「終電延長2時過ぎ」許せるか 東交大会で「五輪反対!」の声
週刊『前進』04頁(3022号02面01)(2019/03/25)
「終電延長2時過ぎ」許せるか
東交大会で「五輪反対!」の声
3月14日、東交(東京交通労組、6400人)の定期大会で、「東京五輪時に終電延長を2時過ぎまで行う」という本部答弁に怒りが噴出した。現場は聞いていない。駅は定員割れしている。運転士の養成には1年かかる。要員養成が追いつかない。「こうなったら五輪反対でメーデーに臨もう」と声が上がった。
ほぼ徹夜で5時には始発
東京都と大会組織委員会は2020年東京五輪時の終電を繰り下げることでJR、私鉄各社(19社)と合意した。JR山手線、東京メトロ、都営地下鉄は午前2時過ぎまで、その他は午前1〜2時ごろまでの運行を検討しているという。東京五輪は午後11時以降に競技が終わる会場が八つある。終電が現行の午前0時30分頃から2時過ぎになったら現場はどうなるか。
いつもよりはるかに混雑する客を降ろし終えた後、運転士・車掌は車庫まで電車を移動させる。仮眠につくのはそれからだ。泊まり勤務の仮眠時間は削られ、ほぼ徹夜に近い状態で5時始発の準備をすることになる。駅係員や清掃職員も同じだ。JRや私鉄の始発は4時台である。その後は通勤・通学に加えて五輪関連の乗降客数が膨大になり、通常時以上のすさまじいラッシュが待っている。それも一日限りではない。五輪の始まる真夏の7月24日から8月9日まで、17日にわたって延々と続く。
現状でも終電後の保守点検作業は実質2時間しかない。それが1時間半も削られたら全くできなくなる。さらに故障・事故時の対応が加わる。当局の「経営計画2019」は「保守点検は大会期間外に行う」とするが全くの空論だ。
終電延長で増える全業務は、補充要員なしで行わざるをえなくなる。地下鉄運転士は養成するだけでも最低1年かかる。乗員・乗客の命と安全の問題に直結する、列車運行のために必要な技術を持ったさまざまな職種の労働者を、五輪までの短期間で増やすことなどできはしない。
乗務員・駅係員をはじめ列車運行に関わる全労働者が大変な長時間労働・過重労働を強いられる。疲れ果てて健康被害や労災事故が多発することは不可避となる。安全の崩壊だ。
それは大混雑が予想される五輪会場向けバスの大幅増便についても同じだ。運転、保守点検も含め五輪時だけの臨時雇いではすまない。そして五輪後に労働者を使い捨てて解雇することなどありえない。
東交大会議案は「乗車人員の増加に見合った駅係員の定数増は行われない上、……特に運転士の養成削減は2020年の要員計画まで影響を与える重大な事項であり、局の要員(車掌・運転士)養成計画が破綻しているといわざるをえない」と述べている。
駅外注で養成計画が破綻
都営地下鉄ではJR、私鉄と同様、駅係員を経て車掌そして運転士になる。これが養成のコースだ。ところが106駅中59駅が外郭団体の東京都営交通協力会に委託されている。この協力会の駅係員が車掌・運転士になる道は閉ざされている。駅外注化の進行で、車掌・運転士の養成は完全に破綻している。JRと同じことが起こっている。即刻直営に戻し全員を正規職に
それどころか直営駅の係員自体が不足している。車掌・運転士にする人数を削り係員を確保しても19年度の定員割れが避けられない八方ふさがりの状況だ。駅施設、車両・機械設備、電気・通信、工事は、都の外郭団体である東京交通サービス株式会社に委託され、孫請けの労働者が業務を担っている。あらゆる業務の外注化が進み、その矛盾が現場に押し付けられている。すべては人員削減と外注化・非正規職化がもたらした結果だ。
直ちに全駅を直営に戻し、人員定数の大幅増と全労働者を正規職にすること抜きに問題の解決はない。全労働者の怒りを結集して闘いぬこう。
会計年度職員阻止は可能
東交大会では会計年度任用職員制度に対する質問が多数出された。会計年度職員制度は「処遇改善」などではない。正規職を含む全職員の非正規職化と権利一掃の攻撃だ。そのことを通したスト根絶・組合破壊である。民営化も一気に進む。「労働組合のない、民営化と非正規職だけの社会」にしてはならない。20年4月の導入準備が全国で遅れている。条例化が進まず〈毎年解雇・選別・試用1カ月〉という最大問題も定まっていない。「募集・能力実証、任用」が確定したのは0・8%のみ。いかに現場の闘いと抵抗が激しいかだ。沖縄をはじめ条例化予定が「空欄」の県本部が多い。都内や地方で「制度導入しない」と決めた自治体も出ている。
憲法の地方自治の原則ゆえに国は強制できない。すべては力関係だ。新たに組合に結集して闘う機運が生まれている。ストライキの声も上がり出した。攻撃の粉砕は全く可能である。
JRは最先端で全面外注化と出向・転籍、非正規職化を進めている。長時間行路化による長時間労働を強いようとしている。組合破壊が一体で進行している。