五輪口実にテレワーク 都庁・中央省庁を突破口に

週刊『前進』04頁(3052号02面03)(2019/07/15)


五輪口実にテレワーク
 都庁・中央省庁を突破口に

延べ1万4千人実施を叫ぶ小池

 小池百合子・東京都知事は、2020年東京オリンピックでの混雑緩和のためと称し、今月から来月にかけ、約1万人の都庁職員を対象にした出勤抑制、時差出勤、さらに「可能な限り多くの職員がテレワーク(在宅など通常職務を行う場所とは異なる場所での勤務)を実施する」と打ち出した。
 7月1日に都が発表したアクションプランでは、都庁第一、第二本庁舎と議会棟で働く職員の数を、期間中、通常の3分の1程度に減らすとした。テレワークは計20日間、約2800人が週1回以上行い、延べ1万4千人以上の実施を狙う。小池は5日の記者会見で、7月24日、26日、8月2日、23日の4日間は「全員が一斉にテレワークを実施する」と述べた。
 しかし、実際にはそんなことは不可能である。都庁の労働者は、職場で意思疎通をしながら、複雑で責任の重い業務を回している。モバイル端末から在宅で業務ができると都は言うが、たとえば、水道局は浄水場など現場からトラブルや様々な問い合わせがあり、その都度方針を決めて対応する。都税に関する業務は都民一人一人の個人情報を扱う。それを自宅に持ち帰って扱うことは秘密保持の点からも許されない。

都庁職員の業務崩壊させる気か

 「全員一斉にテレワークを実施する」!? 小池の発言に表れているのは、都の労働者の業務を何ひとつ理解していないということである。そんなことをすれば都庁の業務は崩壊する。小池は何の責任も取らない。都庁の労働者を何だと思っているのか。マスコミ受けだけを狙った、小池のアドバルーンの言いなりになる存在とでも言うのか。
 実際には在宅など成り立たないので、都庁の中に特別にテレワーク用の部屋を設け、そこにモバイル端末を持ち込んで業務を行わせる。それをもって都が先頭に立ってテレワークを牽引(けんいん)しているとマスコミに大宣伝させ、民間企業にテレワークへの協力をあおり立てるのである。そんなことのために都庁の労働者を駆り出すことを許してはならない。
 政府も今月から来月にかけ、霞が関に勤める中央省庁職員について職員3万人規模でテレワークを実施する方針を6月28日に決定した。これまで、今夏2万人規模でテレワークと時差出勤を行うと発表していたが、テレワークに限定して人数を増やした。杉田和博官房副長官は「政府が率先して取り組む。柔軟な働き方を浸透させる絶好の機会だ」と語った。

無償で無制限の労働強制を狙う

 五輪を振りかざして進められるテレワーク攻撃は、全労働者にかけられている安倍「働き方改革」攻撃の本丸である。
 テレワークの最大の問題は何か。在宅勤務となれば勤務時間と勤務時間外の区別すらなくなり、残業という考え方自体がなくなる。どれだけ長時間働かせても労働者の自己都合とされ、過労死しても資本は何の責任も負わない。資本はそれを覆い隠し、労働者が望んでいる「多様で柔軟な」働き方かのような、バラ色の宣伝をしているが、そんなのはうそっぱちではないか。資本が派遣労働を拡大してきたのと全く同じやり口である。
 労働者は無償で無制限の長時間労働(ただ働き)をさせられ、資本は労働時間を管理する責任からも自由になり、搾取できるだけ搾取する。そして安倍政権はテレワークを、デジタル化を進め、労働者一人一人をフリーランス(業務請負)化して労働者ですらなくす攻撃の切っ先と位置づけている。
 日帝資本家階級は、大恐慌下での低成長、労働力人口減少という危機にあえぎ、改憲と一体で、雇用、労働時間、賃金の全てにわたり戦後労働法制に示される労資の階級関係を破壊する攻撃をしかけている。何の展望もないが、資本が生き残るためだけに労働者階級に対するいちかばちかの攻撃である。JRでの駅丸ごと外注化や乗務員勤務制度改悪、新たなジョブローテーションによる運転士・車掌廃止はその典型だ。
 都庁と政府のテレワーク攻撃に、現場から労働組合での議論を起こし、闘う労働組合の力で反撃しよう。
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