた池田さんは、06年7月4日、クウェートの基地内で行われた米軍主催のマラソン大会に参加し、米軍関係の軍用バスにはねられて大けがを負った。その事故と、自衛隊の公務災害隠しともいうべき違法な処遇によって、顎(がく)関節症が悪化して後遺症が残り、精神面でもうつ病やPTSD(心的外傷後ストレス障害)を発症することになった。その後、異動した新潟救難隊では、同僚からの暴行や不当な配転、パワハラを受け、退職を余儀なくされた。
 池田さんは「自分のような犠牲者を出してはいけない」と決意し、事故や事件を隠蔽(いんぺい)してきた自衛隊と国を相手に12年9月、裁判を起こした。同年12月、自衛隊を本格的な軍隊として戦場に送り込もうと狙う安倍政権が登場し、そのもとで自衛隊員の自殺が急増した。

治療もさせずにパワハラ

 池田さんと弁護団は、裁判つぶしの不当な弾圧をはねかえしながら、裁判が長期にわたり争っている内容も複雑なため主張整理書面を提出。今回の最終書面はこの半年間に行われた証人尋問に対する評価を中心に論じたものとなった。
 裁判で追及している国の責任は大きく分けて六つ。
 ①事故が起こるような状態でマラソン大会に参加させたこと自体、安全配慮義務に違反している。②事故後に派遣先クウェートの基地で適切な治療を受けさせなかったこと。けがの状態からすれば早期に帰国させて適切な検査と治療を行うべきであった。③帰国後も病気休暇を与えず勤務後に通院させるなど、適切な治療を受けさせなかったこと。④公務災害認定を不当に遅らせたこと。⑤いったん認めた公務災害認定を自衛隊側からの圧力で治療打ち切りとし、療養補償給付も打ち切ったこと。⑥組織的なパワーハラスメントを加えて、池田さんを退職に追い込んだこと。いずれの争点も、安全配慮義務の範囲や内容を切り縮めようとする使用者=国との闘いとなった。

隊員の使い捨て許さない

 米国のイラクに対する侵略戦争と戦闘行動(03年3月19日に米英軍がイラク空爆を開始、翌20日にクウェート領内からの地上部隊のイラク領内侵攻開始)は、同年5月1日のブッシュ米大統領(当時)による戦闘終結宣言の後も続いた。米軍を中心とする多国籍軍はファルージャ、バグダッド、ラマディなどの各都市で強力な爆弾や化学兵器を使い、掃討作戦を繰り返し展開。これに対して武装勢力も激しく応戦し、双方に多数の死者が出ていた。多数の民間人が死傷し、民家が破壊され、都市機能が失われ、多くの難民が出るなどの重大かつ深刻な被害が生じていた。
 こうした情勢を背景として、イラク特措法に基づき派遣された自衛隊員の安全確保についても、万全の安全配慮義務を負うことを政府は言明していた。それにもかかわらず、国は安全対策や事故後の治療を十分にしなかったばかりか、うつ病などの精神疾患の切り捨て、「問題隊員」扱い、パワハラ退職強要、後遺症等級認定の切り下げなどを行い、国としての義務を履行しなかった。
 この裁判は、国と自衛隊との関係、とりわけ現場で命の危険にさらされる実働部隊との信頼関係がどう形成されているか、いないかを浮き彫りにしてきた。特別職公務員としての自衛隊員に対する国の安全配慮義務の範囲をめぐる闘いは、その歴史的経緯からいっても、労働者全体に対する国や使用者の安全配慮義務の範囲をめぐる攻防と深く結びついている。
 またこの裁判は同時に、自衛隊裁判に共通する証拠の隠蔽との闘いでもあった。自衛隊員は誰も「使い捨て」にされることなど望んでいない。政権の都合や資本家の利益と結びついた侵略戦争に対して、隊員が離反することは不可避である。全国の労働運動の力で国の責任を追及し、労働者のストライキと国際連帯への労働者・兵士の合流をつくりだす時代が到来している。そこに「改憲・戦争阻止!安倍打倒!」の大きな展望がある。私たちも、関西生コン弾圧を許さず11月労働者集会に参加する。ともに闘おう!
(池田自衛隊裁判をともに闘う会)

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