「世界経済の変調」は鮮明 中国経済が大減速に突入 EUは独伊がマイナス圏 米帝は利上げ停止へ進む アベノミクスの破綻深刻

週刊『前進』04頁(3024号03面04)(2019/04/01)


「世界経済の変調」は鮮明
 中国経済が大減速に突入
 EUは独伊がマイナス圏
 米帝は利上げ停止へ進む
 アベノミクスの破綻深刻

貿易戦争など要因

 世界経済が明らかに新たな「変調」「減速」の過程に入った。リーマン・ショック以降10年超、大恐慌と長期低成長・大不況化を続けてきた世界経済は、米欧日帝国主義と中国スターリン主義を軸に展開してきたが、昨年秋以降、より一層の後退と減速過程に突入した。
 それを根底で規定している要因は何か。第一に大恐慌によっても解消できない過剰資本・過剰生産力の岩盤である(半導体やスマホなども完全に飽和状態!)。第二に超金融緩和や超低金利・ゼロ金利が生み出した世界的な過剰マネーと過剰債務の山。第三に株式や住宅・不動産などでのリーマン前をも超えるバブルの大膨張。第四に米帝トランプが火をつけた、米中間、米欧日間の貿易戦争の決着点も見えない破綻性。第五にイギリスの「合意なきEU(欧州連合)離脱」の切迫をめぐる英政権・議会とEU自身の大混迷。それがまた危機を加速している。

米で長短金利逆転

 世界経済を個別的に見ても、何よりも「世界の加工工場」であり「大消費地」となってきた中国経済が、米中貿易戦争で生産も消費も大減速している。特に消費の2本柱である自動車は15%減、携帯電話は12%減と、前年割れ。雇用も2月の都市部の失業率が5・3%と高率になっている。
 こうした中で3月全人代では成長目標が6・0〜6・5%に引き下げられ、債務削減などの「構造改革」は棚上げで減税など2兆元(約33兆円)もの景気対策や、地方政府によるインフラ投資など「背水」の政策が打ち出された。
 中国と並びこの間の景気低迷が激しいのがEUだ。特に中軸国のドイツとイタリアは、昨秋以降、中国の減速などの直撃を受け、実質成長率が0%からマイナス圏に突入。ECB(欧州中央銀行)の主要政策金利は0%、銀行がECBに余剰資金を預ける金利はマイナス化。ユーロ圏のコアの消費者物価指数も1%と低迷している。
 米帝経済は「一人勝ち」などと称されてきたが、昨秋以降、年末にかけてダウ工業株30種平均は3500㌦も急落。あわてたFRB(米連邦準備制度理事会)が利上げ停止を態度表明し、19年に入りやや持ち直した。しかしトランプの大規模減税の反動も不可避で、財政危機と米国債の債務不履行(デフォルト)も現実化している。貿易戦争の「逆襲」もあり、19年1〜3月期の実質成長率は0%台に急減速するとみられ、危機的だ。
 3月22日には米債券市場で10年物と3カ月物の「長短金利逆転」現象(逆イールド)が起き、米株価は460㌦も急落。逆イールドは米ITバブル崩壊やリーマン・ショックの前にも起きており、経済破綻や「不況の前兆」を示すもので、世界経済危機は超深刻だ。

日本も「後退局面」

 こうした中で日帝経済は、昨年10月あたりを「山」として、もともと1%未満の超低成長がさらに悪化し「景気後退局面」に突入した。ところが安倍政権は「アベノミクス」の大破綻をごまかすために、今年1月で「景気拡大が戦後最長を更新」などと発表した。
 だが内閣府は1月の景気動向指数判断で景気の後退を示す「下方への局面変化」と明記し、内閣府と財務省は1〜3月期の大企業製造業の景況判断指数(BSI)がマイナス7・3に悪化したと公表した。実際に今年1月の統計では、鉱工業生産指数が3カ月連続、輸出額が2カ月連続で低下し、民間設備投資の先行指標でもある機械受注額(船舶と電力は除く)は、前月比5・4%の減少となり、3カ月連続でマイナスとなっている。
 日帝経済はとりわけ中国経済の大減速に規定され、特に2月の工作機械受注額は何よりも中国向けが前年同月比50・4%減、12カ月連続で前年割れとなった。全体の受注額も2月は29・3%減で5カ月連続のマイナス。1〜3月期は鉱工業生産も大幅減となる見込みで、内需、外需(輸出)ともに一層の経済減速は不可避である。にもかかわらず安倍や経済財政・再生相の茂木は、「輸出や生産の一部に弱さも見られるが、景気は緩やかに回復している」などと公表し、露骨に居直っている。

「時給」が唯一減少

 こうした中で日本の労働者の「時給」が、1997年以降の20年間で9%も下落し、主要国で唯一マイナスであることが、最近のOECD(経済協力開発機構)のデータで明らかとなった。英87%、米76%、仏66%、独55%、韓国にいたっては150%超の増大だ。さらには日本の平均年収はアメリカの7割弱でしかない。
 これは4割もの非正規職化や過酷な長時間労働のもと、「国際競争力の強化」を叫びつつ大企業は空前の高収益をあげ、莫大(ばくだい)な内部留保や現預金を蓄える一方で、労働者には徹底的な低賃金での搾取を強制してきた結果だ。逆に「株主還元」はこの10年で2倍となっている。
 ところが今年の春闘は、安倍と中西経団連が結託し「官製春闘」の演出すらとらずに、資本の側はトヨタや日立が先頭に立って、昨年をも下回る超低額ベアを強制、統一交渉・統一要求・統一回答や終身雇用・年功賃金の最後的な解体をも狙った攻撃に出てきている。
 しかもこの3月から6月にかけて、10月の消費増税に先駆け、幅広い食品や飲料品の値上げが目白押しだ。これまでの価格は変わらないが量を減らしてきた「隠れ値上げ」が公然たる値上げとなり、生活を直撃する。まさに労働者は団結し闘わないと生きていけない。
 連合、全労連をのりこえ、19春闘と杉並選挙決戦、改憲阻止決戦を闘おう。
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