五輪経費が3兆円に膨張 民衆生活破壊し大資本潤す
週刊『前進』02頁(3015号02面02)(2019/02/28)
五輪経費が3兆円に膨張
民衆生活破壊し大資本潤す
電通など大資本に巨額の利益が
2020年東京オリンピックの経費が膨れ上がっている。現時点で公表されているだけで、国、東京都、大会組織委員会を合わせて総経費は2兆8千億円に上る。国が18年度以降に負担する間接費用を合わせれば3兆円規模になる。当初予定していた7千億円からすでに4倍以上だ。こんなでたらめが許されるのか。大会の直接経費は1兆3500億円で、うち都が6千億円、国が1500億円を公費で負担する。昨年12月に組織委が公表した五輪経費では10項目の内訳で、それぞれに50億円単位の予算が示されているのみである。オリンピックはまさに巨額の税金を大資本がほしいままにする絶好の口実なのである。
東京都知事・小池百合子は2月16日の会見で、開閉会式の予算が91億円から130億円に増額されることに伴う都の負担を問われ、「都民の皆さんの納得が得られるような内容に」と述べ、負担を否定しなかった。自治体労働者にはコスト削減を振りかざして民営化・外注化・非正規雇用化、労働条件の切り下げ、大幅賃下げを狙い、社会保障や教育など人民の生きる基盤と社会を崩壊させている。その一方で、ゼネコンなどの大資本には途方もない額の税金が差し出されているのである。
これほどの税金を投入して行うオリンピックは、労働者人民のためのものでは全くない。イベントや宣伝を仕切る電通やコカ・コーラ、パナソニック、サムスン電子など、世界中で労働者人民を搾取するスポンサー企業やテレビ放映権を独占する巨大資本の利益のために労働者人民を犠牲にする「祭典」である。
労働改悪と民営化推進のテコに
さらに、大会期間中の交通規制問題に交運労働者をはじめ怒りが噴き出している。組織委と都は「首都圏の幹線道路の通行量を現行の平日より15%減らす」として、首都高速道路の料金を値上げする制度などの導入を検討している。首都高からの一般車両の締め出しにより、一般道の混雑が激化し労働者人民の生活を破壊する。小池は渋滞対策をも口実にテレワーク(在宅勤務)を拡大するよう号令している。「ロンドン大会(12年)のレガシーの一つがテレワーク」と述べ、五輪を機に労働時間規制そのものを撤廃しようとしている。テレワークや個人請負などを拡大し、労働者の権利も雇用も破壊する労働改悪を広げることを狙う。
とくに都営バス・地下鉄の24時間化など極限的な労働強化、安全破壊が狙われている。小池は「自動運転については、国としても、また東京都としても取り上げていく、挑戦する分野」と述べ、バスなどに自動運転を導入する狙いをあらわにした。山手線無人運転の試験を始めたJR東とともに、安全破壊の自動運転を進めようとしている。「自治体戦略2040構想」の最先頭で、AI・ロボット化による職員半減、首切り・非正規職化を推進しようとしているのである。
大会のために建設される競技施設は、その後の改修費、維持運営費で赤字が見込まれる。都は新設6施設のうち5施設について委託業者を決定し、有明アリーナや国の新国立競技場は運営権を民間売却する。都営地下鉄、都立病院、公立学校、卸売市場をはじめ自治体丸ごと民営化への突破口に位置づけている。
労働組合の力で東京五輪粉砕を
真夏の殺人的酷暑の中での開催は、資本の利益が選手や観客の命よりも優先されていることを示している。東京招致のための票を2億3千万円の賄賂で買い取った問題、桜田義孝・五輪相による水泳・池江璃花子さんの闘病に対する許せない暴言をも契機に、大資本の利益と国威発揚を目的とする腐りきった五輪への怒りが高まっている。安倍はこの五輪をもてこに20年新憲法施行を狙う。だが、怒りの反撃が労働組合を軸に始まっている。常磐線全線開通で「原発事故は終わった」とキャンペーンし、福島県民に汚染地帯への帰還・被曝を強制する攻撃に反対し、動労水戸が職場から立ち上がっている。五輪の輸送拠点のために築地市場をつぶし、土壌汚染と耐震偽装の豊洲に移転し市場の民営化をも狙う小池の攻撃に絶対反対の闘いが不屈に闘われている。
今、都の労働組合が立つことが決定的だ。あらゆる水路から怒りを結集し、東京オリンピックを粉砕しよう。