全学連新年座談会 全国学生の決起で改憲阻止へ 京大 立て看板規制粉砕を
全学連新年座談会
全国学生の決起で改憲阻止へ
京大 立て看板規制粉砕を
全学連(全日本学生自治会総連合)は2018年、京都大学において立て看板規制反対を焦点に大衆的かつ原則的な学生運動をつくり上げ、その地平で高原恭平委員長(東京大学)--加藤一樹書記長(京都大学)を軸とする新執行体制を樹立した。社会的にも注目を浴びる新生全学連の若手のメンバーから、新年の抱負と運動の課題を語ってもらった。(編集局)
座談会出席者 (敬称略)
高原恭平(委員長、東京大学教養学部)
加藤一樹(書記長、京都大学法学部)
赤嶺知晃(副委員長、沖縄大学法経学部)
太田蒼真(広島大学総合科学部)
司会:斎藤いくま(前委員長)
新執行部をうちたてた
斎藤 まず去年を振り返ってどういう年でしたか?
高原 年頭の頃は自民党が国会に改憲案を提出するんじゃないかと言われていましたし、朝鮮戦争も迫っていましたけど、一気に労働者の側が押していった。安倍は改憲発議をできなかった。
赤嶺 沖縄の情勢は一変しました。県知事選の前に、8月11日に辺野古新基地建設反対の県民大会があり、主催者の予想を大きく上回る7万人が集まった。絶対あきらめないと県民が立ち上がって、その後、県知事選で過去最高の票数で玉城デニー氏が勝つと、地元紙ですら予想しきれないような、若者や女性の行動が始まっている。
斎藤 去年から全学連として活動するようになったメンバーがここに2人いますけど、全学連とつながるきっかけは?
加藤 高校生の頃から不労所得を廃止させようと思っていて、その時は官僚かブルジョア政治家になって変えていけるだろうと思っていた。いわゆる東大コースですよね。東大に落ちたものの京大に受かって、1カ月はのほほんと暮らしていたんですが、5月から立て看板規制が始まった。その時はまだ上が決めたことは守らなきゃだめでしょと考えていたんですけど、京都市の景観条例で規制すると言いながら大学構内の看板まで全部撤去されて、これはおかしいと、立て看板規制に反対していた同学会に連絡をとって関わるようになりました。そこからはぐいぐいと、世の中の仕組みを変えるには現場から実践で変えていくしかないと。
太田 私は広島大学で1年生の頃から広大自治会とかかわりをもっていて、8・6ヒロシマと9月の全学連大会をへて活動するようになりました。
斎藤 9月には世間を騒がせる全学連新執行部が登場しました。全学連として活動してきた中で良かったと感じたことは?
加藤 いろんな場所で闘っている人と会えることです。根本的な目標は一致するんですけど、大学それぞれで焦点になっている争いも違う。いろんな大学で闘いが起きていることを実感できるのは全学連という組織以外ない。
高原 自分はもともと東大教養学部自治会でやってきたので、その時は考え方がどうしても東大の中だけになってしまう。全学連に入って、いま東大で起きていることを全国的な視野で見て、他の大学と比較する中で見ることができてよかったと思います。あと、いろんな人がいるので、それを一つの運動にしていくというのはそうとう困難で、人間として成長していけると思いますね。
太田 もともと自分は部落問題中心にやってきた。改憲攻撃とか資本主義の矛盾とかが一体となって差別になっているんだと位置づいたのは最近のことです。それまでは個々は具体的な現象があるだけだと思っていたので、そういうのを気づかせてくれたのが全学連でしたね。
弾圧を許さず闘う
斎藤 昨年の11月から12月にかけて敵の弾圧が一つレベルアップしてきた。そのあたりをどう感じていますか?
高原 自分は逮捕されても処分されても闘うと思っています。けれど、多くの学生にとってはそうではない。その差をどうやって乗り越えていくかというのは難しいですよね。そのあたりは法大闘争にしっかり学んで、京大では絶対これ以上の弾圧を許さずに闘っていくことを決意しています。
加藤 活動家の中では、あの弾圧というのは京大当局側が焦っていないと出てこないととらえている。逮捕されてる3学生を見ると、当局が本気で運動の継承性をつぶしにきていることははっきりしている。3学生を奪還するためにも、弾圧すればするほど運動が広がって新たな人が立ち上がっていくというふうに運動をつくっていきたい。
仲間を求める運動
斎藤 今の学生運動の課題について、昨年末の拡大中央執行委員会で「組織すること」の問題意識が口々に話されました。そのために僕らがどう変わらなきゃいけないと思いますか?
高原 自分の知り合いにも、全学連が名実ともに実態のともなった全学連になるべきだと言う人は多くて、その期待にしっかり応えていきたい。それはやっぱり各大学で学生自治会をつくっていくことです。仲間を求める運動という目的意識を持って戦略的にやっていきたい。
加藤 これから逮捕者や処分者が増える可能性はあると思うんですけど、「誰々が奪われたらもうこれはできない」みたいな個人への依存はやめていかなきゃいけない。今回は中心に闘っていた人が逮捕されて、その後を俺が担うんだと言って出てきた人がかなりの数いる。そういう決起をつくっていくこと、それを広めていくことが課題になってくるんじゃないかなと。
太田 個人的な総括として、昨年は運動に参加してすぐっていうのもあってついて行くのが精いっぱいだった。みんなで団結し、みんなを主人公にする運動をやるんなら、まず自分が主人公にならないといけないと思っています。
安倍倒し戦争とめよう
斎藤 今年どういう運動をつくっていこうと思っているのか「夢」を語ってもらえたら。
高原 改憲阻止決戦について言えば、戦後日本の70年間の歴史の中で初めてここまで具体的に改憲があがってきた。安倍は2020年新憲法施行を言い続けている。今の情勢で改憲とは戦争への突入と同じです。安倍打倒へわれわれの側は絶対に武装解除してはいけない。
加藤 京大の立て看板規制も辺野古への土砂投入も、安倍の改憲攻撃と一体でかけられている攻撃です。弾圧されているすべての人が団結して、現状をひっくり返していくことが必要です。それをつくりだせるかが問われている2019年だと、そういうスケールで展望したい。
高原 新自由主義がもたらした社会や教育の崩壊、あるいは不当な弾圧----これに怒って立ち上がるのではなく絶望してしまう人が多い。新自由主義には未来はないけれども私たちの運動には未来があるんだということをしっかり提示していくことがない限り、決起ではなく絶望する人も増えてしまう。
沖縄新基地阻止を
赤嶺 辺野古の土砂投入強行もそういう狙いはあるので、それに打ち勝つようなものをつくりたいと思います。辺野古で昨年12月14日に土砂投入工事があって、2月24日には県民投票が予定されている。これから本格的に沖縄の人たちの怒りとか政治的意思の高揚が始まっていく。僕らは12月9日に「改憲・戦争阻止!大行進 沖縄」というのをつくった。そこに米軍ヘリの部品が落下した緑ケ丘保育園のお母さんたちも参加してくれて、高教組の人やメディアの方も来てくれた。ゼネストに向けて、大衆に支持され、大衆と一緒にやっていく陣形がつくれたと思っている。ここから広げていく闘いをしていきたい。
高原 9月の大会以降、京大のような闘いを各地に広げようと取り組んで、東京は前進したと思います。これまで学生運動とは無縁だったような大学からも芽が出ている。あとは、この間の東京で出てきている活動家を見ると、みんな大物だなと思います。夢が大きくて、しゃべりもうまい。主流派っぽいというか、周りに大きく影響を与えそうな人格が多い。これまでだったらブルジョアジーの側に行ってただろうっていう学生がこっち側にくるというのは、新自由主義の崩壊、資本主義がもう終わりだって感じます。
加藤 東大生が委員長をやってるってことが、そういうことですよね。
赤嶺 8月11日の県民大会には沖縄大学以外の大学の人も来ていて、沖大自治会支持っていう人が話しかけてきたんです。今年は、自分の存在を小さく見ずに、ゼネストに向けて全沖縄の学生を獲得していくために手広く構えて、運動なり学習会を積み上げていきたい。
太田 僕が広島大学に初めて来たとき、「ヒロシマ」の大学なんだろうなと思って入ってみたら、入学式で「君が代」を流すし、なんなんだこの大学はっていう怒りがあった。原発御用学者もいて、核兵器に対する反省っていうのが消えているというより、新自由主義に塗りつぶされているんだと思います。そういう中で広島の運動が盛り上がって、民衆の運動の力で戦争も原爆も二度と繰り返しちゃいけない、ヒロシマ・ナガサキを忘れないってことを示していきたいと思います。
加藤 京大は4月までに吉田寮をつぶそうというのが当局の動きです。自治会や学生側が当局に認められた中でではなく、主体的に運動をつくって寮を維持していけるかどうかが焦点になっている。
高原 京大で言えば、立て看板の規制が去年5月に起こって、今年の4月に入学してくる学生は立て看板規制がすでに施行されている中で入学する最初の世代です。そういう意味では学生―キャンパスの常識が変わっていく。立て看板も吉田寮もないのが当たり前、処分や警察導入の乱発も当たり前っていう学生もどんどん増えていく。大学当局はそれを意識してやっているわけです。
加藤 京大生自身が単純に「なくなってしまうのは寂しいな」くらいでやっていたら、新入生はそれを知らないわけだから別に寂しいとも思わないで終わる。吉田寮だけでなくて、全体の自治空間、様々な学生の自由、学園の支配権を誰が握るのかの闘いが、今年4月までの決戦でかなり決まってくると思う。抗議するのは当たり前という空気をつくるような闘いが必要なんじゃないかと思います。
高原 今年は5月1日の天皇代替わりが大きいと思います。メーデーにぶつけてきてるんですけど、リベラルって言われる人や日本共産党も含めて天皇制には賛成という状況。私たちはメーデーを、闘う労働組合や学生の大結集でぶちぬいて、天皇は民衆の敵なんだとどんどんアピールしていきたい。もう一つはオリンピックですよね。来年の東京オリンピックに向けて準備が本格化すると思うんですが、既成潮流はどこもオリンピック賛成で、日本共産党もオリンピック返上とは絶対言わない。そういう中で4月の杉並区議選にはオリンピック返上を訴えるほらぐちともこさんが立候補する。ほらぐちさんの当選と一体で2020年東京オリンピック粉砕の闘いも強化していきたいですね。
改憲を阻む選挙決戦に
斎藤 今年は4月杉並区議選と7月参院選があります。選挙をどういうものとして構えていきたいですか? あるいは、ほらぐちさんという人を通して何を実現していきたいですか?
女性の獲得めざす
高原 政治家が自分に投票してくれたらこれをしますよっていう選挙じゃなく、共に闘おうと訴える選挙にしたい。ほらぐちさんは女性差別の問題やオリンピック返上、民営化の問題を闘うと宣言していますが、そういうことは大学とも根本では共通する問題なんです。去年は大学入試での女性差別の問題が大々的に暴露されました。女性は大学に行かなくて良いという差別は根強く、例えば東大の女子学生比率2割の一因になっている。大学の問題と一体でほらぐちさんの当選へ取り組みたいと思います。それから、どちらの選挙も改憲決戦のど真ん中なので、改憲を絶対に阻止する決戦として選挙に勝利していきたいと思います。
赤嶺 この選挙で、女性の仲間を増やしたいですよね。
高原 世の中の半分は女性にもかかわらず、運動に参加する女性が圧倒的に少数というのは、どう考えても問題です。ほらぐちさんの立候補宣言後、ネトウヨから日本共産党までが、ほらぐちさんが女性だということで許しがたい悪罵を投げつけてきています。あらためて政治に女性が関わることへの差別・偏見を実感したし、これを粉砕する第一歩として杉並区議選の勝利があります。
太田 政治の世界における女性差別を変革していくだけでなく、全学連運動自体も女性の参加しやすい運動に自己変革していく必要がありますね。
加藤 やはり、全学連をやっている人たちが一番リア充してて楽しそうに見えることが重要だと思います。いまの日本では闘わなければ絶望しか見えませんが、一方で闘えば希望が見えてくる。杉並区議選をほらぐちさんと一体となって自己解放的に闘うことで、そのことを杉並区民をはじめ多くの人に知ってほしいです。
太田 ほらぐちさんという若い女性の当選で、若者が、女性が声を上げてもいいんだとキャンパスに広めていきたい。
赤嶺 沖縄でも県知事選を境にしてキャンパスの反応が変わった。あの過程でそうとう学生も動いたと思うんです。県知事選の結果が出てから、実は自分も応援してたんだと学生が口に出せるようになった。
高原 私たちは「極左」であることに満足していてはいけない、主流派にならないといけない。全労働者階級を獲得するという覚悟でやっていきたい。だから選挙にも出るし大学での宣伝活動もやっていく。労働者階級全体を獲得する中で改憲を阻止するということです。