汚染土の再利用を許すな 「放射能安全」神話で被曝強制 住民の怒りの抗議行動広がる
週刊『前進』04頁(3016号03面05)(2019/03/04)
汚染土の再利用を許すな
「放射能安全」神話で被曝強制
住民の怒りの抗議行動広がる
8年前の3・11福島原発事故によって福島県を中心に膨大な量の放射能が降り注いだ。その「除染」により生じた、放射能が付着した土などを入れたフレコンバッグが各地の仮置き場に山のように積み上げられている。安倍政権はそれらの1400万立方㍍の放射能汚染土のほとんどを「公共事業への再生利用」と称し、福島をはじめ全国にばらまこうとたくらんでいる。断じて許せない。
除染した場所に汚染土戻す暴挙
放射能汚染土壌などは連日、仮置き場から中間貯蔵施設に運び込まれている。これらを国は30年以内に福島県外に搬出し最終処分すると公言していた。だが、その後、環境省は放射性廃棄物の再生利用のセシウム濃度基準を従来の「1㌔グラム当たり100ベクレル」から80倍も緩め、「1㌔グラム当たり8000ベクレル」以下の放射能汚染土を「道路・鉄道、防潮堤や防災林などの公共事業で再生利用する」方針を打ち出した。そしてそのための「実証事業」を福島県の南相馬市や二本松市、飯舘村で始めた。
そのひとつとして南相馬市小高区耳谷(みみがい)の仮置き場で汚染土の盛土利用実証試験を行ってきた。そして、わずか10カ月で道路等の構造基盤の部材に利用できると結論づけた。だが、災害による覆土の陥没・崩壊、遮水シートの破損などで放射能の露出・流出は避けられない。
にもかかわらず、環境省は今度は小高区の仮置き場の汚染土を同区羽倉(はのくら)の常磐自動車道の4車線拡幅工事の盛土として実際に使う計画を実行し始めた。「除染」した場所に放射能汚染物質を戻す。この言語道断の計画に、地元の住民は激しい怒りを表明し、環境省の説明会を断固拒否して絶対反対の署名運動を開始した。「いったん受け入れたら永久に残される恐れがある」「羽倉で安全を確かめたとされれば、他の地域にも広がる」と見抜き、全国の労働者人民に警鐘を鳴らし、汚染土利用絶対反対で闘っている。
福島県二本松市の原セ才木(はらせさいき)地区でも、未舗装の市道を掘り起こして近隣の仮置き場の放射能汚染土を埋め立て、覆土・舗装する試験が計画されていた。汚染土が自分たちの居住地の市道に利用されることを知った住民は地区ぐるみの抗議行動を展開して計画を阻止した。
道路や鉄道、農地や公園にも使用
「放射能汚染土の利用」対象は、道路・鉄道、防潮堤・防災林そして農地・公園・森林にまで際限なくエスカレートしつつある。なぜ公共事業にわざわざ放射能が付着した土を使う必要があるのか。3・11福島原発事故と放射能のばらまき、さらに今日の核汚染土利用(全国への大がかりな放射能拡散・投棄)の無法極まる行為は、労働者住民を被曝させる核犯罪以外のなにものでもない。
IAEA(国際原子力機関)は2017年に環境省と「福島第一原発事故後の環境回復に関する専門家会合」を開催し、レポートを公表した。南相馬市の放射能汚染土の盛土実験施設開設の助言を自画自賛し、汚染廃棄物のリサイクルは「認められるべきのみならず、推奨されるべき」と言い放っている。
放射線防護の一番の基本は「被曝を可能な限り少なくすること」「放射線源をなくすこと」である。安倍政権・環境省とIAEAが共謀し行おうとしていることは、これとは真逆の、放射能の歯止めなき拡散・投棄にほかならない。それは再利用関連の労働者に被曝労働を、周辺住民に被曝のリスクをもたらす。
原発推進・核武装狙う安倍倒そう
「再利用」にかけた日本帝国主義の究極の目的は、3・11のような大規模な原発事故が起きても放射能汚染物質は「除染と再利用」で処分できると言いなし、破産した「原発安全」神話に代えて「放射能安全」神話で労働者人民に被曝を強制することである。そうして原発・核政策をあくまで推進し、核戦争まで容認させようということだ。だが、汚染土の再利用政策は住民の怒りの爆発でぐらぐらとなり、日帝にとって大破綻点と化している。放射能汚染水の海洋投棄も漁民を先頭にした反対の闘いで阻止し、日帝を追い込んでいる。福島圧殺攻撃を打ち破り、福島を先頭に労働者・農民・漁民・住民の大反撃が始まっている。
動労水戸の常磐線全線開通反対・被曝労働拒否の闘いと一体で、東海第二原発の再稼働を阻もう。3・11反原発福島行動に全国から結集しよう。
(河東耕二)