データ改ざんは国家犯罪 入管法改悪を許すな 技能実習制度は即時廃止を
データ改ざんは国家犯罪
入管法改悪を許すな
技能実習制度は即時廃止を
安倍政権は、来年4月から5年間に介護、建設など14業種で最大34万5150人の外国人労働力を導入するとして、新たな在留資格「特定技能1号・2号」を設けるための入管法改悪案を臨時国会に提出、先週末に衆院法務委員会での審議入りをもくろんだ。「特定技能1号」は、技能実習3年を経験すれば無試験で移行できるというもので、外国人技能実習制度をベースとして運用される。
しかし11月16日、政府は、関連データである「失踪外国人技能実習生への聞き取り調査結果」に誤りがあったとして修正。このため審議入りできなかった。
法務省は2017年に失踪した7089人のうち、入管法違反で摘発された2892人に聞き取り調査を実施したとして山下貴司法相は、「より高い賃金を求めた失踪が約87%(2514人、86・9%)」だと答弁していた(7日、参院予算委)。
しかし実際には「低賃金による失踪」は67・2%。「指導が厳しい」の5・4%は12・6%に、「暴行を受けた」3・0%は4・9%に修正された。これは技能実習制度に問題があるから失踪者が続出するのではなく、問題は技能実習生にあるのだとするデータ改ざんだ。裁量労働制をめぐる労働時間のねつ造をはじめデータ改ざん・ねつ造は安倍政権の常套手段だ。こんなデマ政治を許してはおけない。
しかし、賃金も「逃げ出す」しかない低水準だ。失踪前の1カ月あたりの賃金が10万円以下が56・69%、15万円以下を加えると9割を超える。しかも光熱費など3万~5万円が差し引かれる。技能実習生の大半は母国の送り出し機関に100万円前後の金を支払っており、いわば巨額の「前借金」を背負って来日している。失踪したら、この多額の借金が家族・親戚に襲いかかる。これほどのリスクを負ってまで失踪せざるを得ないのが現実だ。
「私は物じゃない」
11月8日に国会内で行われた野党合同ヒアリングでの外国人技能実習生の報告は、過酷なものだった。
中国人技能実習生の黄世護さん(26)は、15年12月来日、岐阜県のダンボール製造工場で働いていたが、16年7月に作業中に機械に挟まれて指3本を切断。2カ月入院する重傷だったが、退院後に解雇通告が待っていた。「(解雇の書類に)サインしろと何度も迫られました。私が使いものにならないからでしょう。私は物じゃない。人間です」と黄さん。
静岡県富士市の製紙工場で働いていた中国人女性、史健華さん(35)は、朝8時から深夜12時まで働いて手取りはわずか10万円。午後6時以降の残業代は時給300円だった。中国の送り出し機関に約65万円の借金をし、夫と子どもを残して日本に来た。「一生懸命働きました。でも差別やいじめがあり、パワハラで身も心も壊した。豊かな日本に行けば家族にたくさん仕送りができると思ったのに」。昨年8月、飛び降り自殺を図った。一命はとりとめたが腰などを骨折し、今もリハビリ中だという。
ベトナム人のグエンさんは、福島県郡山市で建設作業員として働くはずだったが、除染作業に従事させられた。被曝労働に対処する特別教育もなく、日給は5600円で日本人作業員(平均日給1万6千円以上)の3分の1だった。
このような技能実習制度の実態は、「現代の奴隷労働」「現代の徴用工」だ。これを放置したまま、「特定技能1号・2号」という新たな在留資格を上積みしようというのである。
技能実習生の失踪は、今年は6月までに4279人となっている。これに対し、外国人の治安管理を抜本的に転換・強化しようというのが、「出入国在留管理庁」の新設攻撃だ。
労働組合で団結し
新自由主義政策の結果、日本は「経済・社会基盤の持続可能性を阻害する」ほどの「深刻な人手不足」となった。資本主義社会の根幹が揺らいでいる。
安倍政権が断行する「働き方改革」とは、労働者の団結体である労働組合を破壊しつつ進める総非正規職化だ。改憲による戦争国家づくりは、組織された労働者の反撃を抑え込むことなしに不可能なのだ。
「移民政策につながる」「永住を認めるのか」「日本人の雇用が脅かされる」など与野党の国会論戦は、差別・排外主義の応酬となっている。入管法・入管体制による外国人の治安管理と同時に、日本で働く労働者階級を分断し、日本人労働者を戦場に駆り立てようという改憲攻撃だ。
今、26万人の外国人技能実習生、留学生30万人の資格外労働をはじめ128万人の外国人労働者がいる。この外国人労働者が地域の労働組合と出会い、団結して立ち上がったらどうなるか。民族・国籍・国境を越えた労働者の団結こそ、改憲・戦争を阻む力となる。
「入管法改悪阻止! 外国人技能実習制度廃止!」を掲げ国会闘争に立とう。
技能実習生の失踪理由(人) | 原提出資料 → 訂正後 |
聴取した人数 | 2892 → 2870 |
失踪の理由 | |
・より高い賃金を求めて(※) | 2514(86.9%) → 1929(67.2%) |
・実習終了後も稼働したい | 392(13.6%)→ 510(17.8%) |
・指導が厳しい | 155(5.4%)→ 362(12.6%) |
・暴力を受けた | 88 (3.0%)→ 142(4.9%) |
・帰国を強制された | 77 (2.7%)→ 71(2.5%) |
・その他の理由 | 312 → 671 |
※聴取票上にはこの文言はなく、代わりに「低賃金」「低賃金(契約賃金以下)」「低賃金(最低賃金以下)」と書かれており、これら3項目にチェックした人を法務省は「より高い賃金を求めて」と計上し、報告していた。
新しい在留資格による受け入れ見込み数(人) | ||
初年度 | 5年目までの累計 | |
介護業 | 5000 | 5万〜6万 |
ビルクリーニング業 | 2000〜7000 | 2万8000〜3万7000 |
素形材産業 | 3400〜4300 | 1万7000〜2万1500 |
産業機械製造業 | 850〜1050 | 4250〜5250 |
電気・電子情報関連 | 500〜650 | 3750〜4700 |
建設業 | 5000〜6000 | 3万〜4万 |
造船・舶用工業 | 1300〜1700 | 1万〜1万3000 |
自動車整備業 | 300〜800 | 6000〜7000 |
航空業 | 100 | 1700〜2200 |
宿泊業 | 950〜1050 | 2万〜2万2000 |
農業 | 3600〜7300 | 1万8000〜3万6500 |
漁業 | 600〜800 | 7000〜9000 |
飲食料品製造業 | 5200〜6800 | 2万6000〜3万4000 |
外食業 | 4000〜5000 | 4万1000〜5万3000 |
合計 | 3万2800~4万7550 | 26万2700〜34万5150 |