安倍の言論統制許さない 望月衣塑子記者の講演(要旨)
週刊『前進』02頁(3037号02面02)(2019/05/23)
安倍の言論統制許さない
望月衣塑子記者の講演(要旨)
(写真 望月衣塑子さん)
昨日、丸山穂高衆院議員が「北方領土」に行って「戦争しかないじゃないか」と発言しました。こういう発言が軽はずみに飛び出すことに非常に強い危機感を覚えます。憲法9条には手を付けてはいけないということを、あらためて声を強くして訴えなければならないと思います。
私は2年ほど前から菅義偉官房長官の記者会見に、社会部として参加することになりました。当時、森友・加計疑惑が持ち上がり、また安倍首相に最も近い記者と言われた山口敬之・元TBSワシントン支局長による準強姦疑惑事件の逮捕令状執行取り消しなど「安倍一強」の中でとんでもないことが官邸主導で起きているんじゃないかと強い危機感を持ちました。
ところが、17年8月頃から私や朝日新聞政治部の南彰さん——今の新聞労連の委員長です——が質問のために手を挙げても、司会が「終わります」と言って打ち切るようになりました。これはおかしいと思って調べてみると、どうやら「影の総理」と呼ばれる今井尚哉・総理大臣筆頭秘書官が内閣記者会(記者クラブ)に対して「望月と南の質問をなんとかできないか」と要求したらしいのです。
それ以降、特に私への妨害が強まりました。昨年9月頃から沖縄の新基地建設に関しての質問を重点的にやるようになったんですが、私が質問に立つと司会が「質問は簡潔に!」と言って妨害してくるのです。さらに私が辺野古の埋め立てについて「赤土が広がっています。埋め立てが適法に進んでいるか確認できていない。政府としてどう対応するつもりですか?」と質問すると、その2日後に官邸の広報官から東京新聞編集局長宛てに「抗議文」が送りつけられました。私の質問が「事実に基づかない」「表現が適切ではない」というのです。これと同じ抗議文を内閣記者会にも送って私を記者の中から排除させようとしました。さらには「主観に基づいて聞いており、客観性・中立性に欠ける表現だ」などと、私の表現の自由にまで矛先を向けるようになった。それだけ菅さんは辺野古の問題を聞かれるのが嫌だったんですね。
これに対して新聞労連がただちに抗議声明を出しました。これが多くの新聞やテレビ、ネットで報じられ、全国から官邸への批判の声が押し寄せました。そして3月14日、官邸前での抗議デモが開催されました。この前日、私への妨害行為がぴたっと止まったんです。やはり、政府が「メディアをコントロールするぞ!」と振りかざしてきたその時こそ、私たちは同じ問題意識を持つメディアや市民の方々と連帯して、はっきりと抗議の声を上げる、それが本当に大切だと知りました。
私はこれからも五感をフルに使って、権力と対峙(たいじ)する位置に立って、疑問や疑念が自分の中で消化できたか、声なき多くの人々が幸せになれることは何かを考えていきたいと思います。