運転士と車掌の廃止で雇用も安全も壊すJR

週刊『前進』04頁(3040号02面02)(2019/06/03)


運転士と車掌の廃止で雇用も安全も壊すJR


 安倍政権と資本は、「働き方改革」の名のもとに労働者の雇用・権利・労働条件をすべて破壊する攻撃に乗り出している。また、改憲・戦争を強行するために労働組合を絶滅しようと狙っている。その攻撃を最先頭で担っているのがJR資本だ。目前に迫った6・9国鉄集会は、これを打ち破り、国鉄闘争を軸に闘う労働運動をよみがえらせる重要な闘いだ。

分社化・転籍との対決に

 JR東日本がたくらむ運転士・車掌の廃止は、鉄道の全業務をJR本体から切り離し、分社化する攻撃の本格的な始まりだ。
 JRは、①運転士と車掌という職名をなくして乗務係にする、②運転士試験や車掌試験も廃止し、乗務員への異動は「任用の基準」で行う、③同一の担務が最長でも10年を超えないように異動または担務変更する、と言う。そして、この施策を強行することによって、「早期から企画部門等の他職に挑戦できる機会が増える」としている。車掌や運転士を10年経験したら、管理職になれというのだ。これは逆に、10年たっても管理職になれなければJRには残れないようにするということでもある。
 JR東日本が昨年7月に打ち出した「「グループ経営ビジョン『変革2027』」では、鉄道のインフラや技術、知見は「JRの外部にある」ものとされている。つまり、鉄道の現業部門は、すべて外注化・分社化するということだ。
 管理職になれない労働者が追いやられる先は、その分社だ。分社への転籍を強いられれば、賃金も労働条件も大幅に切り下げられる。現場の実務はすべて分社の非正規労働者に行わせ、JRは利益だけを吸い上げる構造にすることがたくらまれている。

運転士・車掌は事務職?!

 JR東日本が出した来年度の新規採用方針は、こうした狙いをあからさまに示している。
 採用枠は幹部候補生としての「総合職」と一般職としての「エリア職」に分けられるが、募集要項にはエリア職も「エリア全体のマネジメントに携わることが期待されます」と書かれている。総合職の応募資格は大学院卒、大学卒、高専卒で、エリア職の応募資格は大卒、短大卒、高専卒とされている。一般職でも、高卒は採用しない。これは従来の採用方針とは明らかに違う。管理職を目指さない者は、採用の対象にもならないのだ。
 採用者数は、総合職とエリア職を合わせて1210人とされている。その全員が将来、管理職になれるはずはない。大量に採用した労働者を競い合わせ、蹴落とし合わせて、管理職になれなければ使い捨てにするということだ。
 応募に際して選択する職種は、「事務職(事務)」「事務職(IT)」「技術職(電気)」「技術職(機械)」「技術職(土木)」「技術職(建築)」「技術職(IT)」に分かれている。駅員や車掌、運転士は「事務職(事務)」というくくりの中にある。乗客の命を預かって列車を運行する運転士や車掌の業務が事務仕事とされ、出世のためのステップとしてしか位置づけられていない。
 JRは今年3月のダイヤ改定で、管理職が管理業務をこなしつつ短時間行路に乗務する制度を導入した。今後は、これが例外ではなく基本になるのだ。
 運転士・車掌の廃止が強行されれば、運転職場は出世競争の圧力に絶えずさらされる経験10年未満の運転士と、片手間で運転業務に携わる管理職しかいなくなる。まさに鉄道の安全を根本から破壊する暴挙だ。

「首切り自由」を許さない

 経団連会長の中西宏明(日立製作所会長)は4月、「経済界は終身雇用なんてもう守れないと思っている」と公言した。トヨタ社長の豊田章男は今春闘で「終身雇用を守っていくのは難しい」と恫喝し、年功制賃金を最終的に解体する賃金改悪に向けた交渉に入ることを労組にのませた。
 「解雇自由」と賃金破壊、総非正規職化の攻撃が全産業で本格的に始まっている。そのモデルをJRがつくろうとしているのだ。
 1987年の国鉄分割・民営化が全社会にわたって労働者の権利を破壊したように、今またJRは雇用と賃金体系を破壊し、労働者を非正規職にたたき込む攻撃の先頭に立っている。
 国鉄1047名解雇撤回闘争をめぐり、千葉県労働委員会が動労総連合の申し立てを全否定する却下決定を出してきたのも、この攻撃の一環だ。そこには明らかに国家権力中枢の意思が働いている。
 資本は終身雇用と年功賃金を最終的に解体すると決断した。終身雇用の最終的な解体とは、資本が全面的な「解雇の自由」を手にするということだ。これに立ちはだかってきたのが1047名解雇撤回闘争だ。
 1047名闘争の圧殺はまた、JR東労組さえ解体する攻撃と並び「労組なき社会」にして改憲・戦争に突き進む歴史的な攻撃の一環だ。労働者が団結を維持し、三十数年にわたり解雇撤回闘争を闘いぬいていること自体が、資本と安倍政権に大打撃を与えている。ここに反撃のてこがある。
 国鉄闘争を軸に労働政策の歴史的転換を打ち破ろう。6・9国鉄集会に大結集しよう。
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