成田撤退、羽田に集約 米デルタ航空 破綻必至の第3滑走路
週刊『前進』04頁(3066号03面02)(2019/09/09)
成田撤退、羽田に集約
米デルタ航空 破綻必至の第3滑走路
(写真 成田空港を離陸するデルタ航空機)
米航空大手のデルタ航空は8月9日、成田空港から完全撤退し、2020年3月に羽田空港に日米路線を集約すると発表した。
これは、成田空港の経営破綻、成田空港機能強化策・第3滑走路建設の破綻をもらたす決定的事態だ。
日米政府は、20年東京五輪までに羽田空港の国際発着枠を増やすことで合意している。米国には1日あたり12枠の増加が割り当てられ、デルタ航空が5枠を確保した。既存の路線と合わせれば、米航空会社の中では最多の七つの路線を持つことになる。今後は、アジアへの乗り継ぎ拠点を韓国の仁川空港に移すという。
成田完全撤退は「成田縛り」の崩壊を意味する。「成田縛り」とは、羽田空港に国際線を新しく就航させる場合には成田発着便を残すよう求める行政指導のことで、成田空港会社(NAA)を羽田国際化に伴う経営破綻から延命させるために、日帝が各国の航空会社に強制してきた政策だ。それは同時に海外資本の参入を規制し、羽田においては日本航空(JAL)や全日空(ANA)の独占的使用をもたらしてきた。NAAは経営破綻の危機、日帝は空港・航空政策の危機に追い込まれているのだ。
また、デルタ航空はJAL、ANAと並ぶ成田空港最大手の定期乗り入れ航空会社だ。北米―アジア諸都市の直行便を運行し、給油などのために成田空港を乗り継ぎ拠点としている。NAAはその際の通過客も旅行客数としてカウントしているため、デルタ航空の撤退は総旅客数の激減に直結する。それは格安航空会社(LCC)の誘致で穴埋めできるレベルではない。
だがNAAは、夜間飛行を延長し住民に犠牲を強いて生き延びようとしている。絶対に許せない。
羽田新ルートで都心を低空飛行
他方、デルタ航空の撤退=羽田集約は、都心を超低空飛行する羽田空港の新飛行ルートの運用強行とも一体だ。東京五輪に向けて羽田の国際便の発着回数は年6万回(昼間時間帯)から9万9千回に増加され、1日あたり50便も増やされようとしている。国土交通省は8月8日、新飛行ルートの運用開始を20年3月29日と発表し、8月30日から「飛行検査」を開始した。だが新飛行ルートは住民、航空労働者の命と安全を脅かすとんでもないものだ。従来は海側から着陸・離陸だったのが、南風時には埼玉上空で旋回し、高度を下げながら人口密集地の都心上空を超低空で通過し着陸するようになる。大井埠頭・大井町付近で高度は約335㍍(東京タワーは333㍍)。騒音はパチンコ店内なみになるという。しかもA滑走路進入ルートでは約4分20秒に1回、C滑走路進入ルートは約2分に1回のハイペースでの通過だ。さらに降下角度が通常より約0・5度上がるため、羽田はパイロットにとって世界でもっとも難しい空港となる。氷塊などの落下物も殺傷能力をもった凶器だ。外注化が進む整備士にもさらなる過重労働を強い、安全を破壊する。
これが東京五輪の実態だ。三里塚闘争と羽田低空飛行ルート阻止の闘いが一つになって、東京五輪反対、安倍打倒へ闘おう。