知る・考える 用語解説 ベーシックインカム-「所得保障」のペテンで社会保障解体
週刊『前進』02頁(3039号02面06)(2019/05/30)
知る・考える 用語解説
ベーシックインカム-「所得保障」のペテンで社会保障解体
「全ての個人に雇用や収入とは関係なく無条件で一律に決められた最低所得を給付する」という制度。それと引き換えに「最低所得が給付されるのだから」として、これまでの長い闘いの歴史の中でかちとられてきた社会保障制度は一掃され、生活保護、失業手当、基礎年金、児童手当、障害年金などは全廃。資本に義務付けられていた最低賃金制度や解雇規制などの労働者保護法制も廃止される。
給付される金額はごくわずかであり、今の生活保護の水準にも満たない。日本で現行の社会保障費の全額を充てた場合、1人あたり毎月6~7万円になるという試算が出ている。2017~18年にフィンランド政府の行った実験でも支払われた額は7万円程度だった。そのわずかばかりの金を使いきれば、病気になろうと失業しようと「自己責任」として切り捨てられることになる。
実験的に導入したフィンランドやカナダ・モンタリオ州は財政負担が大きいとして早々と打ち切った。日本で18歳以上に月10万円、17歳以下に半額を給付する場合には消費税率を49%に上げる必要があるとする試算もある。
新自由主義の危機が財政破綻(はたん)と貧困を深刻化させる中で、これへの幻想をあおり、公約に掲げる政党も出てきた。しかしあくまで資本主義のもとでの労働者からの搾取・収奪を前提にした制度であり、まやかしでしかない。むしろ労働者使い捨てと大増税のための道具となる。