中国政府と激突する香港デモ 妥協の余地は一切ない 武力鎮圧絶対に許すな

週刊『前進』04頁(3064号02面04)(2019/09/02)


中国政府と激突する香港デモ
 妥協の余地は一切ない
 武力鎮圧絶対に許すな

(写真 8月18日に香港で行われたデモは170万人が参加して終日闘われた)

 8月18日の170万人デモをはじめとする今回の「逃亡犯条例」に反対する香港の労働者民衆の闘いは、ギリギリと中国スターリン主義との妥協のない闘いに入りつつある。闘争の性格と実際の運動の巨大さから、これは今までにない運動となっている。

中国経済に占める香港の死活的位置

 今回のいわゆる「逃亡犯条例」の提出は、そもそもは香港行政長官である林鄭月娥(りんていげつが)の独走であったと言われている。だが、きっかけとなった事実はどうあれ、数百万人の労働者民衆が立ち上がり、香港の独立を掲げる勢力も台頭している事態は、もはや中国政府が絶対に容認できないものとなっている。
 1997年にイギリスから中国へ香港が返還され、中国政府はそれから50年間にわたる香港の「自治」を認め、体制も変えないとして、「一国二制度」を保障した。スターリン主義体制と資本主義体制の「共存」を50年間維持するとしたのだ。
 このような政策を中国政府が取ったのは、何よりも「改革・開放」政策にとって、香港の資本主義体制を維持することが重要だったからだ。鄧小平が「改革・開放」政策を開始し外資導入政策を取った時に、想定されていたのは香港や台湾などからの華僑資本であった。香港資本は、中国の「改革・開放」政策にとって必要不可欠だったのだ。
 さらにこの「一国二制度」は、台湾を中国スターリン主義が併合した時の政策としてもともと考えられていたものであり、先に香港に適用することで台湾併合時に備えるという側面も持っていた。
 香港資本は、中国の「改革・開放」政策にとって決定的に重要だったが、中国の経済大国化が進む中で、香港の地位は次第に落ちて行った。すでにGDP(国内総生産)は上海や北京、深圳(しんせん)に追い抜かれている。これは今、中国が香港に対して強く出てきている一つの要因になっている。
 しかし、それでも中国にとって香港が持つ経済的な重要性は大きい。中国の対外直接投資の最大の投資先は香港であり、2016年では中国の対外直接投資総額の58・2%を占めている。総額の半分以上であり、多くの中国企業が香港を経由して、他国に投資している。香港は、依然として中国経済の要に位置している。
 さらに、習近平政権が進める「一帯一路」政策との関係で、香港は重要な存在だ。香港は東南アジアに属し、資本主義諸国との金融的な結びつきが強く、世界的な港も保有している。多くの中国資本が香港を足場に他国に向かっている現実は、「一帯一路」政策の展開(特に「海のシルクロード」)の中で、中国資本が東南アジアや南アジア、さらには中東やアフリカに進出していくのに、香港は新たな重要性をもったということだ。上海がいくらGDPで追い抜き、港として発展しても、この香港の位置は替えられないものがあるのである。

中国スタ体制の崩壊的危機に直結

 今、香港で湧き上がる「逃亡犯条例」に反対する運動は、香港の「自治」の維持を求める運動であり、ひいては香港の「独立」にもつながりかねない性格がある。
 もしこの運動に中国政府が妥協すれば、中国が苛酷に弾圧しているウイグルなどの諸民族の独立運動にも火がついてしまう。これは中国の労働者、農民の自己解放的な決起を促進するだろう。中国は分裂情勢になり、習近平独裁体制は根底から揺さぶられる。台湾でも「独立派」が一挙に拡大し、米帝も巻き込んで台湾海峡から南中国海での戦争的危機も激化しかねない。
 まさに今回の事態は、中国スターリン主義体制の崩壊的危機と直結しているのである。だから「逃亡犯条例」を撤回できないし、林鄭長官を辞めさせるわけにもいかないのであり、警察のデモ隊への暴行の責任も認めないのだ。
 中国スターリン主義にとって、今の香港の労働者民衆の決起は、軍隊を使ってでも絶対に圧殺しなければならない事態だ。しかし、それも簡単ではない。国際都市・香港で数百万の人を虐殺などしたらどうなるのか、米帝などの対中政策はどうなるのか、さらに台湾問題はどうなるのか——。とはいえ、このまま放置もできない。8月25日のデモに対しては警察官がついに発砲しており、緊張は日に日に高まっている。

労働者の国際連帯で闘いを支えよう

 香港の労働者民衆にとって、この「逃亡犯条例」を認めれば今後永遠に香港の「自治」は奪われ、中国スターリン主義に現実的に支配されることを意味する。そこに妥協の余地は一切ない。特にこれからを生きる学生・青年労働者にとってはそうだ。だからこそ巨大なデモが実力闘争も含めて拡大しているのである。
 9月に入れば、2014年に「真の普通選挙」を要求して学生と労働者が75日間にもおよぶ街頭占拠を闘った「雨傘革命」5周年を迎え、闘いの高揚は必至だ。
 非和解的な闘いが拡大する中で、追い詰められた中国スターリン主義は最後には絶望的に軍による武力鎮圧にうって出るしかなくなる。10月1日の国慶節(中華人民共和国の建国記念日)までに、中国政府は香港問題を「解決」したいはずである。
 この武力鎮圧を阻止する道は、不屈に闘う香港の労働者民衆と連帯する全世界の労働者の国際連帯以外にない。それが今、何よりも求められている。
 中国スターリン主義を根底から揺るがし、対決している香港の労働者民衆の闘いを絶対に支えよう! 香港を世界革命の拠点と位置づけ、中国の武力鎮圧を許さない労働者の国際連帯の闘いをつくりあげよう! 香港の労働者民衆と連帯しよう!
(河原義之)
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