焦点 「反保護主義」の旗降ろしたG20 米中激突軸に争闘戦激化
焦点
「反保護主義」の旗降ろしたG20
米中激突軸に争闘戦激化
●サミット反対2万人デモ
11月30日からアルゼンチンで開かれた20カ国・地域首脳会議(G20サミット)は、帝国主義間・大国間の協調を打ち出すどころか、逆に各国の利害の対立、国際争闘戦の激化をむき出しに示す場となった。
会場近くではサミットに反対するアルゼンチン人民の大規模なデモが闘われ、2万数千人が参加した。デモには、グローバリズムがもたらした格差社会と低賃金、社会保障切り捨て、貧困への怒りがあふれた。
「アメリカ第一」を掲げた米帝トランプ政権の登場を引き金にして、見せかけの国際協調体制は音を立てて崩壊しつつある。2週間前のアジア太平洋経済協力会議(APEC)でも、史上初めて首脳宣言を出すことができなかった。それに続き今回のG20サミット首脳宣言では、08年のG20開始以来掲げ続けてきた「反保護主義」の文言を、ついに削除せざるをえなくなった。これは米帝トランプ政権が最後まで反対したためである。
かつて1929年の世界大恐慌の後に、各国は関税の引き上げや輸入制限などの保護主義に走った。これにより世界市場は急速に収縮し、排他的経済圏の構築が進行し、それが第2次世界大戦につながった。こうした歴史の教訓から08年の世界恐慌後のG20発足時には、各国が保護主義に共同で対抗することを強く申し合わせたのである。「反保護主義」はG20の原点である。それが維持できなくなったのだ。
●大恐慌で階級闘争が激化
振り返れば、08年の世界恐慌以降も帝国主義は過剰資本・過剰生産力という根本矛盾を解決することができず、どの国も大恐慌と低成長、不況の泥沼からはい出ることができないでいる。「米経済は回復」などと言われるが、それは国債の大量発行とバブル経済化、労働者階級からの搾取と収奪の徹底的激化、労働運動弾圧、国家財政による全面的てこ入れで、資本はようやく延命しているにすぎない。アメリカに限らず独仏日なども同じだ。これにより労働者階級の貧困と労働強化、雇用破壊、政治危機、社会危機はますます進行し、韓国・米・仏を始め全世界で労働者階級・被抑圧人民の闘いが爆発している。
サミット直前に開かれた米中首脳会談では、米国が年明けに予定していた中国への追加関税を90日間猶予することを決めた。だが、米国は同時に中国の通信企業大手、華為技術(ファーウェイ)の幹部をカナダ政府に逮捕させるなど、中国スターリン主義に対する圧力を強めており、米中対立は決定的に強まっている。世界は今や、トランプ政権が「アメリカ第一」を掲げて米帝の持てるすべての経済力・軍事力を振り絞って米中貿易戦争の形態をとって帝国主義間・大国間の争闘戦に突入したことにより一変した。G20サミットの破産はその表れである。各国帝国主義は争闘戦を強め戦争に突き進む以外に延命の道はない。日帝・安倍政権の改憲・戦争攻撃もこの脈絡の中にある。
●戦争の根源は帝国主義
結局、レーニンが『帝国主義論』で指摘しているとおり、帝国主義間の同盟や協調は「戦争と戦争とのあいだの息抜き」にすぎず、「資本主義の基礎の上では、一方における生産力の発展および資本の蓄積と、他方における植民地および金融資本の『勢力範囲』の分割とのあいだの不均衡を除去するのに、戦争以外にどのような手段がありうるだろうか」ということである。世界は再び、新たな世界戦争を不可避とする時代に入ったのだ。
資本主義・帝国主義を倒さなければ戦争はなくならない。そして、それができるのは社会的生産の現場を握る労働者階級だけである。ロシアの労働者が第1次世界大戦をロシア革命の勝利に転化したように、自国政府の戦争政策に絶対反対を貫き、国境を越えた労働者階級の国際的連帯を強化し、ゼネスト―革命で資本主義を打倒し、新しい社会を建設しよう。世界革命の時代が到来している。