危機続く福島第一原発 核燃料の取り出しは大破綻

週刊『前進』02頁(3013号02面03)(2019/02/21)


危機続く福島第一原発
 核燃料の取り出しは大破綻

(写真 使用済燃料プールからの核燃料取り出しの展望が立たない3号機)

 3・11大震災から8年を迎えようとしている福島第一原発の現状は依然として危機的な状態が続いている。汚染水処理が破綻し、核燃料デブリの取り出しのめども立っていない。使用済燃料プールからの核燃料の取り出しもトラブル続出で、破綻状態だ。3・11反原発福島行動の大爆発をかちとろう。

危険は何も去っていない

 福島第一原発は除染等が進み、原子炉建屋周辺を除いては「防護服が必要なくなった」だとか、2月13日には2号機で「初めてデブリを持ち上げた」などキャンペーンしているが、実態はまったく異なる。
 政府の地震調査研究推進本部は2017年12月、北海道沖の太平洋でマグニチュード8・8以上の「超巨大地震」が30年以内に最大40%の確率で起きるとの見解を発表した。これを受けて東京電力は、福島第一原発の敷地に最大10㍍以上の津波が押し寄せると試算した。建屋内に大量の高濃度汚染水がいまだに残っている現状では、津波が建屋内に流入し、高濃度汚染水が再度大量に海洋に流れ出すことは避けられない。
 にもかかわらず東電は防潮堤の建設を放棄し、海岸線にそって土嚢(どのう)を積んでいるだけなのだ。
 さらに危険なのは、1から3号機の原子炉建屋上部の使用済燃料プールから核燃料の取り出しが難航し、めどが立たないことだ。
 水素爆発した4号機には1535本もの核燃料が存在した。爆発でぼろぼろになった建屋が崩壊すれば使用済み核燃料が散乱し、溶け出すことで大量の放射性物質がまき散らされ、首都圏が壊滅しかねない事態が危惧(きぐ)された。この4号機の使用済燃料プールからの核燃料の取り出しは最優先課題として2014年12月22日にすべて移送作業が終了した。
 しかし他は事故当時のままで1号機には392体、2号機には615体、3号機には566体の核燃料がいまだ残っているのだ。
 東電は3号機の使用済燃料プールからの核燃料の取り出しを昨年11月から開始する予定で一連の工事を進めてきた。工事が完了したというので、昨年の8月8日に原子力規制委員会による作業開始の許可を得るための使用前検査を実施したのだが、その最中に検査官の眼前で異常を示す警報が鳴り出し、検査の中断を余儀なくされるという事態が発生した。
 それ以前にも、昨年の3月には核燃料取り出し後に格納コンテナを運搬するクレーンの電機部品が試運転中に故障し、部品を取り替えても再度故障が発生することさえ起こった。この原因は機器の動作電圧の設定ミスというきわめて初歩的な誤りだったのだが、その発見に数カ月を要するというありさまだった。
 このように核燃料取り出しをめぐってトラブルが続出し「底なし」の状況だ。たまりかねた福島県は10月19日に東電幹部を県庁に呼び出し、「本当に大丈夫かと思わざるを得ない」と懸念を表明するほどだ。
 一連の事態を検討すると機器を調達・設置した東芝と監督者の東電の問題であることが分かる。海外のメーカーに発注したが、受け取った時点で電圧設定が間違っていたのを見抜けず、福島現地に設置する前にコネクター内部で断線寸前だった。こんないい加減な機器で被曝労働を強制されてたまるか。原発労働者(労働組合)の手で廃炉を実現する以外にない。
 その後もトラブルは止まらず、11月11日には、燃料取扱機が動作確認中に自動停止し、12日に復旧するまで約22時間、模擬燃料が水中でつるされたままの状態になるありさまだ。
 このような事態の中、3号機からの燃料取り出しの開始時期をいまだに決められない状態だ。

汚染水の海洋放出許すな

 福島第一原発の事故対策にとって、汚染水問題は周知のように第一級の課題だ。原子炉冷却のための「打ち水」は引き続き必要だが、それが地震でひび割れた建屋に流入する地下水と混じり合い高濃度汚染水を日々発生させている。その汚染水を除去装置にかけても取り除けない放射性物質・トリチウム(3重水素)を大量に含む汚染水がタンクに蓄えられており、現在汚染水タンクには110万㌧あまりが貯められている。福島第一原発の敷地は汚染水タンクで埋め尽くされている。
 たまりかねた政府・東京電力と、原子力規制委員会は、更田(ふけた)豊志・規制委委員長を先頭に「汚染水を水で薄めて基準以下にすれば海洋放出は可能」と言い放ち、沿岸漁民に壊滅的打撃を与えようとしている。絶対に許せない。
 だがこのような攻撃に対して試験操業を行っている福島の漁民からの根底的な怒りの決起がたたきつけられた。昨年8月30日と31日に福島県で、31日に東京で開かれた公聴会は、漁民を先頭に経産省の事務局や、有識者会議の委員を問い詰める激しい怒りと弾劾の場となった。あまりの激しい怒りの前に経産省も海洋放出を強行することができない事態に追い込まれた。
 汚染水の海洋放出の最大の問題はトリチウムがきわめて危険な放射性物質だということだ。政府・規制委はトリチウム水は化学的には単なる水で体内に取り込まれてもすぐに排出され、毒性は弱いと言ってきたがまったくのウソだ。
 沸騰水型原子炉と違って加圧水型はトリチウムの放出量が1桁多い。加圧水型の北海道電力の泊(とまり)原発付近ではがんの死亡率が高く、九州電力の玄海原発直近では白血病死が多発している。青森県六ケ所村の再処理工場から大量のトリチウムが放出されているが、国立がん研究センターによると、2014年の都道府県別のがん死亡率(人口10万人あたり何人ががんで死亡したか)で最も高かったのは青森県で、2004年から14年連続でのワーストとなっている。
 桁違いのトリチウムを放出しているフランスのラアーグ、イギリスのセラフィールドの両再処理施設周辺ではがんが増加しており、やはりトリチウム放出が多い重水炉(CANDU炉)を採用しているカナダではトリチウム被害が社会問題になっている。
 福島第一原発事故の収束作業にあたる原発労働者と連帯し、被曝労働を拒否して闘う動労水戸のような組合をつくりだそう。福島の怒りを我がものとして3・11反原発福島行動に総決起しよう。

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