徴用工判決 戦時徴用の居直り許すな 「解決済み」は日本政府のうそ。65年日韓条約で戦争犯罪隠す

週刊『前進』04頁(2991号03面01)(2018/11/19)


徴用工判決
 戦時徴用の居直り許すな
 「解決済み」は日本政府のうそ。65年日韓条約で戦争犯罪隠す

(写真 原告側弁護士と支援者が東京・千代田区の新日鉄住金本社を訪ね、要請書の受け取りと話し合いを求めたが、新日鉄住金は門前払いした【11月12日】)

 韓国の大法院(最高裁)は10月30日、日帝の植民地時代に強制労働させられた元徴用工4人が日本企業・新日鉄住金に損害賠償を求めた訴訟で、同社に賠償を命じる判決を下した(本紙2987号で既報)。これはまったく当然の判決である。しかし、安倍政権はこの判決に敵意と憎悪をあらわにし、日本会議などの極右勢力やマスコミを総動員して、あたかも韓国側が「解決済み」の問題を蒸し返してきたかのように排外主義的に騒ぎ立てている。日韓労働者の国際連帯をかけて、安倍の排外主義扇動を粉砕しよう。

与野党が排外主義の合唱

 今回の判決を受け、安倍は「1965年の日韓請求権協定で完全かつ最終的に解決している。判決は国際法に照らしてありえない」と反発し、政府・与党からも韓国をののしる発言が相次いだ。安倍の盟友で改憲勢力の旗振り役の桜井よしこはこの判決に触れて「韓国は社会主義革命の真っただ中」と悲鳴をあげ(産経新聞11月5日付)、立憲民主党の枝野幸男も「判決は大変残念で遺憾だ」と政府・与党に同調した。こうした排外主義的言辞の背景には、元徴用工の賠償請求訴訟が新日鉄住金以外にも約80社を相手に14件も係争中であり、今後も数々の戦争犯罪が暴かれることへの焦りと恐怖がある。
 そもそも65年の日韓条約および請求権協定は、植民地支配に対する謝罪・賠償など一片も含んでいない。条約締結をめざす日韓会談は朝鮮戦争の真っただ中の51年に始まり、日帝は米軍の朝鮮戦争に全面協力しながら日米安保体制を構築しつつ、並行して韓国と交渉を進めた。こうして65年に締結された日韓条約は、韓国の軍事独裁政権を「朝鮮半島の唯一の合法政府」とみなし、36年間の植民地支配をもたらした日韓併合については「もはや無効(=以前は有効だった)」という文言で合法化した。
 こうした日帝の植民地支配への居直りと、朝鮮半島の南北分断体制を前提とする「日韓国交正常化」の過程で、かつての戦争犯罪もことごとく闇に葬られたのだ。ここに問題の根源がある。

原告の請求権は消滅せず

 日本政府、与野党、マスコミなどが今回の判決を非難する根拠は、「65年の日韓請求権協定で徴用工問題は解決済みのはずだ」という一点に集約される。桜井よしこも先に見た産経新聞のコラムで「(請求権協定は)賠償などの請求権問題は個人のものも法人のものもすべて解決済みだとうたっている」「戦時徴用労働者の未払い賃金と補償もそこに含まれ……解決済み」と主張する。だが決定的なうそ、ごまかしはまさにこの点にある。
 判決の核心は、被害者が求める損害賠償は「未払い賃金や補償金を要求するものではなく」「日本政府の違法な植民地支配および侵略戦争の遂行と直結した日本軍需会社の『反人道的不法行為』に対する『慰謝料請求権』」だと認定し、こうした不法行為への被害者個人の「慰謝料請求権」は65年請求権協定でも消滅していないと断じたことにある(個人の慰謝料請求権が消滅していないことは、日本政府も91年8月の外務省の答弁で認めている)。
 これは日帝の植民地支配そのものを「不法」とみなす韓国憲法に照らしても、また国家間の条約や協定では個人の慰謝料請求権を消滅させることはできないという国際法の常識から言っても、あまりにも妥当な判決というほかない。「国際法に照らしてありえない」ことをわめいているのは日本政府だけなのだ。
 加えて重大な点は、65年の日韓条約とともに締結された請求権協定について、「交渉過程で日本政府は強制動員被害の法的賠償を否定した」と判決で指摘したことである。つまり、交渉過程で韓国側が当初求めた「謝罪・賠償」を日本側が拒否したため、「賠償ではなく経済協力」として韓国に有償無償5億㌦を供与することとなったのである。こうして締結された請求権協定には(桜井よしこの大うそに反して)「賠償」の文言は一切なく、当時の日本政府も「これは賠償ではなく韓国への『独立祝い金』だ」(椎名悦三郎外相=当時)と強調していた。
 しかも65年の日韓条約締結時、韓国は、61年の軍事クーデターで権力を握ったパクチョンヒの軍事独裁政権下にあり、元徴用工や軍隊慰安婦とされた人々は沈黙を強いられていた。他方で日帝による有償無償5億㌦の「経済協力」とは、日本政府が日本企業から買った生産財・消費財を現物で韓国政府に渡すもので、その使い道も日本政府との協議で決められた。それは韓国の軍事独裁政権を日帝が全面的に支えて維持するための政治資金になるとともに、日帝の大資本が再び韓国に進出し、現地の労働者を極度の低賃金・強労働で搾取して肥え太っていく水路ともなったのだ。その一方で、植民地支配と戦争で被害を受けた人々にはびた一文も支払われなかった。

日韓連帯で安倍を倒そう

 以上のように、日帝は何の賠償もしていないのだから、被害者に損害賠償を求める権利があるのは当然である。問題の核心は、日帝政府と戦犯企業が戦後一貫して自らの戦争犯罪を認めず、居直り、隠ぺいし、謝罪も賠償も拒否してきたことにあるのだ。
 本紙2970号の「繰り返すな戦争」シリーズでも論じたように、朝鮮人強制連行(戦時徴用工)は日帝による悪逆非道な戦争犯罪であり、その全容はいまだに解明されていない。だが韓国民衆による「ろうそく革命」を契機として、この戦争犯罪が今や逃れようのない歴史の審判にかけられようとしているのだ。
 戦犯企業は賠償金を支払え! 戦争犯罪を居直る安倍を労働者の国際連帯で打倒しよう!
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