「全世代型社会保障」の正体 社会保障制度を破壊し、全世代から搾取と収奪
「全世代型社会保障」の正体
社会保障制度を破壊し、全世代から搾取と収奪
6月、安倍政権は「骨太方針2019」を決定し、消費税10%化と「全世代型社会保障への改革」を掲げた。8月27日、公的年金制度の財政検証結果を発表。安倍を議長に新たな会議を立ち上げ、改憲と共に「政権の総仕上げとしての社会保障改革」を進めようとしている。官邸幹部は「1億総活躍、働き方改革、人生100年とやってきたが、全ては全世代型社会保障につながっている」と語っている。「全世代型への改革」とは、社会保障制度を根本から破壊し、高齢者を最大の標的に全世代からの搾取と収奪の拡大を狙う実質改憲の大攻撃だ。
国は労働者民衆の生活と生存に責任を取らない
骨太方針は「人口減少・少子高齢化」「生産性と成長力の伸び悩み」という日本資本主義の危機を強調。「全世代型社会保障への改革」「人生100年時代を見据え、誰もがいくつになっても活躍できる社会の構築」を求めた。「いくつになっても働いて国家を支えろ」ということだ。
憲法25条は「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利」があり、「国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない」としている。
しかし12年8月、民主党政権と自民党・公明党の合意で社会保障制度改革推進法が成立。社会保障の理念をこれまでの「国の責任による生活・生存の保障」から「家族相互及び国民相互の助け合い」に書き換えた。憲法を否定し、社会保障制度のあり方を根本から破壊するものだ。
13年8月、安倍政権の社会保障国民会議は「全世代型社会保障への転換」を最終報告。国の責務としての「公助」は「自助」「共助(社会保険制度)」を補完するものと規定。「給付は高齢世代、負担は現役世代という構造を見直す」とした。同年12月、医療、介護、年金、子育ての社会保障4分野の改革「プログラム法」が成立。14年4月の消費税8%化に続いて、法改悪がどんどん進められていった。
そして骨太方針2019は、それまでの「財政再建」論に基づく社会保障費削減に加えて、「生産性の向上」を最大の目的とする戦後型雇用・労働政策の大転換、「働き方改革」の立場からの全世代型社会保障改革を打ち出した。日本帝国主義の存亡をかけた重大な踏み込みだ。
「年金の積立金が枯渇する」と脅し死ぬまで働かす
今年8月の年金財政検証は、「経済成長と(高齢者の)労働参加が進まない」場合には、年金積立金が枯渇し制度は実質上破綻するとする試算を示した。
「65歳以上の高齢者の労働参加が進まなければ労働力人口は急速に減少し続ける」から、「経済成長と労働参加が進まない」ケースでは、マクロ経済スライドによる削減を続けたとしても、国民年金は2052年度には積立金が枯渇し、所得代替率(現役世代の手取り収入に対する年金額の割合)は36~38%に落ち込む。「経済成長と労働参加が一定程度進む」ケースでも40年代半ばには所得代替率は50%に下がるとした。
民間の試算では、所得代替率36%を現在の「平均手取り額」から計算すると、平均賃金で厚生年金に40年加入した夫と専業主婦のモデル世帯の年金は12万8520円。暮らしていけない。非正規職労働者ならなおさらだ。「定年後の生活の安定」を約束して金を取っておいて払えないでは国家的詐欺ではないか。
検証は衝撃的な試算で脅して「経済成長と労働参加を促進することが年金水準確保のため重要」と提言した。年金制度改革の選択肢として、A.社会保険の適用を月5万8千円以上の賃金収入の全労働者(学生、雇用期間1年未満を含む)最大1050万人に拡大して保険料を取る、B.高齢者の75歳までの就労延長、受給開始年齢引き上げなどを挙げた。文字通り死ぬまで働かせて搾取し収奪し続けるということだ。
消費税10%化と一体で労働者は生きられない!
新設の会議で、年金は財政検証を踏まえ、高齢者ら「支え手」を増やす改革を重点に、パート労働者の厚生年金適用、私的年金の「確定拠出年金」促進を図る。介護保険では利用時の原則1割負担を変え2~3割負担する対象者を拡大し、ケアプラン作成の自己負担導入などを検討するという。
消費税10%化と共に、労働者民衆の生活が立ちゆかなくなる。改憲・戦争と一体の階級戦争だ。安倍と資本家のために殺されてたまるか! 年金破壊への怒りが青年に広がり消費増税やめろのデモも続いている。社会保障破壊との闘いは労働組合の重要課題だ。労働者への攻撃である以上、労働者が団結して立ち上がれば打ち破れる。11・3労働者集会に大結集しよう。
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全世代型社会保障とは
●13年8月 社会保障国民会議
・給付は高齢世代、負担は現役世代という構造を見直す
・すべての世代が支え合う制度へ
●19年6月 骨太方針2019
・人生100年時代を見据え、誰もがいくつになっても活躍できる社会の構築
・70歳超の就業機会確保の選択肢として、定年延長・廃止、契約社員などでの再雇用、子会社・関連会社での雇用、フリーランス(個人事業主)契約など
・年齢が働くことの制約にならないよう、働き方を自由に選べる中で社会保障の支え手を拡大
・年金改革などを通じて、より多くの国民の労働参加を促す