安倍の強権国会弾劾!

週刊『前進』02頁(2998号02面01)(2018/12/13)


安倍の強権国会弾劾!


 安倍政権は臨時国会終盤の6〜8日に、入管法、水道法、漁業法の改悪を暴力的手口で次々と強行した。これこそ安倍と日帝支配階級の絶望的な暴挙だ。全国で怒りが沸騰している。安倍打倒へ総決起しよう。

水を資本に売り渡す暴挙
 生命の基盤奪う水道法改悪

水道料金は大幅増払えなければ停水

 安倍政権は12月6日の衆院本会議で、水道法改悪案を成立させた。水道を民間資本に売り渡し、もうけの道具にするための大暴挙だ。水は生命維持の根幹にかかわる。だからそれは公営が原則とされてきた。
 新自由主義のもと、世界各地で水道事業の民営化が強行された。水メジャーと言われる仏スエズ社、仏ヴェオリア社、英テムズ・ウォーター社、米ベクテル社などが中南米やアフリカに進出し、水道を支配した。その結果は、水道料金の4~5倍のアップと、水道料金を払えない貧困層への給水停止、老朽化した水道設備が更新されないまま放置されるなどの事態だった。
 そのため今、全世界で水道を再公有化する動きが起きている。しかし強欲な水資本は、再公有化によって失われた利益の補償を求めた。投資保護条項を含む条約や民営化に際しての資本との契約に縛られた国や自治体は、税金でその要求に応じなければならなかった。事業を破綻させ人民の命を奪い尽くしても、資本の利益だけは手厚く保証されるのが水道の民営化だ。

「コンセッション」は丸投げ民営化だ

 水道法の改悪で、「コンセッション」方式による水道の資本への明け渡しが可能になった。「コンセッション」方式とは、施設の所有権は自治体に残すが、その運営は資本に丸投げするということだ。
 水道メーターの検針や料金の徴収業務などは早くから委託が進んでいた。松山市は浄水場の運営権をヴェオリア社に譲り渡し、浜松市も下水道の運営権をヴェオリアに売却した。
 だが、上水道へのコンセッションの導入は、部分的な業務委託とはまったく異なる。水道料金は丸ごと資本の収入になり、料金の決定も資本にゆだねられる。
 水道の民営化はこれまで、自治体の裁量権に阻まれて全面的には進まなかった。だから改悪水道法には「水道事業は、原則として市町村が経営する」という規定の前に、「国は水道基盤強化のための基本方針を策定する」という規定が置かれた。水道へのコンセッション方式の導入も明記された。これは国が水道民営化を強権的に自治体に押し付けるための枠組みだ。
 水道料金に関する規定も「適正な原価に照らし公正妥当なものであること」から「適正な原価に照らし、健全な経営を確保することができる公正妥当なものであること」に変えられた。水道事業に参入する資本に巨額の利益を得させることが、その狙いだ。

ゼネコンのためのダム建設は続ける

 今回の改悪に際しては、水道事業の財政難が口実にされた。人口減少により水需要が縮小する一方、今後、水道管などの設備が更新期を迎えることが、財政危機をさらに促進する。だから「水道事業の広域化」と「民間企業の参入」が必要だと政府は言う。
 だがそこには決定的なごまかしがある。大都市の場合、上水道の水源はほとんどが大規模ダムだ。国土交通省所管の水資源機構は、過大な水需要予測のもとにダム建設を強行し続けてきた。ダムの水は、ダム建設にかかった膨大な費用を上乗せした価格で自治体に売られる。しかも、水の取引量は強制的に自治体に割り当てられる。
 そのため、安価で水質もよい地下水などの独自の水源を放棄した自治体も数多い。それにより水道料金は年々上がり続けた。とはいえ、住民福祉を建前とする自治体は、むやみに水道料金を上げられない。
 それを民営化で可能にしようというのが今回の改悪だ。ゼネコンの利益のためにダムを建設し続けることは大前提にされている。
 この改悪を見込んで、宮城県は21年度から水道を資本に売り渡す計画を打ち出した。他方で、いくつかの自治体議会が水道民営化反対の決議を上げている。
 何よりも、水道労働者がストライキも辞さずに闘えば、民営化は阻止できる。命を守るために労働組合を軸に地域から新自由主義に総反撃する時は来た。

漁業法の改悪は漁民の圧殺
 大資本による漁場支配を狙う

 70年ぶりの見直しとなる漁業法の改悪案が8日未明の参院本会議で可決され成立した。漁業・漁協の解体・破壊と沿岸養殖などへの企業の大規模参入を狙う。18年通常国会で強行された卸売市場法改悪、築地市場破壊・豊洲移転とも一体の攻撃だ。

海を資本が私物化し漁協を解体

 改悪の中身は、政府の規制改革推進会議が6月に出した答申「来るべき新時代へ」に沿っている。答申は農林、水産、医療・介護、保育・雇用、投資等の規制撤廃と民営化を叫んだ。資本主義の危機のもとで人間が生きる社会的営みのすべてを資本の論理のもとに組み敷き、団結と共同性を破壊する新自由主義攻撃であり、改憲と一体だ。
 改悪の最大の問題点は、漁業権を地元漁業者で構成される漁協に優先的に付与する規定の廃止である。漁業権は漁協を通さず直接売買されるようになる。漁業者と漁協が漁業権を奪われれば、養殖や沿岸漁業を資本が独占し、小規模沿岸漁業者は生きられなくなる。漁民は漁業をあきらめるか企業の下請け、低賃金・不安定雇用で雇われて働くしかなくなる。地方破壊がさらに加速する。
 各地の漁協は多種多様な魚種と漁業者の利害が複雑にからみ合う中で、独自のルールを作って長年にわたり資源を管理し、海を守るためのさまざまな取り組みを共同で実施してきた。私企業は株主利益の最大化が目的であり、このような役割を担うことはない。また、漁業権を投資商品とすることももくろまれる。
 現行法の目的で規定された「漁業の民主化」も削られた。そして、漁業権の適格性や漁場の区割りなどを審査する各都道府県の海区漁業調整委員の公選制が廃止され、知事による任命制に改悪された。戦前、漁業権は買い付け・借金の担保とされ、金持ちの地主や網本が漁業権を買い占めて漁業者が生存の危機に瀕する状況となっていた。戦後革命の闘いの中で、農地改革とともに漁業法で漁業権の貸付と売買が禁止された。漁業を再び資本の独裁下に置かせてはならない。

小規模漁業者は切り捨てられる

 漁業権は原発建設などに反対する際の闘いの武器ともなってきた。福島では東電による汚染水放出に漁業者が猛然と怒りの声を上げている。漁業権を企業が買い取ることで、海は企業の私有地のように使われる。
 加えて改悪法には、漁港の集約化や漁船のトン数制限の緩和・大型化促進も入れられた。過去の実績に基づいて船舶ごとの漁獲量の割当を決める制度(IQ)の拡大は、資源量が年ごとに大きく変動する漁業実態の中で、沿岸小規模漁業者の切り捨てにつながる。
 改悪漁業法は宮城県が13年に導入した水産業復興特区がモデルだ。11年東日本大震災と津波、原発事故は漁港と漁業者に壊滅的損害を与えた。県はそれを利用して小規模漁港を切り捨て集約化し、企業に漁業権を開放し、県漁協から権利を奪った。結果は漁業者の生活と協同組合的団結の破壊、地方破壊だった。今年8月、県は漁業権の免許更新で申請したのが1社だったことを理由に特区適用を見送った。水産業復興特区は大破産した。
 改悪卸売市場法は、市場の設置主体の規制を撤廃し、民間資本の参入を可能にした。大資本の流通支配にとって邪魔な仲卸の淘汰(とうた)を狙い、築地市場の豊洲移転を強行した。この上さらに漁業権を資本が私物化すれば、生産・加工・流通・販売にいたるすべての過程を大資本が独占・支配し、利益をむさぼる仕組みとなる。
 漁業従事者の怒りは必ず爆発する。労働者と農漁民の力で攻撃を粉砕しよう。

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▼漁業権 沿岸の特定海域において漁業従事者が養殖、定置網設置、魚貝類などの採取などを排他的に行う権利。漁協や集落単位で共同で所有する。漁業法で地元漁協が漁業権を有するとされ、都道府県知事から免許される。

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