東海第二 再稼働を絶対阻もう 30㌔圏=96万人避難は不可能 大事故なら東京・関東も汚染
東海第二 再稼働を絶対阻もう
30㌔圏=96万人避難は不可能
大事故なら東京・関東も汚染
原子力規制委員会は11月7日、日本原子力発電株式会社(日本原電)・東海第二原発(茨城県東海村)の20年運転延長を認可した。安倍政権と日本原電が再稼働に向け動き出した。東海第二は格段に危険な原発だ。労働組合を先頭に闘い再稼働を絶対阻止しよう。
老朽化で圧力容器が劣化
東海第二原発は1978年の運転開始から40年となる老朽原発であり、配管など設備の劣化がはなはだしく危険だ。とくに重大なのは、原発の心臓部である原子炉圧力容器が脆(もろ)くなっていることだ。
圧力容器の材料は普通の機械と同様に年月がたつと老朽化する。しかも原発の場合、老朽化によって「脆化」(ぜいか)という特有の現象が起こる。稼働によって発生する中性子を浴び続けることで、金属の柔軟性や弾力性が失われて硬くなり、もろくなるのだ。そして「ある温度」(脆性遷移〔ぜいせいせんい〕温度)より低くなると、割れてしまうようになる。地震等で緊急炉心冷却装置が作動して急激に冷やされ、この温度以下になった場合、圧力容器が割れてしまう危険があるのだ。圧力容器が割れたら外側の格納容器も破壊され、大惨事となる。
日本原子力研究所で構造強度研究室長を務めた藤村理人(ただと)は雑誌『原子力工業』(1986年)で次のように書いている。「もし圧力容器が破局的な破壊をしたならば、その鋼材の破片はミサイルとなって瞬時に飛び散ることになるので、格納容器の数十ミリの壁は難なく貫通してしまうであろう。......炉心は露出し、それこそ数万人の死亡者を出す大災害へと発展してしまう」。原子力推進の中枢にいた藤村でさえこのような恐るべき警告を発しているのだ。
東海第二原発と同じ日本原電の敦賀(つるが)原発1号機(福井県、2015年3月に廃炉決定)は脆性遷移温度の初期値が、母材、溶接金属、熱影響部のいずれもマイナス23度であった。その敦賀1号機は稼働開始から約38年後の08年8月段階で、監視試験の結果がそれぞれ51度、43度、49度と急激に上昇した。
東海第二の場合は、初期値がいずれもマイナス25度であった。それが昨年1月段階で、監視試験の結果がそれぞれマイナス10度、マイナス27度、マイナス30度と、ほとんど上昇していないだけでなく、後者の二つは初期値よりも低いというきわめて不自然な結果となった。監視試験は、やり方によりはなはだしい誤差が出るのだ。こんな試験は信用に値しない。東海第二原発の20年延長=60年稼働は断じて許してはならない。
また東海第二原発は11年3・11東日本大震災の際には外部からの電気供給が絶たれ、非常用発電機も3台のうち1台が停止してしまった。非常用炉心冷却システムも2系統のうち1系統が使用不能となり、綱渡り運転の末に、外部電源の復旧で15日に「冷温停止」となった。まさに、首の皮一枚の緊迫した状況だった。
さらに、東海第二は30㌔圏内に全国最多の96万人が住んでいる。避難はまったく不可能だ。それだけでなく、大事故となれば平坦な関東平野を放射能が一気に進み、東京・関東の約4千万人の労働者人民が高濃度の放射能にさらされる。
日帝の核開発の中枢地帯
東海第二原発は、日帝にとってきわめて重要な位置を占めている。
日本初の実用原発が誕生した地が東海村だ。1966年7月、日本原電の東海原発が運転を開始した(現在、廃炉作業中。隣接する東海第二原発が78年に稼働)。それと前後して、東海村とその周辺に原子力施設が次々と建設され、集中していった(地図参照)。
「茨城県東海村は、原研のすべての研究炉と動力試験炉に加えて、日本最初の実用原子力発電炉をも擁する集中立地点となり、文字どおり日本の原子力開発利用のメッカとなった」と、科学技術史が専門で九州大学副学長を努めた故吉岡斉(ひとし)氏は述べている(『新版原子力の社会史』朝日新聞出版)。東海村と周辺一帯は日帝の核政策・核武装政策、原発政策の中枢地帯となっているのだ。
その中でもとくに重要なのが東海再処理施設(東海村)、高速増殖実験炉・常陽(大洗町)と高速炉用再処理施設RETF(東海村)だ。これらは核兵器用の高純度のプルトニウム生産に必須の核軍事施設だ。再処理施設の現在の名称は「再処理廃止措置技術開発センター」であり、2014年に廃止が決まった。その後継の大規模再処理工場が青森県六ケ所村に建設中だが、相次ぐ事故や故障で完成のめどは立っていない。青森で闘う労働者人民と団結し、六ケ所村にある再処理工場とすべての核施設を廃止に追い込もう。
核武装・改憲とめる闘い
東海村と周辺の原子力施設には膨大な量の固体・液体の放射性廃棄物が蓄積されている。東海第二原発が大事故を起こしてそれらも野放し状態となれば、いたる所から高濃度の放射能が放出され地獄のような惨状となる。首都・東京さえ人の住めない地となる。
それほどの危険があるにもかかわらず安倍政権と日本原電が東海第二の再稼働にやみくもに突き進むのは、東海第二と周辺の核施設群が一体のものとして存在しているからだ。茨城と首都圏の労働者人民の闘いで東海第二が廃炉に追い込まれれば、他の核施設も将棋倒しで廃止に追い込まれ、日帝の核政策・核武装政策が破綻する。東海第二再稼働阻止は全原発を廃炉に追い込み、核燃サイクルを解体し日帝の核武装・核戦争を阻む闘いであり、改憲を阻止する闘いだ。
水戸市で9月1日、再稼働反対の1千人の集会・デモが行われ、動労水戸やNAZENもともに闘いぬいた。さらに再稼働の事前了解権を有する那珂(なか)市長や30㌔圏内にある自治体の首長が次々と反対表明を行うほど、再稼働反対の声と原電への怒りは日に日に大きくなっている。この怒りと結び、動労水戸の被曝労働拒否の闘いを先頭に労働組合の闘いを大きく発展させ、東海第二原発の再稼働を絶対に阻止しよう。
そのためにも、来年3・11反原発福島行動への大結集と、杉並区議選、参院選の勝利をかちとろう。
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東海村などにある原子力施設
(番号は上の地図に対応)
❶日本原子力研究開発機構原子力科学研究所
❷日本原子力研究開発機構核燃料サイクル工学研究所 (東海再処理施設、リサイクル機器試験施設〔RETF〕)
❸東海原発、東海第二原発
❹東京大学大学院工学系研究科原子力専攻
❺三菱原子燃料(株)
❻原子燃料工業(株)東海事業所
❼(株)ジェー・シー・オー東海事業所
❽日本原子力研究開発機構本部
❾日本原子力研究開発機構大洗研究所(高速増殖実験炉・常陽)
○その他の原子力施設