JRジョブローテーション許さない 全面外注化・分社化狙う

週刊『前進』04頁(3052号02面01)(2019/07/15)


JRジョブローテーション許さない
 全面外注化・分社化狙う


 運転士と車掌の職名の廃止を軸とするJR東日本の「新たなジョブローテーション」提案は、鉄道業務の全面的な分社化の本格的な始まりだ。JR東日本が目指しているのは、経営計画を立案する企画部門や、関連会社を統括する管理部門だけをJRに残し、鉄道の現業部門はJR本体から切り離して、持ち株会社に純化することだ。

駅、車掌、運転士は「事務職」

 JRの「新たなジョブローテーション」提案の骨子は、①運転士と車掌という職名をなくし、「乗務係」などの職名に統一する、②運転士試験や車掌試験も廃止し、乗務員への異動は「任用の基準」で行う、③車掌を経ずに運転士になれるようにする、③同じ仕事には10年以上は就かせない、などだ。
 JRは、この施策を強行することによって、「早期から企画部門等の他職に挑戦できる機会が増える」と言う。この提案が想定しているのは、入社後2年は駅業務に就くが、その後は車掌を経ずに運転士となり、運転士を10年経験したら管理職になるという、幹部候補生の昇進ルートだ。JRは、こうした職歴をたどって企画部門・管理部門に登用されることになる幹部候補生以外は、JR社員としては扱わないようにしたいのだ。
 JRの来年度の新規採用方針と照らしてみると、その意図はよりはっきりする。新規採用枠は、大学院卒、大学卒、高専卒を応募資格とする「総合職」と、大学卒、短大卒、高専卒、高校卒を応募資格とする「エリア職」に分かれるが、エリア職も「エリア全体のマネジメントに携わる」ものとされている。
 また、総合職もエリア職も、職種は大きく「事務職」と「技術職」に区分されているが、駅員や車掌、運転士は「事務職」というくくりの中にある。車両の検査・修繕業務や保線、電力、信号通信などの設備部門の業務は、「技術職」とされている。
 「ジョブローテーション」の対象とされているのは、このうち「事務職」だけだ。「ジョブローテーション」は、将来、企画部門を担う幹部をどう選抜するかという問題意識で構想されている。そこでは、乗客の命を預かって列車を運行する運転士や車掌の業務も、管理職に登用されるためのステップとしてしか位置づけられていない。
 今年3月、JRはダイヤ改定とともに乗務員勤務制度を改悪し、支社企画部門の管理職も片手間で運転に従事できるようにした。運転士や車掌の業務は事務仕事だから、企画・管理業務をしながらでもできるという、恐るべき発想だ。
 他方、「技術職」と位置づけられる設備部門などの業務は、すでに外注化が激しく進んでいる。JR社員の仕事は、外注先への工事の発注と、完了した工事の結果を検査することが主なものになっている。施工管理は一次下請けに任され、実際の労働を担っているのは孫請け・ひ孫請けの非正規労働者だ。
 JRはこれをさらに徹底化し、鉄道業務を全面的に外注化・分社化したいのだ。JR社員としての「技術職」の役割は、分社を財務の観点から管理監督することだけになる。
 「事務職」として採用された労働者は、エリア職も含めて、将来、企画・管理部門を担う者と位置づけられている。だが、その全員が管理職になれるわけではない。労働者同士を競い合わせ、蹴落とし合わせて、管理職になれなかった者は分社に転籍させるのだ。
 「ジョブローテーション」提案では、運転士を10年経験した後に労働者がたどる職歴として、「企画部門」のほかに「出向」が明記されている。そして、その後は「さらに多様な経験」を積むと書かれている。「多様な経験」として想定されているのは、明らかに分社への転籍だ。

「社友会」の組織化を許すな

 「ジョブローテーション」は、「労働組合のない社会」をつくる攻撃そのものだ。
 国鉄時代、運転士は検修職を経験した上でなるものだった。列車を安全に運転するためには、車両の構造を熟知していることが必要だからだ。
 国鉄分割・民営化後、運転士は駅、車掌を経てなるものに変えられた。これはJR総連・東労組と結託して労働者を支配するという、JR東日本の労務政策のためにつくられた仕組みだった。「東労組に所属していなければ運転士試験に合格できない」という脅しで青年を東労組に縛りつけ、カクマルの影響力が及ばなかった駅や車掌などの職場も、こうして東労組のもとに組み敷いてきた。
 JRは、長く続いたこの構造を自ら破壊し、運転士や車掌を事務職と位置づけて、資本の直接の支配下に置こうとしている。
 だが、「ジョブローテーション」には絶対に無理がある。運転士や車掌は、経験を積み重ねることで熟練を培っていく仕事だ。それを「10年やったら別の仕事に代われ」というのは、安全破壊のきわみだ。動労千葉・動労総連合と共に反対の声を上げ、会社による「社友会」の組織化を許さず、「ジョブローテーション」の実施を阻止しよう。
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