「勤労統計」でデータ偽造 安倍政権による国家的詐欺
週刊『前進』04頁(3004号03面02)(2019/01/21)
「勤労統計」でデータ偽造
安倍政権による国家的詐欺
厚生労働省が行う毎月勤労統計の作成に当たり、不正が行われ続けてきたことが発覚した。毎月勤労統計は、賃金や労働時間の動きを示す基幹統計だ。そのデータは雇用保険や労災保険の給付額の算定基準になるし、人事院や自治体の人事委員会の給与勧告にも使われる。その統計が不正に作成されていたことは、まさに国家による詐欺にほかならない。
毎月勤労統計は、5人以上の労働者がいる事業所が調査対象で、労働者が500人以上の大規模事業所についてはすべてを対象に調査しなければならないと定められている。しかし実際には、2004年から15年にわたり全数調査は行われていなかった。
東京都の場合、調査対象となるはずの1400以上の事業所のうち、実際に調査が行われたのはその3分の1にすぎなかった。また、遅くとも1996年以降、調査対象として公表された全国の事業所数の約9割しか実際の調査がなされなかったという事実も判明した。
しかも、厚労省内には、全数調査をしなくてもいいというマニュアルが引き継がれていた。不正は組織的に行われたのだ。
保険給付も大幅に減らされた!
昨年1月調査分から厚労省は、全数調査が行われたかのように装うため、数値を補正処理する手法をひそかに導入した。そのため、毎月勤労統計が示す賃金水準は突然上がり、以来この統計は、「アベノミクスの破綻をごまかすために操作されている」という疑いの目で見られてきた。だが、偽造はさらに前から行われていた。相対的に賃金が高い大規模事業所の大半が調査対象から外れたことにより、統計は長年にわたり実際より低い賃金水準を示し続けてきた。そのため、それを基礎に算定される雇用保険や労災保険の給付額も不当に減額された。厚労省の発表でも、給付が減らされたのは延べ1973万人で、総額は537億5千万円に上る。資本によって解雇され、あるいは健康や生命を奪われた労働者から、これだけの額がかすめとられたのだ。
過労死させられた労働者の遺族への年金も減らされている。全国過労死を考える家族の会は、「国の基準で労災と認められるだけでもハードルが高いのに、ようやく認定されても間違った補償をされていた」と怒りの声を上げている。
労働者に低賃金を強いる道具に
昨年の「働き方改革」法強行の過程で、厚労省は労働時間に関する統計を偽造し、「裁量労働制で働く労働者のほうが一般の労働者より労働時間が短い」というでたらめな結論を出していたことが明るみに出た。入管法改悪をめぐっては技能実習生に関する法務省の調査が改ざんされ、中央省庁や全国の自治体で障害者雇用の数が偽装されていたことも大問題になった。それだけではない。実際よりも低い賃金統計データは、非正規労働者をはじめ全労働者に低賃金を強いる道具として使われてきた。
19春闘を前に経団連は、「賃金は個人ごとに異なって当然」として、賃金水準を交渉課題にすること自体を抑え込もうとしている。これを打破し、「大幅一律賃上げ獲得・生きていける賃金をよこせ」を掲げて19春闘を闘おう。