貧困を拡大する消費税廃止を 生活も社会保障も破壊し、軍拡予算は青天井に膨張

週刊『前進』02頁(3065号01面01)(2019/09/05)


貧困を拡大する消費税廃止を
 生活も社会保障も破壊し、軍拡予算は青天井に膨張


 安倍自公政権は10月から消費税率を8%から10%に引き上げる。増税への怒りの噴出は必至だ。2兆円の経済対策や軽減税率の導入で得をするのは大資本だ。社会保障のためではなく、労働者人民を貧困にする消費税を直ちに廃止せよ。

10%化でさらに重い負担に

 税率10%の消費税は低所得の労働者人民にとって重い負担だ。
 賃金が下げられているのに、年金や医療・介護の保険料が上げられ、消費に回すお金が減っている。2018年の所得に対する税と社会保険料の負担の比率(国民負担率)は42・6%に達した。1世帯あたりの消費支出(平均)も2014年369万円から2017年335万円へ、34万円も減った。みな生活を切り詰めている。
 安倍自公政権は2014年、消費税率を5%から8%に引き上げ、5・2兆円の増収を得た。ところがそれ以降、社会保障の給付を削減している。年金支給額の減額や支給の先送り、医療費や介護費用の自己負担率の引き上げを行い、特別養護老人ホームの入所対象者を要介護3以上に制限し、「後期高齢者」と名付けた75歳以上の人の保険料軽減措置を縮小し、生活保護の生活扶助費、冬季加算などを削減した。2015年以来、7人に1人が貧困にあえいでいる。社会保障のためと称する消費税が貧困を拡大しているのだ。

「社会保障の財源」は大うそ

 「消費税は財政危機のなかで社会保障を支える財源として必要だ」と言われてきたが、事実はそうではない。消費税は、所得税・法人税の減税による税収減を補うために導入し、将来は税率を引き上げ、税制の中心に据えるものとして構想された。
 そのことは、1990〜2000年に政府税制調査会会長を務めて消費税を中心とする税体系を作った加藤寛(慶大名誉教授)が2010年に語っている。
 「大蔵省は財政危機を(消費税導入の)理由にしたかったが、私が反対して、福祉と直間比率是正のため、と書き込んた。累進税の所得税だけに頼ると、労働意欲がそがれるからですよ」(斎藤貴男著「決定版 消費税のカラクリ」)
 法人税率は1984年に43・3%、1989年に40%だったが、2018年には23・2%と大幅に下げられた。その結果、法人税収は1989年の19兆円から2018年の12・2兆円へ、7兆円近く下がった。国の消費税収は1989年(税率3%)に3・3兆円だったが、2018年(税率8%)に17・8兆円となり、14・5兆円も増えた。
 法人税と消費税の合計は1989年の22・3兆円から2013年の21・3兆円に減った。法人税収の減少を消費税収で補ってきたのだ。消費税率が8%に上がる以前の2013年に比べ、毎年5~7兆円の増収が生じたが、法人税率が1989年以前のままなら、この増税は必要なかった。
 しかも安倍政権は社会保障費の「自然増」を6年間で1・6兆円削り、防衛費の増加に充てた。防衛費は6年連続で増え、2019年度は5兆2574億円に達した。

経済対策で増収分は消える

 2019年度予算では、消費増税による消費の冷え込みに対する経済対策として約2兆円を盛り込んだ。10月からの半年で消費増税による増収は約2兆円超が見込まれる(軽減税率の実施でもっと少なくなる可能性もある)。そのすべてが経済対策で消えてしまうのだ。これでは何のための消費増税か分からない。
 経済対策の内訳は、ポイント還元2796億円、2歳以下の子育て世帯や低所得層向けのプレミアム付き商品券(マイナンバーカードの取得が必要)に1723億円、すまい給付など住宅購入の支援に2085億円。合計で1兆円にすら届かない。そのほかは「防災・減災、国土強靭(きょうじん)化」のための公共事業費1兆3475億円だ。経済対策の67%を占める。社会保障よりもコンクリートに税金が使われる。
 軽減税率の導入で、飲食料品の消費税率を8%に据え置き、低所得者に「配慮」した姿勢を見せた。軽減税率は定期発行の新聞にも適用される。新聞社は活字文化を守るためと称して軽減税率を要求したが、本には適用されない。これで朝日新聞も消費税反対キャンペーンをやめ、少子高齢化社会では社会保障財源のために消費税は必要だという主張を強めている。
 さらにキャッシュレス決済の顧客へのポイント還元が2020年6月までの9カ月間実施される。還元率は中小店舗で5%だが、コンビニやファストフード店など個人が大手チェーンの看板を借りるフランチャイズ店で2%、大手スーパーなど大規模店は還元なしとなる。
 このため大資本が資本金を5千万円以下に減らして中小企業化する動きが始まっている。このようにして大資本は大幅なポイント還元で中小商店から客を奪う一方、労働者への合理化・賃下げ攻撃を強めようとしている。
 消費(増)税は社会保障の安定・充実には関係ない。労働者人民を収奪し苦しめる悪税だ。安倍政権と資本家階級は労働者人民の怒りの決起を恐れている。消費税率引き上げ反対や税率引き下げ要求ではなく、消費税即時廃止を掲げて闘おう。
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