東京五輪建設労働者の酷使許すな 国際建設林業労組が報告書 現場に闘う労働組合が必要だ
週刊『前進』04頁(3042号03面03)(2019/06/10)
東京五輪建設労働者の酷使許すな
国際建設林業労組が報告書
現場に闘う労働組合が必要だ
(写真 建設中の新国立競技場)
2020年東京五輪・パラリンピック大会の競技会場などの建設現場で働く労働者が危険で過酷な労働環境にさらされているとして、国際建設林業労働組合連盟(BWI)が5月15日に「2020年夏季東京オリンピックの影の側面」と題する報告書を公表した。
報告書は、複数の建設現場の視察と、新国立競技場と選手村の建設にあたる現場労働者からの聞き取りに基づいて劣悪な労働環境の実態をまとめており、結論として「労働組合がオリンピックの建設労働者の労働環境を変えるために積極的な役割を果たすこと」を強く要求している。
月に最大28日間勤務の労働者も
報告書が明らかにしたものは、外国人労働者を含む労働者の安全と命が脅かされ、権利が著しく侵害されている事実の数々である。たとえば、▼調査を行った労働者のうち約半数が雇用契約ではなく請負契約、▼選手村で月28日間連続、新国立競技場で月26日間連続勤務した労働者がいた、▼作業員の中には安全装備を自分で購入させられた者もいた、▼薄暗い中での作業により大けがを負ったことについて労組が日本スポーツ振興センターに申し立てた通報を、「(被害を負った)労働者本人によるものではない」という理由で却下したことなどである。さらには、▼外国人技能実習生が原料運搬などの単純作業ばかりやらされている、▼処罰または職を失うことを恐れ苦情を申し立てられない「恐怖の文化」、▼通報制度は機能していないことなどを挙げている。
この報告書について、大会組織委員会、東京都、日本スポーツ振興センターは何の応答もしていない。
「働き方」関連法は建設業を除外
すでに2017年4月には新国立競技場の地盤改良の作業管理を担当していた23歳の青年労働者が過労自殺に追い込まれた。亡くなる直前の2月の残業時間は211時間56分だった。この悲惨な死にもかかわらず、命を脅かす長時間労働が現在も横行している。今年4月1日に施行された「働き方改革」関連法は「繁忙期の残業時間」を月100時間までして良いと認めた。労働基準法を解体し、脳・心臓疾患や過労死を招く危険な長時間労働を合法化するものだ。
それすらも建設労働者は五輪工事期間の全てを含む5年の間、適用除外された。建設業は過労死で亡くなる労働者が2番目に多い業種であるにもかかわらずである。仮に含まれていたとしても、下請けには適用が猶予されており、大多数の建設労働者は除かれる。
過労自殺を含め現在までに3人の労働者が五輪建設現場で亡くなっている。うち1人は選手村建設にあたっていた労働者で、昨年1月、荷下ろしのクレーンと足場の間に挟まれ死亡した。昨年12月には選手村で労働者が転落死した。昨年末までで10人が、8日以上休業の大けがをしている。
選手村では頭上30㍍の空中に巨大なコンクリートがつり下げられ、強風であおられる真下で作業させられるなど「命がいくつあっても足りない」現場だ。工期の遅れ、労働力不足は労働者を一層危険な労働環境に追い込んでいる。「一人親方」「請負業」という偽装された形態で、法的保護の対象外とされている多くの労働者が安全装備を自腹購入させられている。
外国人労働者を酷使し使い捨て
さらに重大なのは、安倍政権が新たな在留資格「特定技能」を設け、5年間の期限付きで34万人を超える外国人労働者を導入しようとしていることだ。安倍政権は、移民政策はとらないと定住を認めていない。建設業に従事する外国人技能実習生が死亡する割合は他の労働者の2倍であり、「彼らの安全のために特別な措置がとられなければならない」にもかかわらず、五輪建設現場において労働安全衛生上、必要な対策はとられていない。そして五輪工事後は使い捨てられようとしているのだ。
報告書によれば、都の代表はBWI派遣団との面談で「移民労働者は現場に1人もいない」と主張した。しかし翌日、派遣団が都の管轄するカヌー・スラローム会場を訪問すると、多くの移民労働者が働いていた。安全装備や処置について、日本語以外の言語での説明などの特別な対策はとられていなかった。
報告書は、「第一かつ最重要のステップは、雇用形態にかかわらず全ての労働者の、労働組合の組織化と団体交渉の自由を積極的に促進することだ」という要求で結んでいる。
だが、安倍政権と小池百合子都知事が行っていることは真逆だ。五輪を振りかざしてJRを先頭に「労働組合のない社会」にして、労働者を総非正規職化し、極限的な無権利と最底辺に突き落とし、社会を破壊し、改憲・戦争への道を突き進んでいる。
これに立ち向かう労働組合を全ての労働現場に組織することが待ったなしだ。