「一斉摘発・送還やめろ!」 トランプの移民排斥に全米で大反撃
週刊『前進』04頁(3056号02面05)(2019/07/29)
「一斉摘発・送還やめろ!」
トランプの移民排斥に全米で大反撃
(写真 「ICEを廃止しろ」「収容をやめろ」——黄色いベストを身に着けたメンバーを先頭に道を埋め尽くすデモ隊【7月12日 シカゴ】)
米大統領トランプは7月12日、移民税関捜査局(ICE)が全国10以上の都市で14日から「不法移民」約2千世帯の一斉摘発・強制送還に着手すると発表した。ニューヨークやサンフランシスコ、ロサンゼルスなどの主要な「サンクチュアリ・シティー(聖域都市)」に狙いを定め、「(移民を)彼らが来た国に戻す。犯罪者を刑務所に送るか、彼らが来た国の刑務所に送る」と述べたのだ。
サンクチュアリ・シティーとは、市が管轄する官公庁(警察を含む)がアメリカ連邦政府の移民・難民政策に協力することを禁止し、ビザ・労働許可証などがない人を含めて移民・難民を庇護(ひご)することを決定した都市だ。1980年代、もっとも先進的な労働組合の拠点であるサンフランシスコで実現した。
300万人以上の強制送還を行ったオバマ政権時代、サンクチュアリ・シティー運動は急速に全米に広がった。この闘いが市当局を追い詰め、サンクチュアリを決定せざるを得なくなったのだ。トランプの攻撃は、これへの大反動だ。
摘発・送還の対象とされる移民・難民の多くは何年もアメリカに定住し、仕事を持ち、家族で暮らすアメリカ社会の一員だ。さまざまなルーツをもつ人々によって構成される社会を暴力的に分断する攻撃を絶対に許すことはできない。
トランプ発言に対し、全米で数千、数万人規模の激しい怒りの行動が巻き起こっている。12日、ワシントンにあるICE本部にユダヤ系を中心とした千人以上の人々が座り込み、入り口を封鎖した。ニューヨークでは数百人が「移民収容施設を閉鎖しろ」「国土防衛の名で自由を奪うな」とデモ。都心の道路を封鎖し50人近くが逮捕された。ロサンゼルスでも数千人のデモが闘われ、フェニックスでは鉄道を封鎖して抗議行動が闘われた。逮捕者が続出する中、闘いは各地でさらに拡大。サンクチュアリ・シティーの市長さえ公然と摘発に異を唱えている。
さらに、医療労働者の労組は組合としてトランプの移民・難民政策に抗議し命を守ると決議。アマゾンの倉庫で働く労働者も、アマゾンはICEへの技術協力をやめろと声を上げた。
闘いにより現時点での摘発は小規模にとどまっているが、トランプは全米で100万人に上る最終退去命令対象者全員を追放する用意があると脅している。さらに、親から引き離した子どもたちのより長期の収容や難民申請のより迅速な却下を狙った新たな立法すら画策している。
加えて16日には、南部のメキシコ国境での難民申請を厳格化すると発表した。中米グアテマラ、ホンジュラス、エルサルバドルなどからの難民への弾圧だ。
アメリカに向かった難民の多くは長い旅の途中で命を落としている。家族が引き裂かれ、劣悪な環境の収容所に押し込められている。みな、故郷を離れたくてアメリカを目指すのではない。生きるために離れざるを得ないのだ。こうした難民から移動と定住の権利を奪う行為は、まさしく帝国主義による殺人だ。
さらに、トランプがこの弾圧と並行して行ったプエルトリコ系、ソマリア難民、パレスチナ系、アフリカ系の野党女性議員らへの人種差別暴言は人々の怒りの炎に油を注いでいる。
一連の移民・難民弾圧は、イラン、中国―朝鮮半島への戦争衝動を募らせるトランプ政権による労働者階級への差別・分断攻撃であり階級戦争だ。しかし労働者階級は民族や国籍、国境をこえて団結し、真の敵である権力者たちと闘う力を持っている。トランプと一体で排外主義と戦争をあおる安倍を倒そう。